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クラウディオ・アバドさんの訃報 [音楽]

厳しい寒気もようやく緩むという予報が出ておりましたが、昼休みにちょっと出かけた折には、とてもそんな感じではなく、相変わらず冷たい北風が吹いていました。
それでも、陽射しは格段に暖かく感じます。
津でも水仙の花が咲き始め、春の近いことを告げてくれていました。
知人から聞いたのですが、こういう時期の陽射しの温もりを指して「光の春」という言葉があるのだそうです。なんだかほっとする素敵な表現だなと思わず笑みがこぼれたところです。

一月になってから仕事を中心に多忙な日が続いていて、このブログの更新はおろか皆さんのブログへの訪問も滞ってしまっていた状況でした。
しかも、大学での講義も含む講演が立て続けに2件入ってしまい、パワーポイントでその資料作りをしなければならなかったこともあって、結構な負担感でした。
その講義も昨日終わり、やっと一息ついて、ネットでニュースなどを見ていたら、なんと指揮者のクラウディオ・アバドさんが亡くなったとのこと!



無念です。
享年80歳ですから、あの大病からの奇跡の復活を思えば、よくぞここまで頑張って下さったとは思いますが、やはり余りに残念でなりません。
アバドさんのことについては、以前「ペルゴレージの「スターバト・マーテル」他」で取り上げたことがありますが、正に希有の芸術家でありました。
アバドさんの残したレコードやCDは数多く、いわゆる「外れ」はほとんどない、どの演奏もその確かな表現力と緻密な構成力に感嘆させられてしまったものでした。
その中でも忘れられない演奏を少し取り上げてみます。

アバド&ウィーン・フィル「ブラームスのハンガリー舞曲集全曲盤」

ブラームスの「ハンガリー舞曲集」はもともと四手用のピアノ曲として書かれた作品で、管弦楽曲版はブラームスのみならず様々な人の手によって編曲されたものです。
中でも5番が大変に有名ですが、21曲全曲の管弦楽曲版の演奏レコードはあまりなくて、その意味でも貴重な録音だと思います。

アバド&ベルリン・フィル「ヴェルディのレクイエム」

アバドさんが、胃がんから奇跡の復活をみせたあとの録音です。
以前、「ヴェルディのレクイエム概説」という記事でも取り上げたことがありますが、正に入魂の演奏で、聴いていて涙が止まらなかったことを思い出します。

アバド&ベルリン・フィル「マーラー交響曲第9番」

アバドさんの残したマーラーの演奏はとりわけ秀逸で、「復活」「三番」「四番」「七番」など、名盤は枚挙の暇がありませんが、私はその中でも、この9番の演奏が忘れられません。
マーラーの9番は私のとりわけ大好きな曲ですが、曲自体が極めつけの名作であるため、いやしくもこの曲を演目に取り上げようと考える演奏者であれば、その時点で成功は半ば約束されたものではないかと思います。
逆にいえば、そうした演奏の中でさらに深いものを追求しようとすること自体、大変な困難を伴うものであるということもいえましょう。
このCDはそうした意味でも希有の演奏ではないかと思います。
ベルリン・フィルの磨き上げられ演奏と、恐るべきダイナミクスも聴きものです。

数多く来日され、たくさんの感動を私たちに与えて下さった偉大なる指揮者。
やはり何とも残念でなりません。
しかし、亡くなる直前まで現役を貫いたその姿勢には、本当に頭が下がります。
心よりご冥福をお祈り致します。
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コメント 8

hirochiki

大学で講義をされたとのこと、本当にお疲れ様でした。
当日も大変だったと思いますが、それまでのご準備はそれ以上に大変だったのではないでしょうか。
「光の春」は、私も初めて知りましたが素敵な言葉ですね。
この時期の日の光は、本当にありがたく感じます。
アバドさんが胃がんから復活されたときの演奏は、きっと魂のこもったより素晴らしいものだったに違いありませんね。
心からご冥福をお祈りいたします。
このところノロウイルスやインフルエンザのニュースを多く目にするようになりました。
伊閣蝶さんも、くれぐれも体調管理にはお気をつけ下さいね。
by hirochiki (2014-01-25 07:36) 

tochimochi

光の春、いい言葉ですね。寒さは厳しくとも陽射しは暖かく感じる・・・実感です。
大学での講義や講演となるとその準備も大変だったことは想像が出来ます。またどういう内容だったのかも興味深いところです。
お疲れ様でした。

by tochimochi (2014-01-26 17:35) 

夏炉冬扇

今晩は。
知識がなくて、すみません。
南無阿弥陀仏
by 夏炉冬扇 (2014-01-26 19:20) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんばんは。
パワーポイントでの資料作りは久しぶりのことでしたから、かなりのプレッシャーでした。
伝えたい内容をどうやって資料に落としこんでいくべきか、かなり悩んだのですが、結局その迷いがそのまま出てしまったようにも思います。
「光の春」、私も初めて聞いて何とも心が温かになりました。陽の光の暖かさが嬉しいこのごろですし。
アバドさん、残念ではありますが、素晴らしい演奏をたくさん残してくれたことには感謝の念を禁じ得ません。ご冥福をお祈りしたいと思います。
ところで、インフルエンザのみならずノロウィルスの蔓延は本当に気になるところです。
どうぞhirochikiさんもくれぐれもお気をつけ下さいますように。

by 伊閣蝶 (2014-01-26 22:48) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
昨日は少し風も穏やかでしたが、今日の夕方になって強く冷たい北風が再び吹き始め、せっかくの「光の春」も遠のいてしまいました。
でも、水仙の花が咲き、梅の花が膨らみ始めています。
大学での講義。私たちの頃とは違って、今は様々な学科があるようです。
今回伺ったのは短大でしたので、社会に出たときに知っておくと良いかもしれない、市場経済の話とか面接の際のエントリシートの書き方などを話しました(私も採用面接担当だったことがあるので)。
しかし、学生相手の話はやはり難しいものですね。
by 伊閣蝶 (2014-01-26 22:53) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
温かなお悔やみのコメント、ありがとうございます。
きっと、アバドさんにも届くことと存じます。
by 伊閣蝶 (2014-01-26 22:54) 

のら人

大学での講演ですか。
大変お疲れ様でした。 ^^
最近は仕事でも呆れる程ダラケテいまして、パワーポイントを駆使しプロジェクター使用、レーザーポインターで颯爽?としたプレゼンは遥か過去の彼方の記憶でございます。(苦笑)
by のら人 (2014-01-27 20:38) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
正しく仰る通りのプレゼン形式の講義でした。
プロジェクタとレーザーポインタも使って、颯爽とはいきませんでしたが、年甲斐もなく従事した、というところです。
今、振り返ってみると、講義そのものよりも、久しぶりにパワーポインタで資料を作ったことの方が面白かったように思います。
by 伊閣蝶 (2014-01-27 22:03) 

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