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ルーブル美術館展(愛を描く) [日記]

現在、国立新美術館で開催中の「ルーブル美術館展(愛を描く)」を観てきました。
「すみっコぐらし」とのコラボということで、若い女性やカップルもたくさん訪れていて、会場は相当な賑わいでした。

それでも、この頃の美術館では事前に観覧日時を指定しての前売りという形態が定着しているようで、人数の割には比較的混雑の度合いは小さかったような気がします。
ただ、照明が暗かったことと、絵の解説文の文字が小さかったこともあって、老人特有の弱視(白内障の疑いあり)の身には、その点が大変もどかしかった。

今回の企画展は。「LOVRE」の中から「LOVE」を強調するという、なかなか面白い試みです。

プロローグと第4室は写真撮影も許されていて、第4室では私も何枚かスマホで撮影しました。
今どきのデジカメは、スマホのものも含めて、ストロボなどをたかなくても光量的には問題なく撮影できますから、展示作品が痛む可能性というよりも、写真撮影に伴う渋滞や混雑を避ける、という意味合いでそれを制限しているのかもしれませんね。
というのも、本場のルーブル美術館では、目玉の「モナ・リザ」を含めて撮影は自由(ただし、確かストロボは禁止だったと記憶していますが)だったので。

私がルーブル美術館を初めて訪れたのはもう30年近く前になります。
ラファエロ、ドラクロワ、フェルメールなど、大好きだった画家の絵画はもちろん、ニケ像、ミロのビーナス、モナ・リザなど、観たくて憧れていたものが数限りなくあり、時間のたつのも忘れるほどでした。
今回の企画展で展示されている所蔵品は、その意味では現地でそれほど熱を入れて観たものではなく、そういえばその絵もあったな、程度の、作品に対して大変失礼な印象を持っていたような、少し申し訳ない気がして、今回はしっかりと「拝見」しました。

とはいえ、例えばアリ・シェフェールの「パオロとフランチェスカ」などは、その初めてのルーブル体験でも胸をうたれ、じっくりと見入った記憶が鮮明に残っています。
この二人の悲劇に関し、私は別のブログで次ような記事を書いたことがあります。

パオロとフランチェスカ

ダンテの神曲はさすがに稀代の名著で、何度読み返しても新たな発見がありますが、その中でもこの「パオロとフランチェスカ」と「ウゴリーノ・デッラ・ゲラルデスカ」を取り上げた下りは涙を禁じえません。

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この絵では、パオロとフランチェスカの右横に、ダンテとウェルギリウスが描かれており、神曲における地獄の第二環で永遠に黒い風に吹き流され漂い続ける二人に出会い言葉を交わす場面を彷彿とさせます。
改めてじっくりと観ましたが、悲しいほどに繊細で美しい作品ですね。
この二人の悲劇に触発され、絵画は勿論、音楽(チャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」)、戯曲、ザンドナーイなどによるオペラなど、数多くの派生的芸術作品が生み出されているのは皆さまご存じのことと思います。

さて、先にも書きましたように、今回の企画展ではフラゴナールとドラクロワくらいが、私のように絵画にあまり明るくない人間でも作品と紐づけで知っている画家でした。
しかし、展示されている作品は、さすがにルーブル所蔵だけあり、どれも大変見ごたえのあるものばかりです。
写真を撮れたものだけ、以下に紹介します。

「アモルとプシュケ」フランソワ・ジェラール
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「アポロンとキュパリッソス」クロード=マリー・デュビュッフ
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「エンデュミオンの眠り」アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾン
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「ヘロとレアンドロス」テオドール・シャセリオー
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「友情の杯を交わすヒュメナイオスとアモル」ジャン=バティスト・ルニョー
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画像が不鮮明なのは何卒ご容赦のほどを。

ところで、この企画展の入場料は2100円でした。
このところ都心の美術館に出向くことがほとんどなかったので、相場がどのくらいになっているのか知らなかったのですが、意外に高いな、というのが実感です。
フランスからの運搬や保管、それに関する各種の保険料などを鑑みれば、やはりこのくらいの価格になるのはやむを得ないのでしょうか。

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夏炉冬扇

2100円。高いです!
by 夏炉冬扇 (2023-03-07 21:01) 

tochimochi

美術館にはほとんど縁がない人生でしたが、伊閣蝶さんの解説で興味も少し湧いてきました。絵画から音楽が生み出される事も有るのですね。
写真撮影禁止はストロボによる作品の傷みを考慮してのことだったのですね。
by tochimochi (2023-03-08 17:33) 

のら人

確かに、ちと考える料金ですね。^^;
これ程物価高がエスカレートすると例え行きたくとも、文化的な催事に懐を裂くのを控える動きが出そうですね。
by のら人 (2023-03-08 19:21) 

Cecilia

この「アモルとプシュケ」、大好きです。ほかにもアモルとプシュケを題材とした絵はたくさんありますが、これが一番好きです。(プシュケの顔が好き)確か児童用の世界名作全集フランス編の表紙に使われていたように記憶しています。
フラゴナールも大好きで、急に思い出しましたが学校(中学?)で名画の複製を販売していた時に「鳩を抱く少女」の絵を購入した記憶があります。
関西に来たら是非行きたいと思っています。料金高いですね~。
by Cecilia (2023-03-09 06:44) 

サンフランシスコ人

「意外に高いな、というのが実感です....」

円安、インフレ、ウクライナ、台湾、新型コロナウイルス感染症、国家は財政危機に直面しているフランス....

