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テオ・アンゲロプロス監督が事故死! [映画]

日々、冷え込みが厳しくなっているような気がします。
今朝の冷え込みも相当なものでした。
いつもの年なら、そろそろ蕾も見え始める近所の梅の木も、まだ全く花の気配はありません。
強烈な寒波が南下してきているため、日本海側では記録的な豪雪となっているようです。
今年は、とりわけ雪降ろし作業中の転落事故や家屋の倒壊などの事故の発生率が高いとのこと。
災害の発生が大変心配です。

テオ・アンゲロプロス監督が亡くなりました。


新作映画撮影中の交通事故(道路を横断しようとしてバイクにはねられた)とのことで、享年76歳。
全くなんということでしょうか!
病気などでの逝去というのであればまだしも諦めもつきますが、長年ギリシャを内省的に見つめ続ける映画を撮り続けてきた彼が、「エレニの旅」当たりからその視点を広く求め始め、その「20世紀三部作」の悼尾を飾るであろうと期待された新作「もう一つの海」の撮影中に、このような形で亡くなるなど、信じがたいほどの衝撃です。

ここのところ、著名なアーティストの訃報が続いていて、それでなくとも気持ちが沈んでおりましたが、アンゲロプロス監督のこの惨劇は、正に比類のない悲嘆でありました。

無念、残念、悔しくて歯がみをしたい気分です。

私が初めて接したアンゲロプロス監督の作品は、1979年に公開された「旅芸人の記録」でありました。
長回し、360度のパン、ワンカットの中での時間の経過表現など、非常に斬新な映像表現が展開され、映画の中で刻まれる時間の経過がこれほどまでに強烈な印象を与えた作品をそれまでに観たことがなかったので、私はいっぺんにその映像美の虜になってしまったのです。
さらに、「旅芸人」をモチーフとして選んでいるわけですから、劇中に歌は頻繁に登場するものの、それ以外のいわゆる「劇伴」的な音楽を完全に排除する行き方も大変興味深く感動しました。
むしろ、その映像の中から私は様々な音楽を聴き、その無限の広がりに酔ったものです。
台詞も極端に少なく、最初に観た時には内容をよく把握できなかったので、映画館に居座り連続して二回観たものですが、さすがに240分×2では、腰やお尻が痛くなってしまいましたね。
彼のこの独特な映像美に魅かれた映画監督は数多く、日本でも相米慎二監督や森田芳光監督の映画などにその影響を見ることができるのではないかと思います。

どの作品も私にとっては思い出深いものばかりですが、やはり最も印象に残っているのは、最初の出会いであった「旅芸人の記録」と「アレクサンダー大王」でしょうか。
いずれも、SONYからビデオ(β)が発売された時に購入しましたが、今、アンゲロプロス監督の作品は単体では販売されていないようです。
DVDボックスが4巻まで発売されていて、何れもちょっとお高いのですが、余裕ができたらそのうちに購入したいと思っています。


※テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX 1 現代史三部作(『1936年の日々』『旅芸人の記録』『狩人』)


※テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX 3 時空を越える旅(『アレクサンダー大王』『蜂の旅人』『霧の中の風景』)

ギリシャは、国自体はかなりひどい状況ですけれども、傑出した芸術家を多く輩出していますね。
テオ・アンゲロプロス、マリア・カラス、イアニス・クセナキス、ディミトリ・ミトロプーロスなどなど。
ヘルベルト・フォン・カラヤンも、彼はザルツブルク生まれですが、ルーツはアルメニア人だという話もありますから、ギリシャとは浅からぬ関係がありそうです(岩城宏之さんのお話によると、カラヤンがギリシャに演奏旅行を行った際、「故国に帰った」と発言したそうです)。

いずれにしても、誠に残念でなりません。
願うことならば夢であってほしい…。


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hirochiki

こちらも、夕方に会社を出る頃から雪がちらつき始めました。
明日の朝がとても心配です。
そちらの雪はいかがですか。お気をつけてお帰り下さいね。

テオ・アンゲロプロス監督は、撮影中にバイクにはねられてお亡くなりになったのですね。
ご家族も何の心の準備もなかったのですから、本当にお気の毒です。
ご本人も、まだまだこれからが楽しみだったのにさぞ心残りだと思います。
交通事故だけは、いくら自分が気をつけていても相手があることですし予測がつかないので、本当に怖いですね。
心からご冥福をお祈りいたします。
by hirochiki (2012-01-26 18:55) 

夏炉冬扇

こんばんは。
テレビのニュースで見ました。
by 夏炉冬扇 (2012-01-26 22:33) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんばんは。
御地でも雪がちらつき始めたとのこと。こちらでは道路の雪はおおかた消えました。
しかし、明日もかなり冷え込むようですので、くれぐれもお気をつけ下さいね。

交通事故など、事故で突然亡くなった時、残された家族の喪失感は大変深刻なものだと思います。
私は山登りを趣味にしていますが、山仲間が山で亡くなったとき、ご家族の悲嘆は見るに耐えないものでした。
「信じたくない」という気持を抑えることができない、ということなのでしょう。
アンゲロプロス監督、このようなご逝去をされるとは思ってもみないことでしたから、残されたご家族の悲嘆、如何ばかりかと拝察します。
本当に事故は怖いなと改めて思いました。
by 伊閣蝶 (2012-01-26 23:45) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
私も昨晩のNHKニュースで知りました。
ショックでした。
by 伊閣蝶 (2012-01-26 23:47) 

