BS松竹東急 [映画]
今年のGWはお天気に恵まれ、新型コロナウィルス感染防止のための行動制限も解除されたことから、行楽地を中心に大変な人出となりました。
ニュースなどでは各地の高速道路の連日の大渋滞を繰り返し伝えておりました。
恥ずかしいことですがちょっと転倒して怪我をしたこともあって、連休は大人しく家で養生中です。
怪我をしたのが2日の晩でしたので、三連休中は病院にも行けず、6日に診察してもらったところ、残念なことに肋骨骨折との診断。
現役で山登りをしていた時には、結構この手の怪我はしていたので、恐らくやっちゃったんだろうなと思ってはいましたが、やはり無念でした。
尤も、私はこの三月末で、それまで勤務していた会社の雇用契約が終了し、現在ハロワに通う失業者となっておりますから、そもそも連休など何の関係もなかったのですが。
三月末に、衛星放送で「BS松竹東急」が開局されました。
松竹映画の名作などが放映され、私のようなオールド映画ファンにとっては大変うれしいチャンネルです。
このところテレビではほとんど放映されなくなった、野村芳太郎監督の「張込み」や山田洋二監督の「霧の旗」などが立て続けにラインナップされ、久しぶりに胸をときめかせながら観ました。
今年が没後三十年ということもあってか松本清張特集も組まれており、「張込み」や「霧の旗」に引き続き「わるいやつら」や「疑惑」も放映。
面白く観たところです。
「わるいやつら」は、片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)・藤田まこと・緒形拳・佐分利信といった実力派俳優を綺羅星のごとく集めた映画ですが、細部が詰め切れておらず散漫な印象が強く残る、野村芳太郎監督としては凡作の一つなのではないかとの感想をあらがえません。
それはともかく、片岡孝夫演ずる戸谷信一の情婦・寺島トヨの役を宮下順子が演じており、ちょっと時代を感じました。
宮下順子と云えば、私たちにとってはロマンポルノの女王としてゆるぎない地位を築いた類まれなる女優の一人です。
団地妻シリーズが有名ですが、私は、神代辰巳監督の「赫い髪の女」と田中登監督の「実録阿部定」がお気に入り。
何れも、ロマンポルノの枠組みを軽々と超越した名作だと思っています。
ご興味のある向きは是非とも一度ご鑑賞ください。
さて、医院を経営する戸谷信一は次から次へと女を誑し込んで金を巻き上げる悪徳医師であり、それ故にそうした女性たちとの情交のシーンが数多く出てきます。
その医院の看護師長であり情婦でもある寺島トヨとの間でももちろんそうした濃厚なシーンが展開されます。
そうした濡れ場のシーンで、宮下順子の裸の胸部がぼかされていました。
それ以前の、ナイトクラブのシーンで裸で踊る外人女性の胸部も同じくぼかされていましたので、あれ?と思ったのですが、私が映画館でこの映画を観た時にはそのような処置はされていなかったと記憶します。
なるほど、これは「BS松竹東急」の見識なのでしょう。
放送時間帯が20時前から、ということを鑑みれば、子供たちが観ることも当然ありうることですから。
この映画作品の性格上、情交シーンは不可欠なのでしょうが、そうしたシーンで女性の裸の胸部をさらけ出さなければならない必然性は果たしてあるのか。
先に取り上げたドライブ・マイ・カーでは、妻がニンフォマニアであるのかもしれないという疑いを視覚的に表す必要もあってそうしたシーンも登場しますが、裸体ではありつつも非常に抑制的だったと私は感じています。
ロマンポルノのように、それが基本的かつ重要な制作条件で一つの売り物となっている場合はいざ知らず、それが主たる目的ではない映画で、徒に女性が裸の胸部などあられもない姿を画面にさらす必要が果たしてあるのか。
溝口健二の「祇園囃子」という映画があります。
木暮実千代演ずる芸妓の美代春が、若尾文子演ずる舞妓の栄子(美代栄)を救うために、贔屓先企業の事業認可担当である役所の神崎課長に(それまで拒み続けてきた)身をゆだねるシーン。
