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クリュイタンスのボックスCD(15枚組) [音楽]

冷え込みが厳しくなってきています。
それでも朝のうちは快晴で、明け方の空に下弦の月が浮かんでいました。
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衆議院選の投票に出かけた時には、怪しい雲が広がり、俄雨が降ってきて、何だかそれだけで憂鬱になってしまいました。
選挙結果は大方の予想通りでしたね。
それでも共産党が躍進したのは、私としては評価しています。

アンドレ・クリュイタンスの15枚組ボックスCDが発売されました。


収録内容は、以下の通りです。

Disc1
● ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 op.21
 録音時期:1958年12月19日
● ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 op.55『英雄』
 録音時期:1958年12月
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc2
● ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 op.36
 録音時期:1959年12月15,16日
● ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 op.60
 録音時期:1959年5月
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc3
● ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 op.67『運命』
 録音時期:1958年3月10,11,13日
● ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 op.92
 録音時期:1957年2月
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc4
● ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 op.68『田園』
 録音時期:1960年3月2,3,9日
● ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
 録音時期:1957年12月、1960年3月
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc5
● ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 op.125『合唱』
 グレ・ブロウェンスティーン(ソプラノ)
 ケルスティン・マイアー(アルト)
 ニコライ・ゲッダ(テノール)
 フレデリック・ギュトリー(バス)
 ベルリン聖ヘドヴィッヒ教会合唱団
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音時期:1957年12月
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc6
● ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音時期:1958年11月4,5日
 録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
● ベルリオーズ:序曲『ローマの謝肉祭』 op.9
● ベルリオーズ:序曲『海賊』 op.21
 フランス国立放送管弦楽団
 録音時期:1961年3月17,18日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc7
● ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ編:交響詩『禿山の一夜』
● ボロディン:交響詩『中央アジアの草原にて』
● リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音時期:1958年11月18,19日
 録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール
● リムスキー=コルサコフ:序曲『ロシアの復活祭』 op.36
● リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行~歌劇『サルタン皇帝の物語』より
● ボロディン:ダッタン人の踊り~歌劇『イーゴリ公』より
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1959年9月8-11日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc8
● ドビュッシー:管弦楽のための『映像』(ジーグ/イベリア/春のロンド)
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1963年9月11,12,14日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム
● フォーレ:レクィエム op.48
 ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(ソプラノ)
 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
 アンリエット・ピュイグ・ロジェ(オルガン)
 エリザベート・ブラッスール合唱団
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1962年2月14,15日、5月25,26日
 録音場所:パリ、聖ロッシュ教会

Disc9
● ドビュッシー:舞踏詩『遊戯』
 パリ音楽院管弦楽団
 録音場所:パリ、サル・ワグラム
● フランク:交響詩『のろわれた狩人』
● フランク:交響詩『アイオリスの人々』
● フランク:交響詩『ジン(魔神)』(ピアノと管弦楽のための)
● フランク:交響詩『贖罪』
 アルド・チッコリーニ(ピアノ)
 ベルギー国立管弦楽団
 録音時期:1962年12月20,21日
 録音場所:ブリュッセル、パレ・デ・ボザール

● ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1962年9月26,27日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc10
● ラヴェル:バレエ音楽『ダフニスとクロエ』全曲
 ルネ・デュクロ合唱団
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1962年6月1,4-8日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム
● ラヴェル:組曲『クープランの墓』
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1962年9月26,27日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc11
● ラヴェル:ボレロ
 録音時期:1961年11月27日
● ラヴェル:スペイン狂詩曲
 録音時期:1962年4月
● ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
● ラヴェル:道化師の朝の歌
● ラヴェル:海原の小舟
● ラヴェル:ラ・ヴァルス
 録音時期:1962年10月2,3日
 パリ音楽院管弦楽団
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc12
● ラヴェル:バレエ音楽『マ・メール・ロア』全曲
 録音時期:1962年4月19-25日
● ルーセル:バレエ音楽『バッカスとアリアーヌ』第2組曲 op.43
● ルーセル:バレエ音楽『蜘蛛の饗宴』 op.17
● ルーセル:管弦楽のためのシンフォニエッタ op.52
 録音時期:1963年11月5-13日
 パリ音楽院管弦楽団
 録音場所:パリ、サル・ワグラム

