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シンデレラの日 [日記]

寒い日が続きます。
それでも、自宅付近の公園では梅の花がほころび始めました。
もう少し暖かくなると、あの優しい梅の香りで私たちを楽しませてくれることでしょう。
ところで、今日は「シンデレラの日」
由来は、1956年、グレース・ケリーがモナコのレーニエ大公と婚約を発表した日に因むのだそうです。

プリンセス・モナコグレース・ケリーといえば、私たちのような映画ファンにとっては格別の存在で、その出自を見ても、父親は貧困層から一代で巨万の財を築きオリンピックのボート競技における金メダリストという正に絵に描いたような立志伝中の人であり、母親は大学講師という、いわばハイソサエティの家庭に育っていて、とても「シンデレラ」を標榜するような人物ではないと思われるのですが、やはりモナコ公国の大公と結婚という事績の前では、あくまでも王室と一般人との「有り得べからざる椿事」、という整理になってしまうのでしょうか。

このバラの花の名前は「プリンセス・モナコ」。
日比谷公園に咲いている、ということを前にもこのブログで書きましたが、これはもちろん、グレース・ケリーをイメージして作られ、不慮の事故で亡くなった彼女に献呈されたものです。

グレース・ケリー出演の映画は、「真昼の決闘」やアカデミー主演女優賞を受賞した「喝采」などがすぐに浮かんできますが、私はやはり、ヒッチコックの諸作品、「ダイヤルMを廻せ」「裏窓」「泥棒成金」などの印象が強烈に残っています。
特に「裏窓」は、主人公の部屋の中という特定された空間でのドラマ展開という、極めて困難な条件を逆手に取った緊迫感あふれる表現手法に瞠目しました。

後に、この手法を取り入れてさらに進化させ、静と動のコントラストを鮮やかに画面で表現した作品に、黒澤明の「天国と地獄」がありますね。

さて、冒頭に戻って、シンデレラのことですが、この物語、どう思われますか?
  1. 継母とその連れ子の姉たちにいじめられていた娘が、自分だけおいてけぼりにされた城の舞踏会に魔法使いたちの力を借りてドレスや馬車やガラスの靴を揃えてもらい出かける。
  2. そこで王子様に見染められて楽しい時間をすごすが12時までしか魔法は効かないと告げられていたので、12時の鐘の音を聴いたシンデレラは焦ってガラスの靴を置き忘れてしまう。
  3. 王子がそのガラスの靴を手掛かりに持ち主を探す。 シンデレラの姉たちもその靴を履いてみるが、この靴に合うのはシンデレラしかいなかった。
  4. 舞踏会で見染めた娘がシンデレラであることを知った王子は、シンデレラを妃に迎える。
  5. めでたしめでたし。

これは、ペロー版をなぞった要約ですが、グリム童話では、靴に合わそうとした姉たちの踵やつま先をナイフで切り落とす、妃となったシンデレラにこびへつらう姉たちの目を白い鳩が突いて潰す、などという容赦のない復讐劇まで付け加えられていました。

それはともかく、女性の究極の幸せは、この王子のような絶対的優位者・権力者の庇護のもとにこそ完結する、といわんばかりの思想に、どうも私はついていけません。
それは、私自身が社会の底辺に位置する庶民であり、美女から庇護を求められる対象などにはなり得ない、という現実的な要因からくるジェラシーみたいなものももちろんあるのですが、人間としての自立を放棄した上、自分の人生を左右するものは畢竟その相手方の地位や権力・財力などにあるとして、相手に高い理想を追い求める体の、その依存的体質に我慢がならないのです。
もちろん、「いつか白馬に跨った王子様が私の前に現れて、この苦しみから私を救ってくれる」という夢そのものを否定するつもりはありませんが、それは結局のところ現実逃避以外の何物でもないことに気付いてほしいものと思わざるを得ません。

グレース・ケリーは恋多き女性でした。
共演者のゲーリー・クーパー、クラーク・ゲーブル、ビング・クロスビー、ウィリアム・ホールデンなどとも浮名を流したことでも有名です。
しかし、父親は異性との交際には相当うるさかったようで、こうした恋が実ることはありませんでした。
そのような謹厳な父親が、レーニエ大公との婚約・結婚については許したのだとすれば、自らが貧困層の出身であった父親の考える究極の幸せとは、畢竟こうした王族との血縁を持つことで達成されるのだという思想にもつながるわけで、その意味では誠に無残な話ではないかと思います。
いわゆるシンデレラ・コンプレックスは、もしかするとこの父親の方により多く存在していたのかもしれませんね。

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節約王

こんにちは。ブログ、夢中になって読みました。とても勉強になりました。シンデレラの日があるのですね。覚えておく事にします。
ヒッチコック映画、私も好きです。私もグレース、ケリーの作品はなぜかヒッチコック作品のほうが好きです。裏窓は今でも新鮮な衝撃を受けます。
by 節約王 (2011-01-05 14:48) 

hirochiki

プリンセス・モナコは、とても美しい薔薇ですね☆
何と言っても、色がとてもお上品です。
さて、シンデレラストーリーですが、「いつか白馬に跨った王子様・・・」は、結婚に憧れている時期の気持ちではないかと思います。
長い結婚生活の間には、様々な予期せぬことが起こります。
嬉しいこともあれば、悲しい出来事も・・・
お金では解決できない問題も、多々あるものです。
苦しみや悲しみを共に乗り越えることで、夫婦や家族の絆が深まってゆくものと私は感じております。

by hirochiki (2011-01-05 16:27) 

