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ヴォルフガング・サヴァリッシュさんが亡くなりました [音楽]

今、東京に来ています。
研修と会議があり、水曜日までの滞在です。

昨日も、晴れてはいましたが、大変な冷え込みでした。
でも、梅の花はきれいに咲いています。
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今日は十五夜、ということで、昨晩はお月様もきれいに輝いていました。
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ドイツを代表する指揮者の一人であるヴォルフガング・サヴァリッシュさんが亡くなりました。
享年89歳。
2006年、心臓病の悪化を理由に事実上の引退をし、静養に努められていたとのことでしたが、誠に残念でなりません。

サヴァリッシュさんといえば、NHK交響楽団との深いつながりを即座に思い浮かべます。
1964年の初の招聘以来2004年まで、ほぼ毎年のように来日し、私たちにモーツァルトやベートーヴェンの素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
1967年にNHK交響楽団の名誉指揮者に就任。1994年からは桂冠名誉指揮者として、終世その地位にありました。

サヴァリッシュさんの演奏は、楷書の潔さ、といいましょうか、とにかく作曲者の意図(楽譜)に忠実に、というところを目指しています。
速度、ダイナミズム、アクセント、そして管弦楽の編成に至るまで、楽譜の指示に一切手を加えない、という信念のもとに取り組んだ。
サヴァリッシュさんはそうした方針について、次のように述べておられます。
ベートーヴェンが作曲上もっと大きな音量が欲しいと思えば、必ずそのように書いているし、音楽そのものが価値を持っているのだから、それを指揮者の個人的野心で巨大な音を鳴らすなどとんでもない暴挙というべきである。指揮者は楽聖の作品を演奏できるということを喜ばねばならず、謙遜さを欠き音符に一つでも手を加えるなど冒涜にほかならない。

例えば、エーリッヒ・クライバーなどのように(これは息子であるカルロスにも引継がれましたが)ベートーヴェンの第5番交響曲を大編成に改訂して演奏する行き方も、私は一つの見識だと思いますが、それは「指揮者の野心」という危うい誘惑と紙一重のところにあるものでもありましょう。
クラシック音楽というものが基本的に「再現芸術」である以上、それは演奏者によって再構築される創造物でもあるわけで、それ故にこそ我々のような聴き手は演奏者による個性を楽しむことができるというものです。
サヴァリッシュさんは、その誘惑を自ら封印し、その中においてあれほど感動的な演奏を繰り広げた。
その技術と見識の高さは、正にほかに追随する者を許さない孤高の存在ともいえるのではないでしょうか。

フィラデルフィア管弦楽団から三顧の礼を以て迎えられ、またそれに応えて誠実かつ精力的にその職務を全うするなど、人間的にも誠に素晴らしい方でありました。
9.11同時多発テロの折、ミュンヘンの自宅で休養中であったのにもかかわらず、直ちにフィラデルフィアに飛んで追悼演奏会を開いたエピソードなどに、その人間性が伺えます。

心よりご冥福をお祈り致したいと思います。



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夏炉冬扇

今日は。
89歳ですか。
昨日里の隣組の寄合(本日アップ)で、長寿の話題。どうしても女性が長生きですね。
by 夏炉冬扇 (2013-02-25 18:02) 

hirochiki

こちらも、今日の最低気温は-2.1度だったそうです。
梅の花は、こんなに寒くてもしっかりと花を咲かせているのですね。
こちらの白梅は、昨日はまだこれほど開いていませんでした。
サヴァリッシュさんは、指揮者としてだけではなく人間的にも素晴らしい方だったのですね。
心からご冥福をお祈りいたします。
by hirochiki (2013-02-25 18:49) 

tochimochi

昨日はこの冬一番とかでとにかく寒かったですね。
偕楽園もそろそろ咲いてきているようです。
近々行ってみようと思ってます。

by tochimochi (2013-02-25 20:38) 

ムース

新聞の社会面に小さく記事が出ていましたね。私が編集長ならもっと大きな記事にしたと思いますが・・・。
サヴァリッシュさんといえば、カラヤンとの確執?も有名でしたね。ただ、意外にも私の音楽遍歴には入り込む隙間はなく、CDも一枚も保有していない状況(ライン交響曲は買おうと思ったことあり)、N響アワーの記憶だけが残っています。黙祷。
by ムース (2013-02-26 23:23) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんにちは。
良く聞く話ですが、連れ合いを亡くしたあと、男性は後を追うように亡くなることが多く、女性は逆に長生きをするとのこと。
ストレスなどに対する耐性も影響するのかもしれません。
by 伊閣蝶 (2013-02-27 13:48) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
名古屋も随分冷え込んでいるようですね。
今、東京からの帰りの新幹線に乗っていますが、こちらは昼からだいぶ気温が上がりました。
梅の花、寒さの中に咲いている姿には本当に力づけられます。
サヴァリッシュさん、芸術もさることながら素晴らしい人間性をお持ちでした。

by 伊閣蝶 (2013-02-27 13:49) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんにちは。
御地でもだいぶ冷え込んでいるようですね。
宇都宮支店から来ていた同僚が、「あちらではマイナス6度でしたよ」といっておりました。
偕楽園の梅、是非ともまたお写真を拝見致したく存じます。楽しみにお待ちします。

by 伊閣蝶 (2013-02-27 13:50) 

伊閣蝶

ムースさん、こんにちは。
新聞の扱いはそんなものでしたか。
NHKは、さすがにN響の名誉指揮者をされていたこともあり、結構詳しく報道しましたが。
サヴァリッシュさんの指揮。
いわゆるケレン味がないので、とても安心して聴けます。
ただ、曲によっては面白みに欠ける場合もありました。
ラインも素晴らしい演奏でしたね。

by 伊閣蝶 (2013-02-27 13:51) 

のら人

今朝の東京は少し寒さも緩んで参りました。
この調子で、グングンと暖かくなる事を切に希望致します。 ^^
会議だけでなく、研修もですか。 伊閣蝶さん程のベテランでも、研修があるんですね。
by のら人 (2013-02-28 08:43) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
今日はだいぶ暖かな日になりましたね。
ところで研修ですが、この年でも受けさせてもらえるだけありがたいかな、と思っています。
まだまだ足りないことが多いなと思い知らされますし。
by 伊閣蝶 (2013-02-28 22:52) 

Cecilia

サヴァリッシュの音楽を語ることができるほどたくさん聴いているわけではないのですが、「エリヤ」とか「魔笛」で親しみ、大好きな指揮者でした。
亡くなられたということでショックです。
オルガニストのマリー=クレール・アランが亡くなったのもショックです。
by Cecilia (2013-03-09 19:53) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
サヴァリッシュさんの訃報は誠にショックで残念でしたが、アランさんがお亡くなりになっていたとは知りませんでした。
これは本当にショックです。
とりわけ彼女によるバッハのオルガン曲の大ファンでしたので。
また、さすがにフランス生まれだけあって、フランスのオルガン音楽も素晴らしいものでした。特に、お兄様であるジャン・アランの曲は特筆すべきものだと思います。
残念です。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
by 伊閣蝶 (2013-03-10 09:46) 

サンフランシスコ人

サヴァリッシュの実演に一度も行けませんでした....フィラデルフィア管弦楽団の定期演奏会をサヴァリッシュが病気で欠席...
by サンフランシスコ人 (2017-03-05 06:09) 

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