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三ノ塔〜表尾根〜戸沢 [山登り]

昨日の日中は暖かでしたが、夜になって気温が下がり、21時過ぎから雨が降り始めました。
北国では街中でも雪がやってきそうです。
朝のうちは曇り空でしたが、お昼は柔らかな陽射が出ています。

いよいよ冬の到来。
その前に晩秋の山を楽しもうと、13日の日曜日、丹沢に出かけてきました。
仕事関係の友人からのオファーがあったのかきっかけです。
山登りを始めたばかりの方もおられたので、あまり混雑しないコースを選びました。

8時に小田急線渋沢駅に集合し、バスで大倉に向かいます。
東丹沢はちょうど紅葉の時期を迎える頃ということもあってか、渋沢駅は登山者で鈴なりです。
大倉行きのバスはすぐに満杯。
この乗客のほとんどは、恐らく大倉尾根を登って塔ノ岳に向かうのでしょう。
大倉尾根は、塔ノ岳への最短コースで、それゆえに人気があり、休日は四季を通じて登山者で混みあいます。
しかしこの尾根は、途中の堀山あたりの弛みを除き、ずっと登り一辺倒で面白みに欠けるところがあります。
ボッカトレーニングには最適なので、私もその目的では良く登りますが、如何せん登山者が多過ぎ!

そんなわけで、私が気に入っているのは、水無川を挟んで対岸にある三ノ塔尾根です。
ここも登り一辺倒ではありますが、登山者が格段に少ない静かなコースなのです。

水無川にかかる「かぜのつりばし」を渡って、戸沢に向かう林道を下に見ながら菩提林道方面に向かいます。
分岐を左に採り、林道を登っていくと、やがて林道伝いに迂回して牛首に出る道と、そのまままっすぐ尾根伝いに牛首に出る登山道の分岐点に至ります。
せっかくなので登山道を登りましょう。
入口の林道分岐にリンドウの花が咲いていました(*^_^*)
rindou.jpg

気持ちのいい樹林帯の中の道をゆっくり登っていくと、送電線の鉄塔に出ます。
鉄塔のある場所は周囲の木々が伐採されていることもあり、たいてい眺望が開けますので、ここでちょっと一休み。

その後、わずかに下ると、迂回してきた林道と合わせ、ここから三ノ塔尾根が始まります。
緩やかな登りを続けていると、左後方に眺望が開け、富士山の姿が眺められました。
「あっ!これで登るモチベーションが高くなりました!」とは、参加してくれた友人たちの言葉。
朝のうちは快晴だったお天気も、塔ノ岳あたりからわき出した雲が、だんだん空を覆い始めています。
ここで富士山の姿を眺められたのはラッキーだったのかもしれません。

三ノ塔尾根には危険個所は全くありませんが、樹林帯の登りが続くので少々うんざりさせられます。
みんなの気を引くために、右側のザレた斜面を指さしながら、「葛葉川などの沢登りをすると、ちょうどこの辺りに登り詰めるのですよ。それまでは滝を登ったり河原を歩いたりと楽しいのですが、最後はザレた斜面と藪こぎがまっています」などと解説しながら登りました。

頂上らしきものが確認できてからさらに20分近く登って、三ノ塔頂上に到着。8時45分に大倉から登り始めて11時に到着ですから、まあまあのペースです。
それまでは、ほんの数人しか出会わなかった登山者が、一体どこから登ってきたのだろう、というくらい山頂にひしめき合っていました。
sannotou.jpg
予想通り、雲が張り出してきて肌寒くなってきたので、バナナなどを食べて小休止のあと、眼下に見える烏尾山に向けて足を進めることにします。
三ノ塔から烏尾山にかけての下りは、ちょっと急なのですが、早速そこで登山者が渋滞(^_^;
こんな程度の下りで躊躇していたのでは、先が思いやられるとうんざりしました。

三ノ塔から見下ろした時には陽が当たっていた烏尾山も、到着するころには雲に覆われ、ちょっと怪しい雰囲気です。
karasuo.jpg

取り敢えず、風を避けて昼食の場所を確保。
朝淹れてきたコーヒーなどをみんなに振舞い、昼食とします。
私は全くスカタンなことに箸を忘れてしまったので、三ノ塔尾根の登りの際に拾った小枝をナイフで削って箸作り。
昔からよくやっていたことなのであまり苦にはなりませんが、未だにこんなことをしているようではどうにもいけませんね(^_^;