神崎の寝ている寝室の隣部屋で着物を脱ぎ襦袢姿となった美代春は、そっと足袋を脱ぎます。
それだけのしぐさで全てを表した溝口監督の演出力に感嘆したことをふと思い返しました。
たまたま手元にその映画があったので改めて見返しましたが、今観ても切なさと哀れさのほかになんとも云えない艶を感じたものです。
意に沿わない相手の男に抱かれる理不尽さは、想像するに余りありますね。
そう、別に即物的な映像を見せつけられなくても、観客は流れの中でそうした行為も感じ取るものなのでしょう。
もちろん、女性にしても男性にしても、一糸まとわぬ姿にならなければ表現の核心に迫れない作品もあることは私も認めます。
しかし、そうした必然的な理由がないのであれば、表現者はもう少し観客の想像力を信ずるべきだとも思います。
因みに、「わるいやつら」の中での宮下順子以外の女優さんは、情交シーンでも彼女ほど「サービス(?)」はしておりません。
女優さんと監督の判断の問題なのでしょうが、そのあたりの差異を論ずるのは、これまたなかなかやっかいなものがありそうですね。
映画というものは一種のエンターテインメントですから、観客の興味を引くためにエロ・グロ・バイオレンスをふんだんに盛り込むという行き方も当然にあります。
ハリウッドなどでもそういう映画はたくさんありますし、もちろん邦画でも。
従って、最初からそれを当て込んだ映画製作も当然あってしかるべきでしょうし、そういう映画が大好きだという観客が存在する以上、商業映画としてはそれを無視するわけにはいきません。
ただ、映画というものを一つの表現芸術だと考えた場合、そうしたある意味あからさまな表現を用いることの必然性、そのことによって表現したいもっと奥深いものを観客に訴えかけるという目的、そうした表現者としての確固たる視点も求められるように思います(先にあげたロマンポルノの作品には、そうした視点がありました)。
「観客もそういうシーンを求めているから」というところに安直に寄りかかって映画作りをする、そういう姿勢がもしもあるとするのであれば、それは表現者として一種の限界に至っているのではないか。
私はそのように考えてしまいます。
もちろんこれは私の大いなる偏見ではありますが。
妄言多謝。
ニュースなどでは各地の高速道路の連日の大渋滞を繰り返し伝えておりました。
恥ずかしいことですがちょっと転倒して怪我をしたこともあって、連休は大人しく家で養生中です。
怪我をしたのが2日の晩でしたので、三連休中は病院にも行けず、6日に診察してもらったところ、残念なことに肋骨骨折との診断。
現役で山登りをしていた時には、結構この手の怪我はしていたので、恐らくやっちゃったんだろうなと思ってはいましたが、やはり無念でした。
尤も、私はこの三月末で、それまで勤務していた会社の雇用契約が終了し、現在ハロワに通う失業者となっておりますから、そもそも連休など何の関係もなかったのですが。
三月末に、衛星放送で「BS松竹東急」が開局されました。
松竹映画の名作などが放映され、私のようなオールド映画ファンにとっては大変うれしいチャンネルです。
このところテレビではほとんど放映されなくなった、野村芳太郎監督の「張込み」や山田洋二監督の「霧の旗」などが立て続けにラインナップされ、久しぶりに胸をときめかせながら観ました。
今年が没後三十年ということもあってか松本清張特集も組まれており、「張込み」や「霧の旗」に引き続き「わるいやつら」や「疑惑」も放映。
面白く観たところです。
「わるいやつら」は、片岡孝夫(現・片岡仁左衛門)・藤田まこと・緒形拳・佐分利信といった実力派俳優を綺羅星のごとく集めた映画ですが、細部が詰め切れておらず散漫な印象が強く残る、野村芳太郎監督としては凡作の一つなのではないかとの感想をあらがえません。
それはともかく、片岡孝夫演ずる戸谷信一の情婦・寺島トヨの役を宮下順子が演じており、ちょっと時代を感じました。