Disc13
● ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
● ワーグナー:『ローエングリン』第1幕への前奏曲
● ワーグナー:『ローエングリン』第3幕への前奏曲
● ワーグナー:『さまよえるオランダ人』序曲
● ワーグナー:『タンホイザー』序曲
 パリ・オペラ座管弦楽団
 録音時期:1959年6月12,20日、7月1日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム
● シューベルト:交響曲第8番ロ短調 D.759『未完成』
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音時期:1960年11月25日
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

Disc14
● ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 op.72a
 録音時期:1958年3月
● ベートーヴェン:『エグモント』 op.84~序曲
● ベートーヴェン:劇音楽『アテネの廃墟』 op.113~序曲
 録音時期:1960年3月
● ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』序曲 op.72b
 録音時期:1960年11月
● ベートーヴェン:『プロメテウスの創造物』 op.43~序曲
● ベートーヴェン:序曲『コリオラン』 op.62
 録音時期:1959年4月
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会
● ラヴェル:古風なメヌエット
 パリ音楽院管弦楽団
 録音時期:1962年10月2,3日
 録音場所:パリ、サル・ワグラム
● ラヴェル:ラ・ヴァルス
 フィルハーモニア管弦楽団
 録音時期:1958年11月4,5日
 録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール

Disc15
● ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 op.67『運命』~第1楽章
● モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550~第1楽章
● チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調 op.36~第3楽章
● メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 op.90『イタリア』~第4楽章
● モーツァルト:セレナード第13番ト長調 K.525『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』~第1楽章
● ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 Op.95『新世界より』~第2楽章
● ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 Op.93~第2楽章
● チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 Op.74『悲愴』~第3楽章
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音時期:1958年12月9-13日
 録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール

● リスト:交響詩『前奏曲』
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音時期:1960年11月25日
 録音場所:ベルリン、グリューネヴァルト教会

 アンドレ・クリュイタンス(指揮)

クリュイタンスでは、私は、何といってもフォーレのレクイエムの演奏が大変印象に残っていて、世の中にこれほど美しく厳しく、そして、魂を慰撫してくれる優しさに溢れた音楽があるのかと思ったほどでした(もちろんこの曲も、このボックスの中におさめられています)。
これはもちろんフォーレのレクイエムそのものの素晴らしさがあってのことですが、クリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団のこの演奏は、その敬虔な美しさをたたえて間然とするところがありません。
この指揮者とこのオーケストラの、正にこれ以上ないほどの幸福な結びつきが生んだ演奏なのだと思います。
1967年にクリュイタンスが亡くなると、パリ音楽院管弦楽団は解散されてしまい、もう二度と、あの丹誠で真摯で諧調の整った演奏を聴くことはできなくなりました。

このボックスCDの写真をご覧になってもお分かりの通り、クリュイタンスは羨むべきほどの美しく優しい姿態をしておりました。
この見た目さながらに、素直で優しい音を響かせてくれ、指揮者にありがちな自己顕示欲とは無縁の方だったそうです。
指揮者の中には、いわゆる暴君的といいましょうか、オーケストラの上に君臨するのみならず聴衆すらも支配下に置こうとするマッドな人もいて、それはそれなりに強く訴えかけてくるものがあるのですが、クリュイタンスの演奏からは、そうした人為的なカリスマ性は見えてきません。
その意味では、オーケストラ統御の面で「大丈夫なのか?」という疑問も呈せられましょうけれども、この人のもつ深い教養と音楽への真摯な想いが、そのままオーケストラに伝わり何のケレン味もなく響きとして紡ぎだされる様を思えば、オーケストラとの間の、深い信頼関係がどれほど重要なものかを改めて感じさせてくれるような気もします。

クリュイタンスはベルギー出身ですが、その大半をフランスでの活躍に費やしましたから、やはり、ラヴェルやドビッシー、ベルリオーズ、フランク、といったところは自家薬籠中の演奏といえましょう。
しかし、彼の経歴にはバイロイトでワグナー作品を演奏したというものもあり、ドイツ古典でも素晴らしい演奏を残しています。
特にベートーヴェンでは、ベルリン・フィルを振った「田園」などの超名演がありますね。