さて、予想以上の登山者の数と、恐らくあまり経験のない方が多いせいなのでしょう、ところどころ表尾根の縦走路で渋滞する状況を目の当たりにし、この分で行くと塔ノ岳まではそれなりの時間がかかり、しかも混雑が予想される大倉尾根を降りなければならないため、日没行動のリスクが高くなってきそうな予感がします。
残念ではありますが、塔ノ岳までの縦走は諦め、書策新道などを使って戸沢に降り、そこから林道で大倉に戻りましょうと提案しました。
林道歩きはかなり退屈なので、もしもヘッドランプを使う可能性を忌避しないのであれば、当初目標通り縦走を貫徹してもいいのですが、どうでしょう?というと、登山経験の少ない参加者から、林道歩きの方が安心であればそちらにして下さい、との回答。
ということで、今回は遺憾ながら塔ノ岳は諦め、再度挑戦しましょう、ということにしました。

北東側の眺望は比較的開けていて、三峰や宮が瀬ダムなどが望まれます。
先程通ってきた三ノ塔が膨大な山容を見せていました。
sannotou-karasuo.jpg

昼食を済ませて行者岳に向かいます。
途中で左側の谷に向かって広がる紅葉が見事に望まれました。
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行者岳の通過にはいくつかの鎖場がありますが、予想通りそのことごとくで大渋滞。
kusariba.jpg
中高年登山者に負けず劣らず、山ガールや山ボーイといった若者がたくさんおりましたが、鎖場にぶら下がって悲鳴を上げている様を写真に撮って歓声を上げるなど、ちょっと我々古いタイプの山屋には信じがたい光景が展開されます。
実は、塔ノ岳までの縦走に少々未練を抱いていた私でしたが、この有様をみて、やはり戸沢に下るべきだなと確信しました。
とってもつきあいきれません。

行者岳から新大日に至る間の乗越しには、書策小屋があり、渋谷書策(しぶやかいさく)さんが88歳の直前までずっと頑張って運営してこられました。
残念ながら、2009年の夏に書策さんは93歳で大往生。
その後、この、美味しいコーヒーなどを飲ませてくれた名物小屋も解体され、今では更地になっています。
表尾根を巡る登山コースは、(沢登りを除いて)基本的に水場がありませんが、書策さんが拓いた書策新道は、途中で、水無川本谷、源次郎沢、沖ノ源次郎沢、セドの沢などを横切るため(セドの沢左俣はツメ上がり)、稜線に出るまで水の心配をしなくていい稀有のコース。
しかも、他の登山道がほとんど樹林帯の中を黙々と歩かなくてはならないのに、この道は全般的に眺望が優れているうえ、沢や雪渓、滝などを横切りながら登ることができる、ご機嫌のコースなのです。
源次郎沢の下部を迂回したり、沖ノ源次郎沢のF1(20m)・F2(20m)に取り付く(余談ですが、この沖ノ源次郎沢F1・F2は登攀的要素の強い涸棚で、誠に面白いクライミングができます)のには誠に便利で、水無川本谷遡行時のエスケープルートとしても使えます。
セドの沢との出合いに架かる白竜の滝の脇から昔の坑道跡に出ることができ、そこは別天地のような気持ちのいい場所でした。私も大好きなお勧めスポット。
その上にある、小屋の水場には夥しいペットボトルがおいてあって、このコースを登ってきた山屋はみんなここでありったけの水を汲み、書策小屋に運んだものです。

というわけで、このコースを下りましょうと提案していたら、通りがかった登山者の方から、近頃、書策新道を歩きましたか?私は三年前に通ったのですが、書策さんが亡くなってからどうなったのかちょっとわからないので、と言葉をかけられました。
そうか、書策さんが亡くなり書策小屋もなくなったのに書策新道がそのまま残っている可能性は薄いかもしれない、私だって、最後に歩いたのはもう6年くらい前のことだし、と不安になりました。
そこで、小屋のあった場所の更地を回って偵察に行くと、なんと「通行止め」のテープが張られていました。
私ひとりなら強引に下ったかもしれませんが、経験の浅い友人たちと一緒に登っているため、これは遺憾ながら諦めざるを得ません。
やむを得ず、もくもくと樹林帯の中を下る政次郎尾根を下って戸沢に出ることにしました。
それでも、ときおり紅葉している木々が目に入り、退屈な下山を慰めてくれます。
kouyou1113-02.jpg

一時間程度の下りではありますが、変わり映えのしない道なのでさすがに飽きてきた頃、やっと戸沢に到着。
tozawa.jpg
やれやれ、という感じですね。

取り敢えず無事に下山できたことでもあり、皆で検討をたたえ合い、小休止の後、林道経由で大倉まで歩きます。
この林道歩きもやはり一時間くらいかかりますが、途中で、新茅の沢の様子などがみられますし、龍神の泉という、この辺りでは有名な湧水があったりするので、ポクポク歩くにはいいかもしれません。
ただ、車の往来があるので、ちょっと注意が必要ですが。
この林道、沢登りのために何度往復したことだろう、数え切れないなあ、などと呟きながら歩き、16時に「かぜのつりばし」に到着。
ちょうど向かいの山に陽が落ちる頃でした。
rakujitu.jpg

