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知識をひけらかす危うさ [音楽]

neko01.jpg朝のうちは曇り空でしたが、昼前には陽射が戻ってきました。

それでも、気温はそれほど高くもないようで、日比谷公園の猫殿も心なしか余裕の表情です。

先日、ピアノが趣味の後輩と久しぶりに話をしたのですが、その後輩の勤める会社に、クラシック愛好者による同好会のようなものがあるのだそうです。
同好会といっても、何か特別なイベントを開くとか演奏会を企画するというようなアクティブなものではなく、具体的な活動内容を聞く限り、どうも、時折みんなで集まって宴会を開き、そこでクラシック音楽に関する懇談をする、という程度の集まりだとか。

そんな内容を聞いただけで私などはもううんざりしてしまうのですが、後輩も同じ思いらしく、苦笑交じりに話してくれたわけです。

それにしても、なんでそんな会に参加しているんだ、と訊ねたところ、要するに以前直属で仕えたことのある上司(トランペット吹きなんだそうです)がその会の運営に積極的で、ピアノなんかを弾いていて時折ステージで発表したりする彼などは格好の「餌食」、有無を言わさず半ば「職務命令」的にメンバーにさせられたとのことでした。

懇親会(宴会)では、会員それぞれが、気に入った演奏会やCDなどを中心に近況などを報告しあう形で始まるのですが、件のトランペット吹きの上司が、それらの近況報告にいちいち介入してきて己の知識をひけらかしたうえ持論を展開するという、とてつもない状況になだれ込んでいくのだそうです。

想像するだけでめまいを感じそうな会合ですが、そんなものがなにゆえに継続的に開催されるのかといえば、トランペット吹きよりも若年のメンバーは先に述べたピアノ弾きの後輩のように有無を言わさず参加させられ、年上のメンバーはというと、そのトランペット吹きの法螺話や行状を笑い話として楽しんでいるらしく、つまり不幸なのは拒否権を持たない若年メンバーのみということになりますね。
こういう力学が働いている以上、この会合が潰えるわけもなく、若年メンバーはひたすらトランペット吹きの退陣を願うしかない、ということになりましょうか。
尤も、その若年メンバーの中にも、トランペット吹きと同じような傾向をもつ者がいるらしく、当分この会は続きそうだと、ピアノ弾きの後輩は表情を暗くしておりましたが。

というわけで、こうした話は何もクラシック愛好者にとどまらず、さまざまな同好会において散見されるものではないかと思いますが、自分の持つ蘊蓄とか知識の全てを言わずにはおれない人々は少なからず存在します。
正直に申し上げて、こうした人々は(程度にもよりますが)結構迷惑な存在で、特にこちらもよく知っているようなことについて「お前は知らんだろう」的な決めつけで延々と話されるとまったく途方に暮れてしまいますね。

あれは私が労働組合の活動を行っていた頃のことなので、もう四半世紀以上前のことですが、全国レベルの学習会があってそれに参加した時、夜の懇親会でたまたまワグナーの話が出て、当時はレコードでしたから、リング(ニーベルングの指輪)はレコードの枚数が多くて保管場所に困る(カール・ベームのものが18枚、ショルティのものが14枚でした)みたいなことをポロっと口にしたら、ある分会の若い委員(私よりも4歳下)が、延々とワグナー及びリングに関する話をし始めたのです。
労働運動をやっているからオルグや演説はお手の物で、ほとんど独演会(^_^;
一言でも口を挟もうものなら、それをまた契機に話はどんどん広がっていきます。
そのうちに話は天皇制にまで及んで(神話を題材しているからそうした展開になったのでしょうが)、ヒートアップ。
私は、彼の長広舌の嵐の中で、つれづれなるままに、宇宙にはこの地球のような生命体を有する星はどのくらい存在するのか、そのうちで一番地球に近いのはどこなのだろうか、オパーリンのいうコアセルベートから細胞へ進化したという生命の起源説は正しいのだろうか、みたいなことを考えながら、ボーっと受け流していたのでした(^_^;

だから、先に述べた後輩の苦悩はなんとなくわかるような気がするのです。

誤解を恐れずに敢えて申し上げますが、こと音楽の好みにおいて、それが100%一致する相手などは存在せず、50%程度でも合う人がいるのであればそれこそ奇跡だと思っております。
であるからこそ、他の人の意見は大変貴重なもので、それを相互に交換できるのは誠に有意義なことだと考えますが、良し悪しはともかく好き嫌いだけはどうしようもありません。人間、百人いれば百の見解・偏見が存在するのですから。

