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映画「新聞記者」 [映画]

桜の季節となりました。
このところ週末になると春の嵐が吹き荒れ、先週開花した桜の花もどうかな、と心配しておりましたが、さすがに咲き始めの桜の花は強いものがあり、大丈夫でしたね。
sakura2021.JPG
連れ合いが亡くなって三回目の春を迎えますが、やはりなかなか花見をしよう、などという気持ちにはなりません。
近所の公園の桜は結構見事な花をつけるため、それが気に入って連れ合いはここに住もうと提案してくれました。
それから毎年、この時期になると花見に出かけていたので、どうしてもそうしたことを思い出してしまいます。
毎日出社していた時にはさほど感じておりませんでしたが、在宅ワークが主体となると、そんなことが頭をよぎってしまいます。
緊急事態宣言は解除されたものの、花見の宴会などは自粛してほしいという要請もあるようで、今の私としてはそのほうがありがたいように感じてしまいます。

と、なんだか湿っぽい話になってしまいました。妄言多謝。

先日、第44回日本アカデミー賞の授賞式の模様が放映されました。
今回のプレゼンターは、松坂桃李さんとシム・ウンギョンさんで、ちょっと胸に迫るものがありました。
いうまでもなく、昨年の日本アカデミー賞で、それぞれ、主演男優賞・主演女優賞の最優秀賞を受賞されたお二人だったからです。
その作品であった「新聞記者」は、そのほかに最優秀作品賞・優秀監督賞・優秀脚本賞・優秀編集賞をしており、毎日映画コンクールにおいても日本映画優秀賞と女優主演賞を受賞しています。
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この映画が公開された頃、私は連れ合いを亡くして間もない時でもありましたから、映画館に出かけようという前向きな気持ちにはなかなかなれませんでした。
しかし、この映画が製作された過程や、それに携わった人たちの苦難・葛藤を知り、また、この映画自体の持つ力に惹かれ、重い腰を上げました。
2時間足らずの上映時間の間、まさに身じろぎもせずに見入ったことを思い出します。
以前であればおそらくそのまま立て続けに三回は連続して観たと思いますが、現在の映画館では上映ごとに入れ替えとなっているので、さすがにそれはできませんでした。
というのも、この映画は、繰り返し観たくなる魅力を備えていたからです。

そんなわけで、DVDの発売を待って速攻で買い求めました。
以来何度も観ていますが、その都度新しい発見があります。そういう面白さを持った稀有の作品なのではないでしょうか。

モリカケ疑惑とそれにかかわる近畿財務局の赤木俊夫さんの自殺、前川喜平文科次官の更迭と出会い系バー問題、伊藤詩織さんへのレイプ事件と刑事告訴の不起訴処分など、ほぼ同時代に勃発していた当時のアベ政権下での出来事を、微妙に設定を変えつつも再現し、それらの裏側で内閣情報調査室が暗躍していた、ということを東都新聞社会部の若手女性記者・吉岡エリカが調査と取材を重ねて記事にしていくという展開。
対象となったアベ政権下では、首相の意向を第一とする官邸が様々な政策を主導し、その一環として人事権を握られていた霞が関の官僚は唯々諾々として官邸の方針に従う。
流行語にもなった「忖度政治」ですね。
さらに内調は、ネットや官邸の息のかかった報道機関にフェイク情報を意図的に流し、世論を捻じ曲げていく。
公文書偽造の責任を取らされ自殺に追い込まれた先輩は、畢竟そうした「内調」の犠牲者だったのではないかと義憤にかられた外務省から内調に出向している杉原が、その吉岡とタッグを組む形で事実の公表に力を貸そうとします。

などなど、またまた書きすぎてしまう虞がありますので、ここまでにいたしますが、こうしたストーリー展開から想像されるような、いわゆるコテコテの社会派映画ではなく、この映画はあくまでも優れたエンターテインメント作品であるところが多くの観客を引き付けた所以でしょう。

先に書いたような、官邸や内閣情報調査室の動きは、おそらくほとんどの人たちが気付いていること。
しかし、それをあくまでもフィクションとして扱い、一流の娯楽作品に仕上げた藤井監督の手腕には脱帽せざるを得ません。

それともう一つ、いくらフィクションであるとはいえ、官邸やそれに同調するマスコミに対して挑戦状をたたきつけるようなこの映画に出演した俳優の皆さんの意気にも感じ入ってしまいました。
主演を務めたお二人の覚悟は次のようなものであったそうです。

シム・ウンギョン&松坂桃李、衝撃作『新聞記者』に挑む覚悟

お二人がなみなみならぬ想いでこの撮影に臨んでおられたことがひしひしと伝わってきますね。
吉岡役は、当初日本人女優を考えていたのだそうですが、引き受け手がなくシム・ウンギョンさんになったとのこと。
なんだかなあ、と思いましたが、結果的にはシム・ウンギョンさんで大正解だったと思います。
私自身、この作品を観てから彼女のファンになってしまい、先日までテレビ東京で放映されていたドラマ「アノニマス」にも出演されていたので、毎週欠かさず観てしまいました。
そういう状況の中で杉原役を引き受けた松坂桃李さんにも、天晴と満腔の拍手を送りたいと思います。

それから音楽が大変すばらしかった。
岩代太郎さんはこれまでにも数々の映画音楽を担当されましたが、この映画の、抑制された中にも緊迫感を盛り上げる表現の仕方は目を見張るものを感じました。
必要なシーンに必要な音を入れる。
当たり前のことのようですが、「音楽」を書きすぎている映画が一層目立つこの頃、このようなつけ方は大変好もしく思われました。

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