ムース

!!!!!。 驚きです!。私にとってギリシャとはアンゲロプロスでしたから・・・。とはいえ、同時代に作品を観れたことは貴重な経験でした。もっとも、エレニの旅などはちょっと難解で???のままになっており、是非観直してみたいと思います(レンタル屋にはなさそうですが・・・)。
 旅芸人の記録が彼の最高傑作であろうとは思いますが、個人的には「霧の中の風景」がベストです。これはメッセージが分かりやすいというのもありますし、映像美もありますし、子役が天才的に上手いというのもあります。
 「アート系」という括り方をされることもありますが、映画に真の芸術としての「アート」を感じることの出来る稀有な監督でした。タルコフスキーやタヴィアーニ兄弟なんかもそうでしたが、今日ではこういう映画は興行の関係もあるのでしょうが作られなくなっています。それだけに、大変残念です。合掌。
by ムース (2012-01-27 23:54) 

kawasemi

nice&コメントありがとうございました。
まだまだ寒さが厳しくなりそうです。
インフルエンザ対策を怠りなく。
by kawasemi (2012-01-28 14:58) 

don

240分、4時間ですか。
とても長い映画なんですね。
2回見ると8時間ですね、たしかに腰がいたくなりそうです^^
by don (2012-01-28 15:06) 

のら人

先週の月曜夜に降った雪が「氷」となって未だにアスファルト上に残っている23区内は異常な状態とも言えますね。 ^^;
お亡くなりになった監督の作品は見た事が無いですが、一度見てみたいです。
by のら人 (2012-01-29 20:14) 

tochimochi

今日の冷え込みも相当なものでした。
来週あたりからは緩んでくるのではと期待しています。
私も映画館では、1回では内容が理解できず、2回見ることがありました。
でも今は入れ替え制で1回しか見れなくなりましたね。
余計レンタルDVDに走ってしまいます。
by tochimochi (2012-01-29 20:28) 

伊閣蝶

ムースさん、こんばんは。

>私にとってギリシャとはアンゲロプロスでしたから

私も同じ想いです。
当時の私は23歳で、大いに映画に興味を持っていた頃でしたから、機会あるごとに様々な映画を観ていましたが、アンゲロプロスに出会ったことは正に衝撃でありました。
「霧の中の風景」、これは素晴らしい映画でした!
特に、姉弟の二人の子役がなんとも印象的な演技でしたね。
アンゲロプロスはタルコフスキーなどと同様に、映画という夢を見せてくれる希有の映像作家でした。
確かに興行的には難しいのかもしれませんが、こうした映画があまり作られなくなり、人々の関心も呼ばなくなっている状況は、実に寂しいものがあります。
by 伊閣蝶 (2012-01-29 22:07) 

伊閣蝶

kawasemiさん、こんばんは。
こちらこそ、nice!&コメントをありがとうございます。
寒さも今週いっぱい続きそうです。どうぞくれぐれもお気をつけ下さい。

by 伊閣蝶 (2012-01-29 22:09) 

伊閣蝶

donさん、こんばんは。
本当に長尺の映画です。
でも、やっぱり頑張って観てしまうのですね。やはり若かったからなのでしょうか。

by 伊閣蝶 (2012-01-29 22:10) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
仰る通り、驚いたことに、まだ日陰の小路には「氷」が残っています。
あれ以来ずっと気温が低かったことを改めた思い起こさせますね。
アンゲロプロスの映画、ちょっと長いので気合いを入れて観なければなりませんが、もしも機会がございましたら、是非ともご覧下さい。

by 伊閣蝶 (2012-01-29 22:11) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
今日もやっぱりかなりの冷え込みとなりました。
この冷え込みは今週いっぱい続きそうです。
でも、そろそろ立春ですから、それでもすこしは春めいてくるのでしょうか。
映画館、仰る通り、今は完全入れ替え制ですから、昔のように連続して2回3回と観ることができなくなりました。
そんなわけで、私もDVDに走ってしまいますね。

by 伊閣蝶 (2012-01-29 22:13) 

Cecilia

この監督のことは知りませんでした。
ギリシャは神話を通して憧れの国でしたが、今はひどい状況のようですね。
・・・とそこで思い出したのがギリシャ・ケファロニア島舞台の「コレリ大尉のマンドリン」です。
平和で美しい島で繰り広げられる惨事、痛ましい気持ちで観ていました。

by Cecilia (2012-02-11 14:56) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
「コレリ大尉のマンドリン」、私はまだ観ていませんが、音楽も題材となっている映画のようですね。
是非観てみようと思いました。
ギリシャ、仕事の関係で20年近く前に出かけたことがありますが、人々もとても陽気で明るい素敵な国でした。
今の状況を見るにつけ、何とか早く立ち直って欲しいと思わずにいられません。

by 伊閣蝶 (2012-02-11 16:18) 

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