そんなわけで、そうした自分自身の偏見に基づく見解を思う存分書くことができる、こうしたブログのような媒体は誠に得難いシステムであり、某分会委員のワグネリアン氏には正にうってつけの媒体なのだろうと考えます。
あ、いやこれはちょっと違いますね、某ワグネリアン氏の長広舌を聞かされる人にとってうってつけ、ということでした。厭なら読まなければいいだけのことですから。

いずれにしても、こうしたことは畢竟自分自身も自覚しなければならない留意点でありますから、下らない知識のひけらかしのみで終わるような無様なことは改めて慎むようにしようと、決意を新たにしたところです。
虚心坦懐に振り返ってみれば、私自身、そうした傾向がかなり強いのではないかと深く反省させられましたので。

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かずっちゃ

あぁ、こういう人っていますよね。自論が一番、少しでも否定的な事を言おうものなら容赦なく論破するタイプの人。
そんな人が上司だったら悲劇ですね。部下も信頼してくれなくなるんじゃないでしょうか。
ワタシもインターネットでプラモデルのサークルをやってますけど(一応、オーナー)、メンバーの皆さんの方が断然技量もあって知識も豊富なので教えてもらう毎日です(苦笑)。とにかくみんなが無理なく楽しくやれるのが一番かなと。
しかし、いつ何時ワタシもこう言うタイプになるかもしれませんので自戒しておきます。
伊閣蝶さんは決してこう言うタイプではないと思いますよ!
by かずっちゃ (2010-08-20 15:38) 

伊閣蝶

かずっちゃさん、温かなコメントをありがとうございます。
プラモデルサークルのオーナーをなさっておられるとのことで、これはかなり運営などに気を使われておられるのではないでしょうか。
それでも、みなさんで無理なく楽しくと、オーナーであるかずっちゃさんがそのような基本方針をお持ちであれば、メンバーの方々も安心してご参加できようというものです。
かずっちゃさんのお人柄を彷彿させるようで、ほのぼのと心が温かくなりました(*^_^*)
さらに、私にまでありがたいフォローのお言葉をいただき、恐縮です。
おかげで、ますます自戒しなければ、と心を新たにしました(*^o^*)
by 伊閣蝶 (2010-08-20 18:11) 

Cecilia

会社にそういうサークルがあるというのはうらやましい気もしますが、会社の序列や価値観が入り込んでくるのはいやですね。
ワグナーの長広舌を聞かされた伊閣蝶さんのお気持ちもわかるような気がします。
私ならまったくついていけない話題ですね。

ブログを何年か書いていて、結局は自分の乏しい知識の中からしか書くことができないということを実感しています。とりようによっては自慢やひけらかしにとられかねない記事も書いてきました。
またほかの方のブログで自慢やひけらかしのように受け取ることのできる記事もいくつも見てきました。
最近は中途半端な知識で書くのは本当に怖いと感じています。
いろいろな方にコメント欄で補っていただいて感謝しています。
by Cecilia (2010-08-22 07:57) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、おはようございます。
仰る通り、身近にそうした趣味のことを語り合える仲間がいること自体は良いことだと思いますが、それはあくまでも対等な立場で、ということが大前提でしょうね。
気のおけない仲間と、いろいろな情報を交換することは大変楽しく有意義なことなのですから。
つまり、最初に人間関係ありき、なのではないかと思います。当たり前のことかもしれませんが。

知識のひけらかしについては、もちろん私自身が大いに自戒の念を込めて、というつもりでした。
今でもそうではないかと自分自身で危ぶむことが多いのですが、誠に恥ずかしい象徴的な事例として、こんなことがありました。
http://homepage3.nifty.com/yabuyama/zakki200401.html#k20040118

サイトやブログに記事を書くことによって自分自身の知識を確認する、ということも許されることだと勝手に考えていますし、場合によっては思い込みかもしれないことを書いてしまう局面もありましょう。
そうした記事をアップすることによって(場合によってはコメント欄などでいろいろな指摘を受けることも含め)、己の持つ情報や知識を補完出来るのであれば意味のあることですし、それを飾り立てることなく取り上げられれば、それはまた情報の共有に資することになるのかもしれませんね。

Ceciliaさんのブログの記事には、情報の面でもご感想の点でもいつも本当に目をひらかせられます。
また、各種のコメントの記事をとても大切になさっておられ、注意深く内容を精査されているなとも感じ、私も見習わなくては、と痛感する次第です。

いずれにしても、音楽を感ずるのは心なのですから、その感じた心を素直に出し合うことができれば、きっと素敵な関係が築けるのではないか、とそんなふうにも思います。
by 伊閣蝶 (2010-08-22 10:03) 

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