「2100円...」

サンフランシスコで、ラーメン店のラーメンはもっとします...
by サンフランシスコ人 (2023-03-09 07:14) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんにちは。
やっぱりこの値段は高いと思われますよね。
by 伊閣蝶 (2023-03-11 11:25) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんにちは。
絵画から音楽が生み出されることは、やはりかなりたくさんあります。
有名どころでは、ムソルグスキーの「展覧会の絵」などがありますね。
年代の古い油絵などは、非常にデリケートなので強い光線を浴びることによる影響も大きいのだろうと思われます。
高解像度のデジカメが主流になってきた現在では、そうした影響はないのでしょうが。
by 伊閣蝶 (2023-03-11 11:32) 

伊閣蝶

のら人さん、こんにちは。
こうした文化的な部分にお金をかけることが躊躇されるほど、様々な値段が上がっています。
早く落ち着いてくれるといいのですが。
by 伊閣蝶 (2023-03-11 11:34) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
この「アモルとプシュケ」、仰る通りプシュケの顔がとても可憐で抜きんでていると私も思います。世界名作前週の表紙に使われていたとは寡聞にして知りませんでしたが。
フラゴナールは「読書をする女」などが有名ですが、確かに「鳩を抱く少女」は複製画もたくさん出回っています。
この展覧会、確か京都でも企画されていると思います。
料金は高めのように思いますが、機会がございましたらお出かけください。
by 伊閣蝶 (2023-03-11 11:40) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんにちは。
米国ではかなりインフレが進んでいるようで、大変だなと感じています。
日本も他人ごとではありませんが。
by 伊閣蝶 (2023-03-11 11:42) 

Jetstream

いい絵を見られてきましたね。名作にふれるのは心が富みます。
かっては、いろんな美術館を巡ったことがありますので記事で覚醒されました。どれくらいの点数かわかりませんが、他の国の物価水準を考えるとリーズナブルかもしれないですね。問題は日本の賃金水準が低いので極端なデフレ、コストダウン→低賃金と悪循環のスパイラスかも。
本筋から離れたコメントで御免なさい。
海外へ出かけてみるのは大変、こうして日本で名作を見られるのはいいですね。
by Jetstream (2023-03-13 23:45) 

サンフランシスコ人

「意外に高いな、というのが実感です....」

それに....美術展への日本企業の寄付金の減少?

「米国ではかなりインフレが進んでいるようで....」

サンフランシスコで、卵12個が$12....
by サンフランシスコ人 (2023-03-14 03:42) 

伊閣蝶

Jetstreamさん、こんにちは。
replyが遅くなりすみませんでした。
都心の美術館は、どうしても混雑からフリーではないので敬遠しがちでしたが、今回は出かけてみて正解でした。
地方にある美術館は比較的ゆったりと観られるので、旅のついでに立ち寄ることが多くなりました(料金も安め?)。
値段のこと。仰る通り他国の物価水準から考えればリーズナブルなのかもしれません。
ただ、自分自身の懐具合を鑑みると、やっぱりちょっと考えてしまう料金でした。
by 伊閣蝶 (2023-03-19 16:32) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんにちは。
鶏卵は、鳥インフルエンザの影響で、どこも品薄が続き価格も上がっているようですが、それでも12個で$12は驚かされます。
by 伊閣蝶 (2023-03-19 16:35) 

サンフランシスコ人

この演奏会で、$25が一番安い価格.....卵2パックの値段....

レナード・スラットキン指揮&ナッシュヴィル交響楽団

http://www.nashvillesymphony.org/tickets/concert/2022-2023-season/classical-12-copland-s-rodeo-majestic-elgar/

Nashville Symphony | Leonard Slatkin, conductor
Program

Copland - Rodeo
Leonard Slatkin - Kinah
Elgar - Symphony No. 1
by サンフランシスコ人 (2023-03-21 01:55) 

Cecilia

お久しぶりです。

7月はじめに京セラ美術館に行き観ました!!
長女と解説を読みながらじっくり回ったのですが、それなりに人も多かった(思ったほどではありませんでしたが)こともあり、全部見るのに3時間近くかかりました。展覧会でこんなに時間をかけて観たのは初めてです。
開催中に他の家族とも行きたいと思っています。
by Cecilia (2023-07-17 06:24) 

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