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厚木混声合唱団第25回定期演奏会 [音楽]

厚木混声合唱団第25回定期演奏会に行ってまいりました。
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クリスマスイブでの開催ということで、会場となった厚木市文化会館大ホールは観客でほぼ満員。
厚木混声合唱団がいかに地元から愛されているかがわかりますね。

この合唱団には連れ合いの友人がソプラノパートで参加しているのですが、彼女は難病に罹患しているのにもかかわらず、この合唱団での活動をはじめ、ご自身のソロリサイタルも開き、また絵を描いたりするなど、主に芸術の方面で大変アクティブにご活躍です。
連れ合いに云わせれば、そうした前向きな活動が、豪病に立ち向かう気力を支えているのではないかとのこと。
大した疾病や障碍などを持っているわけでもないのに、何事につけ易きに流れている私などからすれば、正しく眩しいほどの存在です。

当日のステージは4部構成。

第一部は、シャルル・グノー作曲の「聖チェチーリアのための荘厳ミサ曲」です。

聖チェチーリアは、心の内で神への音楽を奏でていたといわれていたことから、音楽を守護する聖人とされています。
ローマ帝国から迫害され殉教したキリスト者の遺体を引き取り埋葬したことから総督の迫害を受け棄教を迫られますが、それを拒んで夫とともに殉教したと伝えられています。
蒸し風呂の刑に処したところ汗一つかかずに耐え抜いてしまったため、最後は斬首されたとのこと。
この折、チェチーリアは打ち付けられた刃に三度も耐え、その後最期を迎えました。
事実であれば、その精神力と神への祈りの強さにただただ驚愕するばかりです。

グノーは、30歳を過ぎてなお、自分は作曲家になるか聖職者なるかで悩んだそうです。
そのためか、有名な「アヴェ・マリア」をはじめ、レクイエムなど数多くの宗教曲を残していますが、「アヴェ・マリア」のほかはそれほど取り上げられてきてはいません。
恥ずかしながら、この曲についても私は、こうした形での全曲演奏を舞台で聴くのは初めての経験でした。
「荘厳ミサ曲」とは云い条、モーツァルトやベートーヴェンのような絢爛豪華さはなく、神様と聖チェチーリアへの素朴かつ純粋な祈りと愛を歌い上げています。
殊に、複雑かつ高度な対位法を駆使し、演奏する側にも聴く側にも極度の緊張を強いるベートーヴェンのそれとの違いはどうでしょうか。
正にクリスマスイブに相応しい典雅で喜びに満ち溢れた選曲といわざるを得ません。
しかし、そうはいっても演奏に小一時間はかかる大曲です。
合唱団の皆様の並々ならぬご覚悟がひしひしと伝わる演奏でした。
メンバーであるお友達のお話によれば、指揮者の方からこの曲の提案がなされたとき、さすがに「無理です」という声がメンバー各位から上がったとのこと。
それに対して指揮者は、今やらなくていつやるのですか!と、まるでテレビで有名な林先生のような言葉で迫り、今やらないで先送りすればますますできなくなる、と強く訴えたそうです。
その気迫がひしひしと感ぜられる熱い演奏でした。
特に、Credoの合唱によるユニゾンはものすごい迫力で、思わず目頭が熱くなり、この日を目指して頑張ってこられた合唱団のメンバーには頭が下がる思いです。
因みに、ソプラノ・テノール・バスのそれぞれのソロは、団員の中でのオーディションを実施し選出されたとのこと。
この試みも、この曲らしく非常に好もしく感ぜられました。

第2部は、高田三郎の「水のいのち」です。

いやしくも合唱経験のある人で、この曲を歌ったことがない方はかなり少数でしょう。
それほど合唱団にとってはなじみの深い曲ですが、それゆえに全曲演奏を舞台で観客として聴くことは少ないのではないかと思っています。
事実、私もこの曲は何度も歌いましたが、こうして全曲を観客側で聴いたのはいつ以来だろうと思い返しつつも記憶が定かではありません。
それはともかく、さすがによく歌いこまれていて、正に自家薬籠中の演目とされていました。

