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三木稔「レクイエム」フルオーケストラ版 [音楽]

今日は朝から爽やかな晴天となりました。
随分気温も低くなってきたなあ、と思ったら、もうすぐ10月になるのですね。
季節の移り変わりは誠に速いものです。
尤も、その速さを実感するようになったということは、自分自身がそれにふさわしい人生の秋に差し掛かっていることなのだろうと思うところではありますが。

さて、先日、作曲家の三木稔先生からご連絡を頂きました。
三木先生は、現在81歳におなりですが、創作意欲は大変に旺盛で、op150に当たる「混声合唱、部分4管のフル編成で6楽章・41分」の「新レクイエム」、そして、op151の「新箏(にいごと、21絃)オーバード」を、先日完成なさった由。
「新」レクイエムの完成については私も既に了知しておりましたが、さらに、新箏によるソロ作品を脱稿し、現在は自叙伝の執筆に当たっておられるとのことで、ご無理をなさいませんようにと気がかりではありつつも、やはり嬉しくなってしまいます。

1963年に作曲された「バリトン独唱・合唱・オーケストラのためのレクイエム」は、男声合唱団の東京リーダーターフェルによって初演されましたが、その後、混声化が行われるなどの進化を遂げ、2005年、スマトラ沖地震の犠牲者に捧げる形で作られた三木夫人・那名子さんのオリジナルの詞に載せて、ソプラノ・ソロ付き新3楽章「花の歌」の追加作曲がなされたのでした。
この版による初演は、2007年5月3日、作曲者である三木先生の指揮のもと文化会館小ホールで行われ、私も合唱団の一員として参加しております。
当時の記事は以下の通りです。

浅草混声合唱団第9回定期演奏会

当日の演奏会の様子を記した雑記は次の通りです。

http://yabuyama.private.coocan.jp/zakki200705.html#k20070503

この、ソプラノ・ソロ付き新3楽章「花の歌」は誠に美しい曲で、何よりも三木夫人・那名子さんがこの章のために書き下ろされた詞の悲しみに満ちた深い表現がすばらしかった。
私はこの詞を巡って、三木那名子先生からお話をお伺いしたことがありますが、その際に那名子先生は「単に葬送の花ということではなく、花になぞらえた輪廻転生を表現した」と仰いました。
「胸にひとひらの花を敷き、お前を抱きしめ、その吐息を蘇らせたい…、しかし、冷たい花に囲まれてお前は行ってしまう、風よ吹け、そしてその魂をこの手に戻せ…。この胸の中こそ、安息を与えられる場所である…。」
「花の歌」の歌詞のメインの要約ですが、この儚いながらも永遠を希求する魂の美しさ(それはもちろん作詞者の魂の美しさに帰趨するものです)、たとえようのないものでした。

この演奏会の後、私から三木先生にお送りしたメールを参考までに掲載します。
三木先生

夜分に恐れ入ります。
昨日は、感動的なメールを頂戴し、誠にありがとうございました。
本来であれば、定期演奏会のあと、私の方からお礼のご挨拶を申し上げなければならないところを、些事に取り紛れ、大変遅くなってしまい、誠に申し訳ありませんでした。
5月3日のレクイエムの演奏に参加させていただきましたこと、改めまして心より御礼申し上げます。
思えば3年前、「レクイエム抄」の演奏を私どもの合唱団で取り組んだときから、この曲の深さ・美しさの虜となり、夢にまで見た全曲演奏、それも改訂版の初演を、三木先生のバトンの下に歌えたという、正に望外の喜びでありました。

演奏会のあと、改めて、小林研一郎指揮東京交響楽団、リーダーターフェル版のCDを聴き返しましたが、オーケストラで歌えたらどれほどの感動があることか、と叶わぬ願いに胸を焦がしました。
いずれにいたしましても、今回の演奏を聴かれた600人余りの観客の心に、このレクイエムの大きな存在感が刻み込まれたことでしょう。
もっともっと演奏の機会が訪れるべき。真剣にそう感じております。
約一年間にわたって、三木先生には大変ご多忙の中、熱心なご指導を賜りました。
不躾とは存じますが、ご体調のことがやはり一番の気がかりです。
どうぞ、くれぐれもお大切になさって下さいますよう、心よりお願い申しあげる次第でございます。
乱文にて大変恐縮に存じますが、とりあえず御礼のみにて失礼させていただきます。

全く以て「乱文」ですね(^_^;
何とも興奮冷めやらぬ体で、改めて読み返すと冷汗三斗なみのメールですが、その折の感動はひしひしと甦ってきます。

さて、このたび完成をみた「新レクイエム」について。
是非とも歌いたい!という合唱団のメンバーは既に相当の数に上っていて、あとはオケの手当てですがこれは難題かもしれません。
しかし、こちらの方についても、やりたいというお話が来ていると仄聞しております。
練習日程や場所の確保などスケジュール調整が一番の問題となるような気もしています。

いずれにしても、私は、何があってもその演奏には参加したいと強く思っております。
僭越至極なこととは存じますが、これまでに三木先生や奥様から頂戴したご恩にいささかでも報いることができれば、これに勝る喜びはありません。

ところで、三木先生の「レクイエム」のCDですが、現在、東京リーダーターフェルと小林研一郎が組んだ演奏が入手可能です(オケは東京交響楽団)。

演奏者の熱気が間近に迫るライブ、正に熱演・好演です。
その打楽器を中心に据えた特徴的なオーケストレーションも聴きものです。
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hirochiki

