カール・ベーム&BPO、1970年ザルツブルグ音楽祭ライブ [音楽]
三連休、行楽日和が続いていましたが、今日は曇りがちで少し肌寒く感じます。
天気は下り坂なのでしょう。
本来なら三連休ですから、どこかに出かけたいところですが、どうも体調があまり良くないこともあって、出かける気力もなく、掃除・洗濯・布団干しなどに勤しんでおりました。
そんなおりに一番の気晴らしは、やっぱり音楽です。
TESTAMENTレーベルから、何と、カール・ベーム&ベルリン・フィルによる、1970年のザルツブルグ音楽祭のライブ録音CDが発売されました。
収録曲と情報は次の通りです。
Disc1
Disc2
エミール・ギレリス(ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
カール・ベーム(指揮)
録音時期:1970年8月
録音場所:ザルツブルク音楽祭
ステレオ(ライヴ)
モーツァルトの交響曲第28番ハ長調(K,200)、1774年、モーツァルト18歳のときの作品といわれています。
「第28番」とはなっていますが、現在では29番や30番の後に作曲されたものという説が有力となっています。
この曲辺りから優美さが前面に出るギャラント様式の世界に入り、バロック的な表現からの決別が図られていくのですが、ベームはそれを念頭におき、極めてオーソドックスで重厚な響きを紡ぎだしていきます。いささか重すぎるのではないか、という評価もあろうかと思いますが、この曲の背景を鑑みれば、このアプローチは極めて妥当なのではないかと、私は感じています。
次のK.595のピアノ協奏曲、これはもうなんといってもギレリスの演奏がぴか一です。
これほど美しく悲しく高貴で優しさをたたえた演奏がほかにあっただろうか、と思わせるくらい。
モーツァルト最後のピアノ協奏曲でもあるこの曲は、その完成度の高さももちろんですが、柔軟な演奏上の解釈を容認するかのような懐の深さを秘めています。従って、古今東西、様々な解釈に基づく名演が繰り広げられてきました。
しかし、この演奏は別格だと思います。
ギレリスのピアノのことを先に取り上げましたが、ベームの棒によって紡ぎだされる冒頭の前奏の素晴らしさは特筆ものです。
むしろ、ギレリスが、ベームの伴奏によってこれだけの演奏をなしとげている、ということもいえるのではないでしょうか。
この曲、私は、バレンボイムが弾き語りで演奏した1968年のイギリス室内管弦楽団とのコンビによるレコードが大変印象に残っていましたが、それを完全に忘れさせてしまうようなCDでした。
そして、ブラームスの交響曲第2番。
この曲を、私はとりわけ気に入っているのですが、ブラームスの「田園」とも称されているこの曲を、ベームはそんな甘く生温い感傷とは無縁な、むしろブラームスの音楽におけるポリフォニックな構造や堅固な様式性を掘り起こす厳しい音楽として再構築しています。
第1楽章の冒頭から繰り広げられる絶妙なテンポのコントロール。その自由な羽ばたきの中に確固としたブラームスの世界を作り上げている造形の素晴らしさには、心の奥底から感嘆するしかありません。
私がカール・ベームという指揮者を知ったのは高校1年生の時でした。
モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章を引用した、シルヴィ・バルタンの「哀しみのシンフォニー」が、リリースされて間もなくのこと。どうしてもその原曲を聴きたくてレコード屋に出向き、カール・ベーム&ベルリン・フィル盤(1961年)を購入したのでした。ジュピターとのカップリングで、確か2500円くらいしたような記憶があります。高校生のお小遣いからの支出にしては、ちょっと痛いものがありましたが、与えてくれたモーツァルトの世界の素晴らしさは正に筆舌に尽くしがたいもので、聴きながら自然に涙が溢れてきたことを思い出します。
1977年のウィーン・フィルとの来日公演では、東京文化会館で実演を聴きました。曲目はブラームスの交響曲第2番でした。
就職して二年くらいしか経たない20歳を超えたばかりの若造には、かなり負担の大きな入場料でしたが、紡ぎだされる音楽とともに、ベームその人の温かな人間性が溢れてくるようなステージで、これまた大感激。
大指揮者然とした尊大なところはみじんも見せず、そこにあったのは、ひたすらミューズの神様に使える使徒の姿でありました。
このCD、ライブ故の傷ももちろんあります。
しかし、それを補ってあまりある感動を与えてくれるのも、また真実なのではないかと思います。
このようなライブ録音のCDが、これほどの高音質で世の中に出てくることに、心底から感謝したくなりました。
天気は下り坂なのでしょう。
本来なら三連休ですから、どこかに出かけたいところですが、どうも体調があまり良くないこともあって、出かける気力もなく、掃除・洗濯・布団干しなどに勤しんでおりました。
そんなおりに一番の気晴らしは、やっぱり音楽です。
TESTAMENTレーベルから、何と、カール・ベーム&ベルリン・フィルによる、1970年のザルツブルグ音楽祭のライブ録音CDが発売されました。
収録曲と情報は次の通りです。
Disc1
- モーツァルト:交響曲第28番ハ長調 K.200 (189k)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
