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コンドラシン&コンセルトヘボウによるシェエラザード [音楽]

久しぶりの雨となりました。
九州南部では梅雨入りをしたそうですが、関東地方もそろそろかな、という感じがします。

リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」は、クラシック音楽の中でも一二を争うポピュラーな曲で、それだけに聴く機会の非常に多い曲の一つだと思います。
そんな曲ですから数多くの名演奏や名盤が存在しますが、キリル・コンドラシンがコンセルトヘボウと組んだ1979年6月のスタジオ録音は恐らく中でも極めつけの名演といえましょう。

当時、コンセルトヘボウのコンサートマスターであったヘルマン・クレバースのヴァイオリン独奏の繊細かつ表情豊かな美しい音色は特に印象的で、それを力強いオケがしっかりと支えていました。

このCDには、ボロディンの交響曲第2番(1980年6月ライブ録音)もカップリングされており、これも「シェエラザード」に劣らぬ名演です。
コンセルトヘボウというオランダのオケが、こんなに雄渾なロシア的音響を奏でるのかと、最初に聴いた時には本当にびっくりしました。

キリル・コンドラシンは、ロシアが生んだ類稀なる名指揮者のひとりです。
モスクワ・フィルとのコンビでは、ショスタコーヴィチの交響曲第4番などの初演のほか世界初の交響曲全集録音を成し遂げるなど、極めて大きな足跡を残しました。
ソヴィエト連邦時代、アシュケナージやロストロポーヴィチを始めドミトリ・ショスタコーヴィチの御曹司で指揮者のマクシム・ショスタコーヴィチなど著名な音楽家が次々と亡命していく中で、彼はソヴィエトにとどまり音楽活動を続けます。
これは恐らく、彼の生まれ故郷がモスクワであり、その地でのモスクワ・フィルとの関係を大切にしたことも大きな要因であったのでしょう。
それだけに1978年のオランダへの亡命は、世界の音楽界において驚きの目を以て受け止められました。
ロストロポーヴィチ氏は当時、コンドラシンの亡命の報に接して「私の知る限り、彼はソヴィエとの音楽家の中でも最もソヴィエト的な人物であったのに」と、ニューズウィークの記者に語ったそうです。
「完全な芸術の自由を得るため(亡命に当たってのコンドラシンの言葉)」ソヴィエトからの亡命という手段に踏み切ったコンドラシンを、当時コンセルトヘボウの首席指揮者であったベルナルト・ハイティンクが温かく迎え、その活動の場を提供したことにより、このCDなどに代表される素晴らしい演奏が世に出ることになったわけです。
コンドラシンの才能はもとより、ハイティンクの人柄の大きさにも感服してしまいますね。

コンドラシンは、1967年に初来日し、マーラーの交響曲第9番を指揮しました。これがこの曲の日本における初演であったそうです。
そして、オランダへの亡命後、1980年に再来日し、このときにNHK交響楽団を指揮して、プロコフィエフの組曲「キ-ジェ中尉」と交響曲第5番を演奏。
大変な好評を博しました。
私は残念ながらこの実演を聴くことができず、ライブ録音CDも入手できませんでした。無念極まりなく思っています。
というのも、その来日公演から僅か一年余りのちの1981年3月、テンシュテットの代役として北ドイツ放送響で急遽マーラーの「巨人」を指揮し、その後、体調を崩して急逝してしまったからです。
享年67歳。
正にこれから円熟期を迎え、彼のいうところの「完全な芸術の自由」を得た演奏を実現してくれるであろうと期待する多くのファンに空手形を切って、遠い世界に旅立ってしまいました。

このCDを聴いていると、やっと手に入れた芸術的な自由を背景に、新たなる地平を切り開いていこうとするコンドラシンの想いがしみじみと胸を打ち、思わず目頭が熱くなってきます。

「指揮芸術とは、要するに100人のオーケストラ奏者が指揮者の理念とその構想を理解し、これに合致する点にある」

コンドラシンの言葉ですが、誠に以て味わい深いものがあります。
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のら人

おはようございます。
今年の梅雨はどうなんでしょうか。
山行だけ考えるとカラ梅雨を希望したいですが・・・(苦笑)
by のら人 (2015-06-04 08:03) 