早いもので、今年もあと三カ月なのですね。
自分自身が人生の秋にさしかかっている・・・なるほどと感じました。
三木先生から「新レクイエム」へのお声をかけられたとのこと、
お仕事がお忙しいとは思いますが、演奏に参加される大きな楽しみが増えましたね。
是非、オケの方も手当が整って素晴らしい演奏になりますように。
そして、三木先生もご高齢でいらっしゃいますからお身体を大切にしていただきたいですね。
それにしても、伊閣蝶さんが三木先生に送られたメールは、決して乱文などではなく名文だと思います。
心から尊敬いたします。
by hirochiki (2011-09-30 05:36) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
本当に早いものです。あと三カ月で2012年ですからね。
人生の秋…、人生を四季にたとえると、春に生まれ、夏にぐんぐんと成長して最盛期を迎え、秋から冬にかけて終わっていく、みたいな感じがあります。
青→赤→白→黒、という季節を表す色(青春、朱夏、白秋、玄冬)も、なるほどなあ、なんて思ったりして。
「新レクイエム」のこと。温かな励ましのコメント、ありがとうございます。
励ましのお言葉をいただき、何とかいい方向で演奏ができるように頑張ってみたいと改めて思いました。
三木先生も、さすがにかなりお体に無理が来ておられるようで、本当に大切になさっていただきたいと思っているのですが、少しでも元気になると、衰えぬ創作意欲に突き動かされるようで、これは芸術家の本能のようなものなのでしょうか。
回りはハラハラしてしまいます。

ところで、メールの文面について、過分なおほめのお言葉を頂き、恥ずかしい限りです。
でも、hirochikiさんからそのようなお言葉をいただけて、心より嬉しく存じました。
改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

by 伊閣蝶 (2011-09-30 12:21) 

ヒロノミンV

 こんばんは。伊閣蝶さんは、三木稔先生とそれほど深い関係だったとは、驚きです。
 というのも、三木先生は、岡山の古代の歴史をテーマにしたオペラ「ワカヒメ」を作曲者で、僕はこのワカヒメというオペラが大好きだからです。
 他の三木先生の楽曲も聴いてみないといけないなあと、思いました。
by ヒロノミンV (2011-09-30 22:40) 

伊閣蝶

ヒロノミンVさん、おはようございます。
ワカヒメ、すばらしいオペラです。
なかにし礼さんが渾身の脚本を書いて下さり、「愛の二重唱」や「蝶の歌」などのアリアも大変美しい曲です。
ヒロノミンVが、大好きと仰って頂き、三木先生もきっと大変お喜びになることと存じます。
日本史オペラ9連作は大変な労作で、恐らくオペラ史上に打ち立てられた金字塔ではないかと思っておりますが、残念ながら、日本国内ではなかなか演奏の機会が訪れません。
それでも「愛怨」などはDVDになっておりますし、今年の春にハイデルベルグで演奏されたりしています。
もしもよろしければ是非とも三木先生のほかの楽曲もお聴き頂ければ、大変嬉しく存じます。
ありがとうございました。
by 伊閣蝶 (2011-10-01 09:31) 

Cecilia

三木稔さんのオペラや声楽作品をもっと聴いてみたいです。
伊閣蝶さんが参加されるのならその演奏で是非聴いてみたいものです。
三木稔さん、ご高齢ですががんばっておられるのですね。
私がお世話になったことがあるあるオペラ歌手(男性)もやはりそれくらいのお年ですがブログやらツイッターやら使いこなしていらっしゃいますし、演奏活動もされています。そのような80代の方々を拝見するとこの年齢はまだ高齢とは言えないような気がしてきます。
by Cecilia (2011-10-01 18:30) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんばんは。
三木先生のレクイエム、演奏が実現しましたら、是非とも聴きにいらして下さい。
その折には必ずご連絡致しますので。
芸術家は、その創造に向けての意欲が衰えない限り、年齢に関係なく頑張ることの出来る人たちなのだな、とつくづく思います。
80歳を超えて現役で頑張っておられる方々を目の当たりにすると、私たちも泣き言をいっている場合ではないなと痛感しますね。
私などはまだまだ小僧なんだな、と。
by 伊閣蝶 (2011-10-01 23:50) 

節約王

こんばんは。コメント遅れまして申し訳ありません。伊閣蝶様は有名な三木先生と親しいのですね。すごい方と競演されるのですね。心よりお祝い申し上げます。
Wikipediaで詳しく紹介文章が公開されており、改めてその偉大さと日本音楽会に対する貢献の大きさを知る事が出来ました。
又、三木先生はアジアでの公演にも熱心で日本伝統音楽の国際化にも多大な貢献をなさった事改めて知らされました。
81歳とは思えないほどのエネルギーを感じさせていただいております。
いい記事をありがとうございました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9C%A8%E7%A8%94
by 節約王 (2011-10-04 21:17) 

伊閣蝶

節約王さん、こんにちは。
いつも温かなコメントをありがとうございます。
三木先生のことをwikipediaでお調べいただき、大変嬉しく存じました。
私が三木先生の作品を、それと意識して聴き始めたのは二十歳の頃ですから、もう三十年以上前になります。
一方的に憧れていたのに過ぎない立場でしたが、合唱を長く続けていた関係から、十年ちょっと前にご紹介いただく栄誉を頂戴し、それ以降、様々な面で大変お世話になりました。
人柄もすばらしく、私のような何のとりえもなくお金もない一般人に対しても、真摯に温かく接して下さいます(これは奥様も一緒ですが)。
ご高齢ながらも、たくさんのエネルギーを、私も頂戴いたしております。
節約王さんが、このように三木先生のことを高くご評価下さり、本当にうれしく存じます。
心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
by 伊閣蝶 (2011-10-05 12:25) 

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