「かぜのつりばし」を渡りながら、残照に映える三ノ塔を振り返ります。
sannotouzansyo.jpg
「あそこまで登ったのですか!」と、友人たちは感嘆の声を上げていました。

さて、行きのバスも混んでいましたが、帰りのバスも当然のように満員。
この山域は本当に登山客が途切れないのだなと、感心しながら、渋沢駅に向かったのでした。

当初計画の断念や、天候の関係で山頂などからの広闊な眺望が得られなかったなど、残念な部分はありましたが、無事に下山できたということもあって、「是非とも塔ノ岳リベンジを!」と皆から嬉しい提案を頂き、慰められたところです。
渋沢駅で打ち上げをし、満ち足りた気分で帰宅したのでした。

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夏炉冬扇

こんばんは。
紅葉も夕日もいいですね。でも今年の紅葉は遅いようです。
空気がよかったことでしょう。
by 夏炉冬扇 (2011-11-15 19:07) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
今年の紅葉は全国的に遅いようで、雪の到来も十日以上遅れているようですね。
山の空気は格別です。時折吸いに行ってリフレッシュしています。
by 伊閣蝶 (2011-11-15 22:48) 

hirochiki

皆さんを先導されての山登り本当にお疲れ様でした。
途中で富士山を見ることができたとのことで、本当にラッキーでしたね!
皆さんもお喜びになったことでしょう。
それから、小枝をナイフで削ってお箸作りをされたとのこと、
思わず子どもの頃に鉛筆をナイフで削ったことを思い出しました。
それにしても、最近は〇ボーイや〇ガールがどんどん増えていますね。
by hirochiki (2011-11-16 05:51) 

Cecilia

楽しい登山だったようで何よりです。お疲れ様でした。
山ガール山ボーイというのはファッションだけのことかと思っていたのですが、本当に登山するのですね。(森ガールというのもありますね。)
古いタイプの”山屋”さんたちのこともよくはわかりませんが、ファッション感覚(軽いレジャー感覚?)の登山者にはうんざりさせられそうですね。

by Cecilia (2011-11-16 09:25) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
昔はよく、仕事の延長みたいな感じで大勢を連れ歩いたことがあり、これはさすがに勘弁してほしいと思いましたが、今回のように純粋に山を登ってみたいというオファーがあって少人数で一緒に登るのは、結構楽しいものです。
富士山は、結局、登り始めのその時間と下山してから日没後の残照中でシルエットを認めたのみでした。でも、登り始めの時に姿が見えたのは、みんなのモチベーションを上げるのには効果的だったようです。
箸の削り出しのこと。仰る通り、鉛筆削りみたいなものですね(^_^;
でも、ところどころに節があったり、基本的にはご飯を食べる付近の皮を剥がなければならないので、ちょっと手間です。
晩秋から冬場にかけては枝も枯れてきているので楽ですが。
ところで、若者たちがアウトドアに目を向け始めているのは良いことかなと思います。
ただ、特に山は命にかかわるエリアですから、基本的な知識は必須だと考えますが。

by 伊閣蝶 (2011-11-16 12:09) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
本来、単独行が基本だった私ですが、何故かこの頃は誰かを案内して登る機会が増えてきました。
以前なら「煩わしい」と感じたことも、こうしてみんなでワイワイ言いながら登る楽しさにとってかわられてきているようです。
私が20代の頃、山に来るのはやはり同年代からせいぜい40代くらいまでのバリバリの現役ばかりでした。
それが、私が30代半ばから40代くらいになると、若者を山で見かけることがさっぱりなくなり、若いころの登山経験が全くない中高年登山者の姿を多く見かけるようになり、そして、ここ数年は「山ボーイ、山ガール」です。
なぜ、今になって若者が山に来るのか良くわからない部分もあるのですが、ひょっとすると、あまりお金のかからないレジャーだから、という面があるからなのかもしれません。いわゆるバブルの頃の若者は、ゴルフやドライブやテニスのようにお金のかかるレジャーへの出資を厭いませんでしたから、ダサくて貧乏くさい山登りなんてやっていられるか、ということだったのかな、などと。
だから、やはりこれはファッションの一環なのでしょうね。
山歩き自体は健康のためにも良いし、開放感が味わえるのでお勧めですが、何といっても山という危険が隣り合わせのフィールドでのレジャーです。
そうした基本的な知識は持ってもらいたいな、というのが、私のような「古い山屋」の願いですね。
それにしても、「森ガール」は初めて聞きました。
by 伊閣蝶 (2011-11-16 12:10) 

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