このクリュイタンスの代表的な演奏のCDが、15枚組で、しかも全てステレオ録音という嬉しい形のまま、何と4000円を切る価格で入手できる。
全く何というありがたい時代なのかと、つくづく思います。
まだ数枚を聴き始めた段階ですが、音は極めてクリアで、とても50年以上前の録音とは思えません。
そんなつまみ食いの中で、真っ先に聴いたのはベルリオーズの「幻想交響曲」です。
例の第5楽章「ディアス・イレ」の鐘の音、ここは一番の聴かせどころで、どうしても力が入ってしまう演奏が多いのですが、非常に抑制の利いた演奏となっており、それ故になおのこと恐るべき緊張感が漂ってきます。
下手な味付けを拒絶するかのようなその演奏姿勢に、改めて頭の下がる想いです。
それから、ベートーヴェンの交響曲全集。
収録内容でもお分かりの通り、第1番・第3番を同時に収録といった形で、なかなか考えられています。
矢も楯もたまらず聴いたのは、第2番と第4番でした。
なんという流麗で端正な演奏かとため息をついてしまいました。
ベートーヴェンの交響曲の中でも、この二曲は私の特にお気に入りなので、これが一枚にカップリングされているだけで嬉しくなったのですが、ベルリン・フィルを相手に決して力むことなく、流れるように音楽を作っていく姿勢は、さすがにクリュイタンスだなと思います。

そして、ドビッシーの「映像」。
独奏楽器の扱いと、それを包み込むような独特な和声が素晴らしく、変な話ですが、武満徹さんがドビッシーの曲を好んだ理由がひしひしと伝わってきました。

などと、どうも断片的なことばかり書きましたが、 ボロディンやリムスキー・コルサコフの曲などが、一体どのように料理されているのか、今からワクワクしているところです。
こんなに盛りだくさんの夢が詰め込まれたボックスCDも珍しいのではないかと、これからの楽しみがまた一つ増えました。
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夏炉冬扇

これではなんでもやってしまいそうです。
不安。
by 夏炉冬扇 (2014-12-15 17:59) 

謎のじじい

クリュイタンスのパリ音楽院の奏でるフランスものは高校時代からのお気に入りで、LP、CD含め、相当数を所有していますが、この価格なら、改めて購入するという誘惑に負けそうです。(笑)
レクイエムでは若き日のディスカウが頑張り過ぎて、少し浮き気味なところがあるのも微笑ましい感じですね。
マメールロワもチャーミングな演奏ですし。

P.S.奥様の容態は如何でしょうか。一刻も早い回復をお祈り申し上げます。
by 謎のじじい (2014-12-15 19:40) 

tochimochi

予想されたこととはいえ、今回の選挙結果にはがっかりです。
仰るとおり共産党の躍進だけが救いです。

by tochimochi (2014-12-15 22:18) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
政権与党の「暴走」を止める手だてがなくなりそうですね。
by 伊閣蝶 (2014-12-16 23:17) 

伊閣蝶

謎のじじいさん、こんばんは。
クリュイタンスの演奏録音、たくさんお持ちとのこと。
私も同様ですが、やはりこの価格に釣られて買ってしまいました。
価格ももちろんですが、なんといっても録音が素晴らしいので。
フォーレのレクイエム、仰る通りディスカウの若々しい声が聴けて、それもまた興味深いところでした。
ところで、家内のこと、ご心配頂き誠にありがとうございます。
おかげさまで、昨日、手術も無事にすみました。病理検査の結果待ちではありますが、取り敢えずホッと安堵しております。
by 伊閣蝶 (2014-12-16 23:21) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
史上最低の投票率がすべてを物語りますが、5割下回る支持しかなかった政権与党が、衆議院の三分の二の議席を確保するのはかなりの違和感があります。
共産党の躍進と次世代の党の惨敗が、僅かに救いでした。
by 伊閣蝶 (2014-12-16 23:25) 

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