第3部は、混声合唱のためのヒットメドレー「SORA」。
三沢春美さんの編曲で、広く知られた歌謡曲「朧月夜」「夜空ノムコウ」「TOKIO」「君といつまでも」「東京キッド」「浪漫飛行」「春よ、来い」「涙そうそう」が、団員たちのパフォーマンス入りで繰り広げられます。
第1部と第2部で衣装が変わっていたこともあって、ビジュアル面にも力を入れた公演だなと思ってはいたのですが、かぶりものや小物類も含めた団員の皆様の遊び心に溢れたいでたちには驚かされました。
それぞれの曲に個別のショートストーリーを配した振付が施されていて、観客のみならず出演者も楽しんでおられる様子がほほえましく感ぜられます。
ただ、こう申しては失礼かと存じますが、団員の皆様のご年齢はかなり高いように見受けられ、振付に合わせたステップにどうしてもついていくことのできない方もかなりおられました。
合唱などの音楽をやっているのにもかかわらずリズム感に乏しい人は結構いて、例えばシンコペーションとか三連符・五連符・六連符などが取れない場面などにも出くわした経験がありますが、ステージでの踊りやステップではそれが如実に表れてしまうのですね。
その点はちょっと気の毒に感じました。

第4部は「クリスマスの夜に」と題して、「O Holy Night」が披露された後、「きよしこの夜」「ジングルベル」を観客とともに合唱。
客席を埋め尽くした観客の声をも合わせて、厚木市文化会館大ホールはクリスマスイブの祝祭に沸いたのでした。

終演後、ロビーでは団員の皆様が私たちを迎えてくれました。
連れ合いの友人は、長丁場に及んだ舞台の疲れをものともせず、満面の笑みをたたえてお客様たちの祝福の声にお礼の言葉を返しておられます。
「痩せられたな」というのが私の率直な印象でしたが、表情はこの上もなく輝いていて、やりつくした達成感に満たされておられました。
連れ合いによると、痩せたように見えても浮腫みに悩まされておられるそうで、少しでも筋肉をつけられればいいのだけれども、階段を上るだけでも辛いことがあるらしく、ままならないとのこと。
このステージは、そんな彼女が気力で乗り切ったのだなと改めて感動し、このところ活動全般にわたって沈滞気味の私にたくさんの力を与えてくれたように思われました。

厚木市は、合唱をはじめアマチュアの楽団も精力的に活動し、それを市が積極的に公演しているようです。
この日のステージで管弦楽アンサンブルを担当した「ATSUKON室内アンサンブル」も、指揮者の秋山徹氏のゼミの学生が中心となって組織されたもの。
若さ溢れる瑞々しい演奏を聴かせてくれて、これも非常に感動的でした。

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夏炉冬扇

なかなか凝ったポスターですね。
団員の方の作でしょうか(・・?
by 夏炉冬扇 (2017-12-26 18:02) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
このチラシ、私も感心しました。
もしかすると団員の方が作られたのかもしれませんね。
by 伊閣蝶 (2017-12-26 22:34) 

tochimochi

>そうした前向きな活動が、豪病に立ち向かう気力を支えている
でしょうね。
だからこそ皆さんを感動させる歌を聴かせられるのでしょう。
それにしても聖チェチーリアはすごいですね。こういう背景を知ると聴く側も真剣になりますね。
私などは困難に出会うとすぐ逃げてしまいます。
恥じ入るばかりです。


by tochimochi (2017-12-26 22:40) 

のら人

私も困難から直ぐに逃げてしまします。^^;
お恥ずかしい限りです。
by のら人 (2017-12-27 09:14) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんにちは。
仰る通りで、その前向きな気持ちが演奏にも表れていました。
聖チェチーリアは、自身の信仰の尊さを訴えることで夫をキリスト者にし、ともに殉教した人でした。
並々ならぬ強さと思います。
私も同じく困難から逃避することばかり考えており、恥じ入ってしまいますが、凡人の限界というものでしょうか。
by 伊閣蝶 (2017-12-27 12:56) 

伊閣蝶

のら人さん、こんにちは。
のら人さんは、国家資格取得のために大変な努力をなさっておられました。
困難に立ち向かわれているお姿に、私は眩しいものを感じます。
私も逃げているだけではだめだなと改めて思いました。

by 伊閣蝶 (2017-12-27 12:58) 

ぼんぼちぼちぼち

いろんなジャンルの歌が歌われたのでやすね。
充実のイブを過ごされて何よりでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-12-29 21:26) 

Jetstream

やはり健康と気力ですね。見習いたいです、
今年一年お世話になりありがとうございました。
どうぞ佳い年をお迎えください。
by Jetstream (2017-12-31 12:03) 

伊閣蝶

ぼんぼちぼちぼちさん、こんにちは。
出演者も観客も広く楽しめるようにというプログラム構成には頭が下がりました。
正に硬軟取り混ぜて、という感じでした。
今年もよろしくお願い申し上げます。
by 伊閣蝶 (2018-01-01 10:34) 

伊閣蝶

Jetstreamさん、こんにちは。
健康と気力、正にそれが肝ですね。
私もそれを痛感しております。
こちらこそ大変お世話になりました。
今年もよろしくお願い申し上げます。
by 伊閣蝶 (2018-01-01 10:36) 

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