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野菜の花の美しさ [雑感(過去に書いたもの)]

zyagaimo01.jpg本日も猛暑日です。
連日の暑さで、さすがにちょっと疲れ気味、といった感じになってしまいました。
寝るときにもとうとうクーラーをかけてしまうようになっています。

昼間に外出すると、なんだか脳味噌が沸騰しそうな気がしてきますね。

そんな気候だからなのでしょうが、なんとなく、公園の花たちも元気がなくなっているような気がします。

ところで、写真はジャガイモの花です。
先日、会津に帰省した折、畑で咲いていた可憐な姿に心を奪われ、携帯電話のカメラで撮ったのでした。

ジャガイモの花に限らず、野菜や果物の花は本当の意味での美しさを持っているような気がしてなりません。
ナス、大根、キュウリ、かぼちゃだとか、桃、リンゴ、イチゴなどなど。

私はこうした花たちがとりわけ大好きで、この花が実を結んで、私たちに栄養を与えてくれることにいつも感謝してしまいます。

鑑賞の花とは全く違った美しさ。

それは野にひっそりと咲く花にも共通するものがありましょうが、これ見よがしな自己顕示が見られないことも一つの要素なのかもしれません。

尤も、花たちにしてみれば、観賞用に作られたものも野菜の花も野の花も、彼らにとっては全く区別などないはずで、人間の欲求によって勝手な選別をされるのは迷惑この上ないことでしょうけれども。

全く人間の性というものは度し難いほど身勝手なものなのでしょうね。

さて、このジャガイモの花を見ていて、以前書いた文章のことを思い出したので、ここに転載します。

これは5年くらい前に書いたものですから、宮本輝さんの「流転の海」も、もう第五部の「花の回廊」が出版されていますし、宮本さんも、もう63歳におなりです。
その点はお含みおきいただきたく存じます。

************ここから************

宮本輝の長編大河小説「流転の海」、氏の作品の中でもとりわけ深い世界を描いて間断とするところがない。第1部の「流転の海」から第4部の「天の夜曲」まで20年の歳月がかかっていて、しかも未完なのである。当初は6部までの予定が7部にまでなりそうだというから、完結までにはまだあと20年近くかかる可能性があるわけだ。
宮本輝氏は、現在58歳。なんとしても完結していただきたいと切に願っているところである。

さて、その第4部「天の夜曲」の中に次のような文章がある。
最近は目にすることが少なくなったが、自分も若いころ農村で暮らして、茄子の花、キュウリの花、山椒の花等々と四季それぞれに咲く野菜の花を目にしたが、、収穫のことばかりが念頭にあって、その真の美しさに気づかなかった。
(中略)
バラやチューリップなどの観賞用の花の、派手で華やかな美しさではなく、その多くはいつのまにか咲いていつのまにかしぼんでいく。野菜を得るためだけの楚々とした小さな花に過ぎないが、これ見よがしでもなく、美しすぎるゆえの邪なところもなく、それでいてどこかゆるぎない品といったものを持っている。
居酒屋の主人は、その野菜の花の美しさは、人々に季節の味や栄養をもたらし、人々の役に立つ働きとか使命とかを担っているが故に天から与えられた徳のような気がするといった。
そうとでも解釈しなければ、あの野菜の花の可憐な品の由来は説明できない、と。
すると客は強く同意し、人々を楽しませ、人々の役に立ち、人々を癒すために生まれたからこその品格が小さな花にも厳と存在するならば、人間もまた同じではあるまいかと言った。そしてそれは見事なまでに人相にあらわれるのではないだろうか、と。
美醜とは関係なく、なんとも言えず品のいい顔立ちをした人がいる。そういう人の、とりわけ目はきれいだ。視力が弱くて眼鏡をかけているとか、目が大きいとか小さいとか、そうした表面的なものの底に、深い目がある。

このあと、人を笑わせることだけを心の底から望んで精進した落語家の最期のときの情景が描写され、臨終のときにその落語家が心の底から笑い、その笑い声にあわせて、その近くの小学校の校庭に咲いていた桜の花が声を合わせて笑ったという不思議な体験が語られる。
芸術を生業としつつ、しかし金儲けや名誉欲を満足するなどという下卑た目的には与しない、そんな人間としての美しさが、恐らくそうした人の残した作品や表現に如実にあらわれてくるのだろう。
私はもとより姿かたちの美しさなどとは程遠いところにいるが、せめて目だけは美しいものを見、美しいものを感じ、そして濁りのないところにいたい…。そんなふうに思ったところである。

************ここまで************

「流転の海」は第五部の「花の回廊」に至って、さらに大きな広がりを見せてくれています。
いったいどこまで広がり深まっていくのか、これほど次回作が待ち望まれる大河小説も珍しい存在でしょう。

私も今か今かと待ち望んでいる者の一人です(*^_^*)

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Cecilia

暑いのはいやなのですが、厳しい寒さより好きです。
夏は元気をもらえる気がして・・・。

じゃがいもの花と言えば、ルイ16世がマリー・アントワネットに花を身につけさせて奨励したというエピソードがあります。
マリー・アントワネットがどんな風に身に着けていたのか興味深いです。

花が咲くことによって結実するものもすばらしいと思いますが、トウが立って咲いた花というのも好きです。

by Cecilia (2010-07-24 10:22) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんばんは。nice!とコメント、ありがとうございます。
今日は、東京都合唱祭に出場してきました。
早速、本日の私どもの演奏の録音をアップしましたので、よろしければお聴き下さい。
曲目はロッシーニのスターバト・マーテルの第9曲です。

ところで、ルイ16世がマリー・アントワネットに花を身につけさせて奨励したというエピソード、私は初めて伺いました。
どんなふうに付けさせたのか、私も大変興味深く思います。

トウが立った花、フキなどはなじみですが、キャベツやレタスの花もなかなか美しく、私も大好きです。

by 伊閣蝶 (2010-07-25 00:03) 

かずっちゃ

御見舞いのコメントをありがとうございました。
連日暑い日が続いていますが、伊閣蝶さんもお身体に気をつけて下さいね。
by かずっちゃ (2010-07-25 13:17) 

伊閣蝶

かずっちゃさん、こんにちは。
お加減はいかがですか?
まだまだ猛暑が続くそうですから、どうぞくれぐれもご無理をなさいませんように。
でも、ブログは楽しみに拝見させていただきます(*^_^*)
by 伊閣蝶 (2010-07-25 15:48) 

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