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セルジュ・チェリビダッケ DVDボックス&ブック [音楽]

三月に入って荒れたお天気が続きました。
台風並みの強風が吹き荒れ、東横線では、線路わきで建設中のビルの足場が線路に崩れて運行がストップ。
夜の22時過ぎの発生ということもあり、仕事帰りの乗客を中心に大きな影響があったとのことです。
運転再開は3日の昼過ぎでした。
この週末はまたお天気が荒れる予報ですので、注意が必要ですね。

連れ合いを亡くして以来、どうもふさぎ込むことが多くなり、一昨年は衝動的に様々なCDや音楽DVDを買い込んでしまいました。
購入しながらも、すぐに聴くということは少なく、何と言いましょうか、買うことでストレスを発散していたきらいもあったのでしょう。
今はだいぶ落ち着いていて、新たにこうしたものを購入することはほとんどありません。

そうこうするうちにCOVID-19の感染拡大という事態が出来し、在宅ワークが中心となりました。
そんな環境の中、これらは貴重な心の安らぎのもととなり、こうした音楽を聴きながら黙々と一人で作業をする生活にも慣れてきたように思います。

また、以前にも書きましたが、座りっぱなしとなることを避けるため、適度な運動をしています。
在宅ワークという関係上、平日に長時間の外出は不可能ですし、お天気が芳しくなければなおさらこもらざるを得ません。
そんな折、DVDを観ながら(聴きながら)踏み台昇降をしたりしています。

先日も、一昨年に購入した「セルジュ・チェリビダッケ DVDボックス」を再生しながら体を動かしました。
録音嫌いで知られるチェリビダッケですが、晩年はいくつかの映像録画を行っており、貴重な記録となっております。
これは、13枚に及ぶDVDボックスであり、中には、1950年のベルリン・フィルとの「エグモント」や1965年のシュトゥットガルトとの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」、1969年のトリノRAIとのブルックナー9番、といった貴重な記録もあります。


中でも、1992年、38年ぶりにベルリン・フィルを振ったブルックナーの交響曲第7番の映像は、きわめて感慨深いものでした。
世界一プライドが高い、ともいわれたベルリン・フィルに対して、まだ駆け出しともいうべきチェリビダッケが執拗なまでのリハーサルを要求し、楽団員を辟易させたのは有名な話ですが、決定的な軋轢を生じさせて関係を断ってしまったのは1954年11月の「ドイツ・レクイエム」の演奏をめぐってのことだったといいます。

この演奏は、そんなチェリビダッケが、時の大統領ヴァイツゼッカーに請われて最初で最後の復帰を果たした記念碑的なものです。

お互いの確執は、恐らく埋められることはなく、その微妙な緊張感がビデオ映像からもうかがえます。
終始悲しげな表情をしていたチェリビダッケが、時折、笑みを浮かべている姿を見ると、何とはなしに安心感を覚えたりしました。

恐らく、チェリビダッケの演奏としては、ミュンヘン・フィルのほうがより完成されたものなのだろうと思います。
それでも、やはり世界有数のオーケストラであるベルリン・フィルの響きは凄まじいものがありました。
この演奏では、第1・第2楽章だけで1時間くらいかかります。
その間、私は踏み台昇降をしながら聴いていたのですが、どれくらいの時間をそれに費やしたのか全くわからないほど集中してしまいました。

私は、中学・高校の頃に吹奏楽部に所属しており、ホルンやトロンボーンを吹いておりましたが、ワグナーチューバに一種の偏愛に近い感情を抱いています。
この曲は特にこの楽器が大活躍をし、ことに第二楽章のコーダの185小節目からの「ワグナー葬送の音楽」での響きは格別です。
フィナーレの最後でもワグナーテューバは活躍をし、分厚く充実した最後のホ音が鳴り響いた後、万雷の拍手が沸き起こりました。

その響きの幸せな余韻に浸りながらDVDの再生を終えると、テレビ番組に入れ替わりました。

たまたまそのときのチャンネルはNHK総合で、何と、乃木坂46の歌と映像!
そのあまりの音の響きの薄さと軽薄さに愕然とし、即刻テレビの電源をオフにしたのですが、それまで浸りきっていた至福の時間、特にあの最後のホ音が耳の中に残っていたこともあって、何というかやり場のない悲しみを感じてしまったところです。

もちろん、自分が迂闊だったわけなので、大変身勝手なことなのですが。


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