Disc2
- ブラームス:交響曲第2番ニ長調 op.73
エミール・ギレリス(ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
カール・ベーム(指揮)
録音時期:1970年8月
録音場所:ザルツブルク音楽祭
ステレオ(ライヴ)
モーツァルトの交響曲第28番ハ長調(K,200)、1774年、モーツァルト18歳のときの作品といわれています。
「第28番」とはなっていますが、現在では29番や30番の後に作曲されたものという説が有力となっています。
この曲辺りから優美さが前面に出るギャラント様式の世界に入り、バロック的な表現からの決別が図られていくのですが、ベームはそれを念頭におき、極めてオーソドックスで重厚な響きを紡ぎだしていきます。いささか重すぎるのではないか、という評価もあろうかと思いますが、この曲の背景を鑑みれば、このアプローチは極めて妥当なのではないかと、私は感じています。
次のK.595のピアノ協奏曲、これはもうなんといってもギレリスの演奏がぴか一です。
これほど美しく悲しく高貴で優しさをたたえた演奏がほかにあっただろうか、と思わせるくらい。
モーツァルト最後のピアノ協奏曲でもあるこの曲は、その完成度の高さももちろんですが、柔軟な演奏上の解釈を容認するかのような懐の深さを秘めています。従って、古今東西、様々な解釈に基づく名演が繰り広げられてきました。
しかし、この演奏は別格だと思います。
ギレリスのピアノのことを先に取り上げましたが、ベームの棒によって紡ぎだされる冒頭の前奏の素晴らしさは特筆ものです。
むしろ、ギレリスが、ベームの伴奏によってこれだけの演奏をなしとげている、ということもいえるのではないでしょうか。
この曲、私は、バレンボイムが弾き語りで演奏した1968年のイギリス室内管弦楽団とのコンビによるレコードが大変印象に残っていましたが、それを完全に忘れさせてしまうようなCDでした。
そして、ブラームスの交響曲第2番。
この曲を、私はとりわけ気に入っているのですが、ブラームスの「田園」とも称されているこの曲を、ベームはそんな甘く生温い感傷とは無縁な、むしろブラームスの音楽におけるポリフォニックな構造や堅固な様式性を掘り起こす厳しい音楽として再構築しています。
第1楽章の冒頭から繰り広げられる絶妙なテンポのコントロール。その自由な羽ばたきの中に確固としたブラームスの世界を作り上げている造形の素晴らしさには、心の奥底から感嘆するしかありません。
私がカール・ベームという指揮者を知ったのは高校1年生の時でした。
モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章を引用した、シルヴィ・バルタンの「哀しみのシンフォニー」が、リリースされて間もなくのこと。どうしてもその原曲を聴きたくてレコード屋に出向き、カール・ベーム&ベルリン・フィル盤(1961年)を購入したのでした。ジュピターとのカップリングで、確か2500円くらいしたような記憶があります。高校生のお小遣いからの支出にしては、ちょっと痛いものがありましたが、与えてくれたモーツァルトの世界の素晴らしさは正に筆舌に尽くしがたいもので、聴きながら自然に涙が溢れてきたことを思い出します。
1977年のウィーン・フィルとの来日公演では、東京文化会館で実演を聴きました。曲目はブラームスの交響曲第2番でした。
就職して二年くらいしか経たない20歳を超えたばかりの若造には、かなり負担の大きな入場料でしたが、紡ぎだされる音楽とともに、ベームその人の温かな人間性が溢れてくるようなステージで、これまた大感激。
大指揮者然とした尊大なところはみじんも見せず、そこにあったのは、ひたすらミューズの神様に使える使徒の姿でありました。
このCD、ライブ故の傷ももちろんあります。
しかし、それを補ってあまりある感動を与えてくれるのも、また真実なのではないかと思います。
このようなライブ録音のCDが、これほどの高音質で世の中に出てくることに、心底から感謝したくなりました。
2014-11-24 22:24
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コメント(4)
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体調早く治ってください。
by 夏炉冬扇 (2014-11-25 08:16)
なかなか体調が回復しませんか。
私は先日、無理して出かけてきました ^^;
ほんとに若い頃からクラッシクに親しんでいたのですね。
敬服の限りです。
by tochimochi (2014-11-25 22:09)
夏炉冬扇さん、おはようございます。
ご心配頂き恐縮です。
無理をせず、早く快復したいと思います。
by 伊閣蝶 (2014-11-26 07:15)
tochimochiさん、おはようございます。
その後、肉離れのお加減は如何でしょうか?
「無理して」お出かけとのことですが、大丈夫でしたか?
私はどうも、精神的なところでの落ち込みが響いているようです。
頑張らねばと気合いは入れているのですが。
by 伊閣蝶 (2014-11-26 07:17)