宮下順子と云えば、私たちにとってはロマンポルノの女王としてゆるぎない地位を築いた類まれなる女優の一人です。
団地妻シリーズが有名ですが、私は、神代辰巳監督の「赫い髪の女」と田中登監督の「実録阿部定」がお気に入り。
何れも、ロマンポルノの枠組みを軽々と超越した名作だと思っています。
ご興味のある向きは是非とも一度ご鑑賞ください。
さて、医院を経営する戸谷信一は次から次へと女を誑し込んで金を巻き上げる悪徳医師であり、それ故にそうした女性たちとの情交のシーンが数多く出てきます。
その医院の看護師長であり情婦でもある寺島トヨとの間でももちろんそうした濃厚なシーンが展開されます。
そうした濡れ場のシーンで、宮下順子の裸の胸部がぼかされていました。
それ以前の、ナイトクラブのシーンで裸で踊る外人女性の胸部も同じくぼかされていましたので、あれ?と思ったのですが、私が映画館でこの映画を観た時にはそのような処置はされていなかったと記憶します。
なるほど、これは「BS松竹東急」の見識なのでしょう。
放送時間帯が20時前から、ということを鑑みれば、子供たちが観ることも当然ありうることですから。
この映画作品の性格上、情交シーンは不可欠なのでしょうが、そうしたシーンで女性の裸の胸部をさらけ出さなければならない必然性は果たしてあるのか。
先に取り上げたドライブ・マイ・カーでは、妻がニンフォマニアであるのかもしれないという疑いを視覚的に表す必要もあってそうしたシーンも登場しますが、裸体ではありつつも非常に抑制的だったと私は感じています。
ロマンポルノのように、それが基本的かつ重要な制作条件で一つの売り物となっている場合はいざ知らず、それが主たる目的ではない映画で、徒に女性が裸の胸部などあられもない姿を画面にさらす必要が果たしてあるのか。
溝口健二の「祇園囃子」という映画があります。
木暮実千代演ずる芸妓の美代春が、若尾文子演ずる舞妓の栄子(美代栄)を救うために、贔屓先企業の事業認可担当である役所の神崎課長に(それまで拒み続けてきた)身をゆだねるシーン。
神崎の寝ている寝室の隣部屋で着物を脱ぎ襦袢姿となった美代春は、そっと足袋を脱ぎます。
それだけのしぐさで全てを表した溝口監督の演出力に感嘆したことをふと思い返しました。
たまたま手元にその映画があったので改めて見返しましたが、今観ても切なさと哀れさのほかになんとも云えない艶を感じたものです。
意に沿わない相手の男に抱かれる理不尽さは、想像するに余りありますね。
そう、別に即物的な映像を見せつけられなくても、観客は流れの中でそうした行為も感じ取るものなのでしょう。
もちろん、女性にしても男性にしても、一糸まとわぬ姿にならなければ表現の核心に迫れない作品もあることは私も認めます。
しかし、そうした必然的な理由がないのであれば、表現者はもう少し観客の想像力を信ずるべきだとも思います。
因みに、「わるいやつら」の中での宮下順子以外の女優さんは、情交シーンでも彼女ほど「サービス(?)」はしておりません。
女優さんと監督の判断の問題なのでしょうが、そのあたりの差異を論ずるのは、これまたなかなかやっかいなものがありそうですね。
映画というものは一種のエンターテインメントですから、観客の興味を引くためにエロ・グロ・バイオレンスをふんだんに盛り込むという行き方も当然にあります。
ハリウッドなどでもそういう映画はたくさんありますし、もちろん邦画でも。
従って、最初からそれを当て込んだ映画製作も当然あってしかるべきでしょうし、そういう映画が大好きだという観客が存在する以上、商業映画としてはそれを無視するわけにはいきません。
ただ、映画というものを一つの表現芸術だと考えた場合、そうしたある意味あからさまな表現を用いることの必然性、そのことによって表現したいもっと奥深いものを観客に訴えかけるという目的、そうした表現者としての確固たる視点も求められるように思います(先にあげたロマンポルノの作品には、そうした視点がありました)。
