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ムラヴィンスキー・イン・モスクワ [音楽]

東京オリンピック、とうとう開始されました。
新型コロナウィルスの感染拡大は一向に収まる気配を見せず、ことに首都圏での新規感染者が激増を続けている中での開催強行。
海外からの参加者の中からも、既に153人の陽性者出ていると聞きます。

国立競技場の建て替えを巡るごたごたから始まり、エンブレムの盗用、組織委員会会長をはじめとする要人の交替や更迭、過半数を超える国民の反対や疑念(新型コロナウィルス感染拡大を危惧してのもの)、など様々な問題がありながらなぜ強行するのか?
沸き起こるのは疑問ばかりですね。

以前も書きましたように、そのそも私はスポーツ観戦というものには全く興味がありません。
従って、競技場に足を運ぶのはおろか、テレビ観戦すらもごめん被る、というのが目下の心境です。

そんなこともあって、連休中は、専らCDを聴いていました。

というのも、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるモスクワでの演奏(1965年・1972年)が7枚組のCDになって発売されたからです。


このコンビによるモスクワでのライブは、旧ソ連の他の都市のそれに比べて格段に録音の質が良いことで知られていました。
にわかには信じがたいことですが、例えばレニングラードなどでは1970年代に入るまでまともなステレオ録音もできなかったのだそうです。

その、モスクワ・ライブのリマスター、ということで音質もかなり改善されています。

ただし、PRのための次のような一文は、明らかに書きすぎのような気もします。
いずれも、かねてから知られていたお得意のレパートリーである。それどころか、既出の演奏の再発売がほとんどである。しかし、音質が信じられないほどよいのだ。とても同じ演奏とは思えないほどなのだ。細部が手に取るようにわかる。客席のノイズや雰囲気もクリア。まるで伝説のレニングラード・フィルをステージ間近で聴いているかのようだ。

実際に聴いた感覚では、これほどのものではないようにも思われますが、これだけバラエティーに富んだ演奏をいちどきに入手できるのはやはりありがたいものです。

ムラヴィンスキーといえばロシア物というくらい、正に自家薬籠中の物という感が強いのですが、CD1冒頭のグリンカ「ルスランとリュドミュラ序曲」は超絶的で、さらにショスタコーヴィチの交響曲第6番は初演がムラヴィンスキー&レニングラード・フィルということもあり、これこそが決定版!という演奏なのでしょう。
このセットでは、1965年と1972年の二つの演奏が収録されています。
この曲は、重く沈鬱で神秘的な第1楽章が印象的ですが、醸し出される緊張感は恐るべきものです。
特に1972年の方が私の好みです。

また、チャイコフスキーによる幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」の演奏に私はとりわけ感動しました。

この物語について、私は以前、このような文章をアップしたことがあります。

パオロとフランチェスカ

ダンテの神曲の中でも、「ウゴリーノ伯爵の幽閉」とともに胸が張り裂けそうになる悲しみを覚える逸話ですので、そのことももちろん影響しているのでしょうけれども、この物語を背景として聴くと誠に胸に迫るものがあります。

それから、モーツァルトの交響曲第39番の演奏も特筆すべきものと思います。
この曲では、ワルターやベームによる名演がありますが、それらとは全く別の次元での、極めつけの名演ではないかと私は思います。
いささかの混じりっ気もない純真無垢で透明な世界がそこには現れます。
しかし決して無機質ではなく、極めてデリケートなニュアンスがちりばめられている。
第一楽章の印象的な二つの不協和音にハッとさせられ、第二楽章のDurからMollに変わる部分のはかなげな美しさに胸を打たれる。
私は、とりわけこの曲の第二楽章が好きなので、この表現には全く参ってしまいました。
レニングラード・フィルが、ロシアのオーケストラにありがちな爆演系に落ちなかったのはやはりムラヴィンスキーの統御によるところが大きいのだな、と改めて感じているところです。

そのほか、シベリウスの「トゥオネラの白鳥」も、その透明な悲しさに感動しましたし、複数のテイクが録音されているワグナーについても、「なるほど、こういう行き方もあるのか」と思わされたところです。

