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ブルックナー交響曲第4番、第3稿コースヴェット版 [音楽]

週末になって、またまた猛暑がぶり返してきました。
どうやらもうひとしきり暑さがやってくるような気配です。
下手に出かけると暑さにやられてしまったりしますので、こういう日は大人しく家でCDを聴いているのが吉、でしょうか。
まあ、そうもいかないとは思いますが。

前から気にかかっていた、ブルックナーの交響曲第4番、第3稿コースヴェット版の演奏CDを先日やっと購入しました。
演奏は、この版における世界初演、内藤彰指揮、東京ニューシティ管弦楽団によるものです。

第3稿、いわゆる1888年稿は、フェルディナンド・レーヴェらによる改訂版であり、この第3稿を用いたハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルによる演奏は大成功だったものの、国際ブルックナー協会と音楽学書出版社によって原典版の公刊がなされてからというもの、師たるブルックナーの築き上げた世界を台無しにした犯罪的行為として断罪されてきました。
これは、こうした改訂版が、ブルックナーの意思をないがしろにして、改竄やカットを行ったという認識に基づくものなのでしょうが、その行為自体には疑問が残るものの、何とか世の中に受け入れられるように整えようとした「愛弟子」たちの「愛情」によるものであることを疑うのはあまりにもかわいそうなことのように思われます。

それはともかくとして、ブルックナーは自らの作品に対し、夥しい数の改訂を自らの手でも行っております。
弟子による改訂意見に対しても、ブルックナー自身が受け入れられるものに関しては積極的に受け入れたということであり、今日「改訂版」として悪名を恣にしている版も、その全てが「弟子による勝手な改竄」とまで言い得るのかどうか判断に苦しむ例もかなりありそうです。

この第4番の第3稿コースヴェット版も、かなりの部分にブルックナー自身が手を入れた形跡が伺えるとのことで、それ故に、ブルックナーがしばしば行ったという承認の日付とサインがないのではないか、ということもあるいはいえるのかもしれません。
ただ、少なくともこの版は、恐らくブルックナー自身が目を通した第4番の最終稿であるという確率がかなり高いのは間違いのないところと思われます。

いずれにしても、この演奏を聴くと、ブルックナーが初稿から改訂を行っていく段階で、どのような思考の変化を経つつ努力を重ねてきたのかという軌跡もわかるような気がします。
内藤彰氏と東京ニューシティ管弦楽団は、これまで、第9番(第4楽章補筆完成、キャラガン版)や第8番(アダージョ2といわれる1888年稿を使用)で、新たなる版での演奏に取り組んできましたが、この試みは資料的な価値という点でも注目すべきものでしょう。
随所で聴かれる新たな響きは、それだけでも非常に興味深いものですが、特に第1楽章とフィナーレには驚かされました。
ただ、演奏としてもう一歩という感は否めません。

ブルックナーの第4番は、それでなくても多くの優秀な演奏や録音が目白押しなので、企画の貴重さのみではちょっとインパクトに欠けてしまいそうです。
こんなふうに紹介しながらも、私としては、クーベリック指揮バイエルン放送響の演奏が一番のお気に入りだったりするので(^^;


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