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南博人さんが亡くなりました [山登り]

南博人さんが亡くなりました。

【訃報】南博人氏=登山家

前穂高屏風岩や谷川岳一ノ倉沢などを中心に数多くの初登攀記録を持ち、日本におけるアルパイン・クライミングの最盛期(1960年代)を代表するクライマーの一人でした。

その輝かしい足跡の一部が、所属されていた東京雲稜会のページにアップされていますので、ご紹介します。

東京雲稜会の踏み跡

南さんのお名前は、恐らく新田次郎氏の「神々の岩壁」を通じてご存知の方が多いものと思われますが、私はむしろ、瓜生卓造氏の「谷川岳(中公新書)」における記述の方が印象深く残っております。

私は残念ながらご本人に直接お会いしたことはございませんが、山の先輩によると、誠に誠実かつ気さくで、あれほどの初登攀記録を持ちながら、それをひけらかしたり自慢するようなことは全くない方だったそうです。
「古のクライマー」の中には、自己顕示欲が旺盛で、ともすれば登ったことのないルートを登ったかのように吹聴する、一種の虚言癖にまみれた御仁も結構おられたりしますので、その意味からもかなりの人格者であられたのでしょう。
尤も、私の知る限りにおいて、真の実力を有するクライマーは、たいてい非常に控えめで決して大言壮語を吐くようなことはありませんでしたから、大きな目標を掲げて実践してこられた方々に共通する資質なのかもしれませんが。
その南さんですが、コップ状岩壁の初登攀を狙っていて、間一髪で雲表倶楽部と緑山岳会に先を越されたことを非常に悔しがっていたとのことでした。
これはなんだか、そのお気持ちがとてもよくわかり、語弊はありますけれどもほほえましくも感ぜられます。

享年84歳。
前立腺がんで亡くなったとのことですから、やはり大往生といっていいのでしょう。

先にあげた「神々の岩壁」の中でも大きく取り上げられていますが、南さんはヒマラヤ遠征に対して相当の情熱を傾けてこられていたそうです。
月々の僅かな収入の大半をそのための貯金に回していたのも、その真面目で誠実なお人柄からすれば納得できます。
ただ、ご本人は高度障害を起こしやすく重症化しやすい体質であったらしく、日本国内でも、例えば北岳バットレスなど3000mを超える岩壁では思うような登攀はできなかったようです。初登攀記録が屏風岩までなのも、そういった要因があったからなのでしょう。
あれほどあこがれていたヒマラヤ遠征がついに叶わなかったことは、南さんにとって正に切歯扼腕の想いであられたことと思います。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。







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コメント 8

のら人

おはようございます。
自分は本格的な登攀を目指していないため、詳細は解りかねますが、まさに真のクライマーだったのでしょう。安らかに眠って頂きたいですが、天国でも登攀を続けていくのでしょうね。
by のら人 (2016-06-23 08:40) 

伊閣蝶

のら人さん、こんにちは。
衝立岩正面壁の、無雪期・積雪期両方の初登攀者。もうそれだけで正に「神様」みたいな存在だと思いました。
無心の求道者、といった趣がありますね。
きっと、天国でも楽しくクライミングを続けておられることでしょう。
by 伊閣蝶 (2016-06-23 12:15) 

夏炉冬扇

南無阿弥陀仏
by 夏炉冬扇 (2016-06-23 18:34) 

tochimochi

私はクライミングの才能がなかったため、恥ずかしながら高名なクライマーはほとんど存じ上げていません ^^;
遅ればせながら本を読んでみようかという気になってきました。
火花は今日読了しました。


by tochimochi (2016-06-23 22:29) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
人生は無常だなと思います。
by 伊閣蝶 (2016-06-23 23:32) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
南さんは、あこがれのクライマーでした。
よろしければ是非ともお読みいただければと思います。
ところで「火花」、読了なさったとのこと。いかがでしたか?
by 伊閣蝶 (2016-06-23 23:35) 

いっぷく

>前立腺がん
進行は遅いといわれますが、
やはりがんは命を脅かす病なのですね。
by いっぷく (2016-06-24 03:09) 

伊閣蝶

いっぷくさん、おはようございます。
前立腺がん、外科手術はもちろん、ホルモン療法など様々な治療法がありますが、やはり完全寛解は困難なのでしょう。
この病いで鬼籍に入られた方が、私の回りにもたくさんおられます。
by 伊閣蝶 (2016-06-24 07:04) 

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