「観客もそういうシーンを求めているから」というところに安直に寄りかかって映画作りをする、そういう姿勢がもしもあるとするのであれば、それは表現者として一種の限界に至っているのではないか。
私はそのように考えてしまいます。
もちろんこれは私の大いなる偏見ではありますが。
妄言多謝。
肋骨だとコルセットですね。
ご養生下さい。
by 夏炉冬扇 (2022-05-08 07:21)
肋骨骨折とはただの転倒ではありませんね。バストバンドでの養生となるのでしょうか。ご自愛ください。
私も数年前に仕事から離れ、慎ましい生活を送っております。
この機会に山登りを再開されてはいかがでしょうか。
「BS松竹東急」開局は知りませんでした。ロマンポルノも懐かしい響きです。詳しい解説で見た気分になってしまいました ^^;
by tochimochi (2022-05-08 10:11)
夏炉冬扇さん、こんにちは。
ご心配頂き恐縮です。
当初はこれまで通りさらしで対応していましたが、整形外科でバストバンドを出してもらいました。
使い勝手委が良くて助かります。
by 伊閣蝶 (2022-05-08 11:54)
tochimochiさん、こんにちは。
ご心配頂き恐縮です。
仰る通りバストバンドで養生中です。下手に力が入ると激痛が走るので油断なりませんが。
このところ様々な箇所に故障が出て、今回のけがでまたまた遠のいた感がありますが、退職を機に少しずつ山を再開するつもりでおります。
「BS松竹東急」、無料でもありますから、もしも衛星放送をご覧になれるのであればお勧めです。
お互いにロマンポルノには郷愁を感じてしまう世代ですね。
by 伊閣蝶 (2022-05-08 11:59)
肋骨骨折とは! どうぞお大事になさってください。
霧の旗やわるいやつらは映画でも、本も読みました。清張の作品に一時ハマったことあり。サスペンスものを読み漁った時期があり、1/3くらいで結末が推測できました。(笑)
ロマンポルノもなつかしいですね。
by Jetstream (2022-05-08 12:11)
Jetstreamさん、こんにちは。
ご心配頂き恐縮です。しばらく安静にして快復したいと思っております。
松本清張は、私も大好きな作家で、一時期はずいぶん熱心に読んだものです。
映画やドラマなども、(ご本人がかなり積極的にかかわったこともあり)いずれもレベルの高い水準にあったように感じます。
ロマンポルノは。私たち世代にとって一世を風靡していた時期がありましたね。
by 伊閣蝶 (2022-05-08 17:50)
久しぶりに、阿部定と言う単語を見ました。^^
恐い女性ですし、恐い事件です。
男にとっては。^^;
その点、日活ロマンは安心して見ていられます。
自分の世代では寺島まゆみさんかな? ^^
by のら人 (2022-05-09 18:11)
のら人さん、こんにちは。
阿部定事件を扱った映画は結構ありますが、定が吉蔵を自分一人のものにしたい、生きていれば他の女と触れ合うかもしれない、それが嫌だ、という心情をとことんまで突き詰めたのは「実録阿部定」ではないか、と私は思っています。
それまでは、女は男に組み敷かれて場合によっては無理やりそうした行為を受け入れざるを得ない立場、などという世間的な常識のようなものがあり、それを根本からひっくり返した事件であったと云われています。それを明確に映像として描いているように感じます。
寺島まゆみさん、懐かしい。
そういえば森田芳光監督の映画にも出演していましたね。
by 伊閣蝶 (2022-05-10 11:10)
こんにちは
私はイスラム教徒です。 イスラム教について学ぶよう人々を招待します。
https://jpis1.blogspot.com/2017/03/httpsislamhouse.html
幸せな人生をお祈りします……ありがとう
by イスラームでは (2022-06-09 15:23)