夏炉冬扇

昨日はユーチューブでラジオ番組見ました。
映像つきで見られるんですね。
by 夏炉冬扇 (2015-06-04 08:40) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
今年の梅雨は、6月は空梅雨っぽいようですが、7月にはまとまった雨が降るとの長期予報がありました。
でも、また変わってくるみたいですね。
少なくともゲリラ豪雨みたいなのはご勘弁願いたいところです。
by 伊閣蝶 (2015-06-04 23:13) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
youtubeにもアップされていますか。
音声でも、それに合致した画像を流している例も結構ありますが。
by 伊閣蝶 (2015-06-04 23:14) 

tochimochi

このところ梅雨に入るとゲリラ豪雨もどきが多かったですが、今年はどうでしょうね。
空梅雨を期待したいところです。
by tochimochi (2015-06-05 08:51) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
本当にゲリラ豪雨が心配です。
今日などは、北海道で降雪があったりと、かなりの異常気象で、なんとなく先が思いやられますね。

by 伊閣蝶 (2015-06-05 23:31) 

Hirosuke

合唱もオペラも指揮芸術ですよね。
こちらは半分にも満たない40数人ですが、本番まで3ヶ月を切りました。
指揮者の理念とその構想への合致へと向かうべく、稽古場は良い切迫感に溢れています。
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稲城市民オペラのブログ
http://ameblo.jp/inaghiopera/

チケットお問い合わせ:稲城市民オペラ事務局
inaghiopera@gmail.com
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演目 ヴェルディ作曲 オペラ『椿姫』
公演日 2015年9月6日(日)午後1時開演
会場 稲城市中央文化センターホール
       (京王相模原線・稲城駅より徒歩6分)
主催 稲城市民オペラ

指揮 仲田淳也 ←元コレペティの東フィル指揮者
演出 馬場紀雄 ←7月11・12日にオペラ「復活」@新国立劇場
合唱指揮 佐藤勝磨
指導   馬場紀雄 佐藤勝磨 下倉結衣 生田有里 水野洋助 川上真澄
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稲城市民オペラ【椿姫】練習(1) 初の顔合わせ [イタリア歌曲]
http://hironaga-yuusuke.blog.so-net.ne.jp/2015-02-15

稲城市民オペラ【椿姫】練習(2) パートリーダーS君が! [イタリア歌曲]
http://hironaga-yuusuke.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
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http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2015-06-07
チケット予約できます! 
http://hironaga-yuusuke.blog.so-net.ne.jp/2015-06-07
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宣伝お邪魔しました。

by Hirosuke (2015-06-07 23:16) 

伊閣蝶

Hirosukeさん、こんばんは。
「椿姫」、本番に向けて、大変良い雰囲気で仕上がりつつあるのですね。
「椿姫」は、私の大好きなオペラの一つですし、できれば是非とも本番を聴きにお伺い致したいと存じます。
さらなるご精励をお祈り申し上げます。
by 伊閣蝶 (2015-06-08 22:52) 

ヒロノミンV

 こんばんは。
 コンドラシン&ACOのシェエラザードは、僕にとってもこの曲の決定版です。
 コンドラシンの情熱的な音楽づくりに、真摯に応えるビロードの弦・黄金の管が自慢のRCO,奇跡的と言える巡り会わせだと思います。
 コンドラシンはもう20年健康で長生きされていたら、日本のオーケストラをかなり振っていたのではないかと思います。
by ヒロノミンV (2015-06-10 23:42) 

伊閣蝶

ヒロノミンVさん、こんにちは。
コメントが遅くなって住みませんでした。
シェエラザードのレコード(CD)は数多くありますが、私もこの演奏が決定版だと思います。
SACDで発売されたことで、この名演の隅々までの表現を耳にすることが出来、本当に嬉しい。
コンドラシン、仰る通りあまりに突然で早すぎる逝去でした。
N響との演奏が物語るように、もっと長生きをしてくれたら、日本のオーケストラとも素晴らしい演奏を残してくれたことでしょう。
残念無念です。
by 伊閣蝶 (2015-06-14 10:35) 

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