いずれにしても、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの演奏を好む人にとっては大変お勧めのセットだと私は思います。

ちょっといけないことかもしれませんが、在宅ワークにおける目下のBGMとして、このセットは大活躍です。
下手をすると仕事そっちのけで聴き入ってしまうのですが(汗)
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夏炉冬扇

オリンピック以外の番組にしますが、なかなかありません。
ラーゲリに長年収容されていた日本人の記録文学読んでいます。
とにかく暑いですね。
by 夏炉冬扇 (2021-07-27 14:41) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんにちは。
私の身内にもシベリア抑留を経験した者がいます。
ラーゲリをめぐる記録には、日本人のみならずドイツ人などにもたくさんの経験者がおられ、いろいろな本が出ていますね。
テレビを見る気がしないので、私もCDのほかは専ら読書です。
by 伊閣蝶 (2021-07-27 18:18) 

のら人

仕事を忘れて没頭できる音楽があるのは素晴らしい事ですね。^^
スポーツバーに関しては特に著しく嫌悪感が走ります。
一人で大人しくスポーツ観戦するならばまだしも、スポーツをTVで見ながら周囲の赤の他人と一緒に盛り上がりたい、ってのはどう考えても心が病んでいる様にしか見えませんです。(苦笑)
by のら人 (2021-07-27 19:58) 

tochimochi

緊急事態宣言下で様々な不祥事も続いて、それでもオリンピックはやるというのだから利権、政権のためとしか思えません。
感染拡大が続いてますね。今日の東京は2848人になってしまいました。何が起こっても中止しないという姿勢だけは頑なです。
メディアも五輪一色ですね。憂鬱な2週間になりそうです。そんな状況でも夢中になれる音楽があるというのは素晴らしいと思います。

by tochimochi (2021-07-27 20:36) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
スポーツバー、私もまったく受け付けません。
盛り上がって興奮して、それを赤の他人と分かち合いたい、ということなのでしょうか。
それを「友好」だと思っているとしたら、甚だしい勘違いという気もしてきます。

by 伊閣蝶 (2021-07-27 23:57) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
ガースー総理は、「人流は抑えられている」と、何の具体的な証明もなさないまま言い続け、オリンピック中止は全く考えていない、と発言しました。
恐るべき認識だと思います。
東京では2848人、日本全国で7000人を超える新規感染者が出て、恐らく早晩医療現場はひっ迫する可能性が高いというのに。
メディアも、この感染拡大の話題よりもオリンピックを優先しています。利権がらみとはいえ、浅ましい態度だなと思いますね。
by 伊閣蝶 (2021-07-28 00:03) 

Jetstream

おはようございます。オリンピック自体には辟易、利権と政治利用、コロナ禍でこれほどきなくさい大会はないです。コロナ禍での様々な不祥事と失政を「歪んだ盛り上がりで国民は忘却」するとバカにされているのが大多数は気づいていない。スポーツは好きですが今回は冷めた視線、たまに見ますがTOO MUCHなんで録画した山番組を楽しんでます。クラッシックをBGMでホームワーク、聞き入ってしましますね。(笑) 仕事もきっとはかどります。!(^^)! 私もガヤガヤ騒ぐより気が安らぐ、癒しがいいです。
by Jetstream (2021-07-28 12:17) 

伊閣蝶

Jetstreamさん、こんばんは。
本日、東京都での新型コロナウィルス新規感染者は3000人を超え、神奈川でも1000人を超えました。
日本全国でも10000人に迫る勢いです。
このような中でも、官邸では全く危機感がなく、何の根拠もない「人流は抑えられている」という空念仏を唱えています。
恐ろしいことです。
テレビをはじめとするマスコミは、結局のところ五輪関係の話題で盛り上げ、人々の不安感をごまかす方向に走っているとしか思えません。
テレビなどを見限って音楽に逃げるのは良くないのかもしれませんが、危機意識を欠いた垂れ流しの五輪情報を見ていると、それだけで気持ちがなえてしまいます。
困ったものですね。
by 伊閣蝶 (2021-07-28 22:32) 

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