ただの蚤助

ヒッチおじさんのハナシになったので、またも通りすがりの蚤助ですが…
ヒッチコックの作品は観る度に新しい発見がありますね。
「裏窓」の原作はコーネル・ウールリッチ(またの名をウィリアム・アイリッシュ)の短編小説で、裏窓からたまたま犯行現場を目撃してしまったばかりに、犯人に狙われる、というプロットだけを拝借して、アパートの人物だとかの設定はオリジナルのものです。
グレース・ケリーの役名はリサですが、劇中で向かいのアパートに住む作曲家宅のパーティーでナット・キング・コールのヒット曲「モナリサ」が合唱されますし、この作曲家の作ったという新曲のタイトルが「リサ」というので、思わずニヤリとしてしまいます。
また、おなじみヒッチおじさんが本作にも登場しますが、はたしてどのシーンだったでしょうか?
蚤助は最近発見して一人喜んでおります。
答えは、後日またコメントさせていただきます…(笑)
それにしてもケリー嬢もいいですが、ジミーさんものぞき専門といいながらスケベなデバカメにならずステキでしたね、これぞ役者の品格か…

「犯罪にあって浮気にない時効」(蚤助)
by ただの蚤助 (2011-01-05 20:09) 

ただの蚤助

言い忘れました。
本作のグレース・ケリーは実に美しく撮られていますね。
ヒッチコックから出演依頼があったとき、彼女は「波止場」への出演も依頼されていたそうだが、ご承知の通り、「波止場」はエヴァ・マリー・セイントが出演、オスカーを受賞しました。
後に、「北北西に進路を取れ」で、やはりケリーの出演が不可能となって、セイントがまた起用されたのは不思議な因縁です…
やはり、ヒッチコックはブロンドがお好きだったんですな…

by ただの蚤助 (2011-01-05 20:27) 

Cecilia

「シンデレラ」の話は嫌いではありません。ペローよりはグリムのほうがストーリーに意味深さを感じます。
この話に似た話が古今東西にたくさんありますのでこの話だけでどうこう考えることは難しいような気もします。
白馬の王子様に出会ってめでたしめでたしではなく、その後に試練が多いのが現実であるとも思います。

by Cecilia (2011-01-06 01:09) 

伊閣蝶

節約王さん、おはようございます。
節約王さんもヒッチコックがお好きでしたか。
彼の映画は、何度も観てもその度に違った発見があり、大変スリリングで、私も大好きです。
裏窓は特にお気に入りの一本でした。
by 伊閣蝶 (2011-01-06 08:52) 

伊閣蝶

hirochikiさん、おはようございます。
プリンセス・モナコは、モナコの国旗(上が赤で下が白の二色)をイメージして作られたものだそうです。
配色が見事ですね。
「いつか白馬に跨がった王子様」が結婚に憧れている時の気持であれば、それは良く理解できますね。
仰る通り、結婚生活は「現実」ですから、様々な苦労もあります。
縁あって結ばれた二人なのですから、その強い絆で乗り越えていくことが本当の意味での結婚生活なのでしょう。
最後はやはり信頼関係であり、相互に助け合うことなのだろうと思います。

by 伊閣蝶 (2011-01-06 08:53) 

伊閣蝶

蚤助さん、おはようございます。
さすがにお詳しい。
ナット・キング・コールのモナリサとケリー嬢演ずるリサとの関連への言及など、さすが!です。
ケリー譲は、本当にヒッチコックのお気に入りだったようですね。
彼女がレーニエ大公妃となってさぞかし落胆なさったことでしょう。
裏窓ではジェームス・スチュアートも仰る通り素敵でした。確かに「のぞき専門」の出歯亀には見えませんね。
裏窓、先日、NHKのBS2で放映していました。
久しぶりに見返したのですが、ヒッチコックおじさんの姿を見はぐってしまいました。残念!
ところで、ご指摘の通り、ケリー嬢やセイントを始め、キム・ノヴァク、ジャネット・リーなど、そういえばみんなブロンドの髪がとりわけ美しく、ヒッチコックさんのお気に入りがわかるような気がしました。

by 伊閣蝶 (2011-01-06 08:53) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、おはようございます。
私もグリムの方がより深い意味を感じます。
実際こちらの方が、エジプトに古くから伝わる伝承に忠実のようですね。
白馬の王子様に出会ってめでたしめでたしにならないのが現実なのですが、中にはそれを本気で期待する人もいるらしく、その点はちょっと理解できないところではあります。

by 伊閣蝶 (2011-01-06 08:54) 

伊閣蝶

蚤助さん、こんばんは。
裏窓でのヒッチコックおじさん、見つけましたよ!
なるほどという「役柄」でしたね。
私も思わずニンマリ、です。
by 伊閣蝶 (2011-01-07 00:37) 

aka

すごい面白い記事です~♪
シンデレラがけっこう残酷な話だというのは中学生くらいの時に知りました。
当時、本当は怖いグリム童話というのが流行っていたので☆

でも、思うのですが、結婚してめでたしめでたしではありませんよね…
そこからが戦いなのではないでしょうかね??(笑)
by aka (2011-01-08 14:03) 

伊閣蝶

akaさん、こんばんは。
面白いとご評価頂き大感激です!

結婚してめでたしめでたしではなく、そこからが戦い、うーん、これは確かにある意味真実かも(^^;
でも、二人で共同戦線を張る、というところが大きいのかもしれませんね。
by 伊閣蝶 (2011-01-09 17:41) 

gkrsnama

現実問題として、夫婦の社会階層がかけ離れていすぎると、いろいろ問題もあるでしょう。また、両方の所得が低すぎる場合も問題が多いでしょう。これらの問題をクリアすれば、後は相手次第でしょうね。王族と庶民の結婚が必ず不幸だとは言えませんよ。ケースバイケースです。
 このご夫婦の場合は、相当にうまくいったようで、まことにめでたいことです。
by gkrsnama (2012-08-13 20:29) 

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