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三木稔メモリアルシリーズVol.6「井上道義の巨火(ほて)」 [音楽]

今日は雨がちの肌寒いお天気になりました。
初春の常なのでしょうが、変わりやすいお天気が続き、寒暖の差も激しいので結構体にはこたえますね。

金曜日、故三木稔先生の最後のメモリアルコンサートを聴きに出かけました。
auraj2015.JPG

このメモリアルコンサート、昨年の7月、私もその一つに出演しております。

三木稔、レクイエム三部作演奏(すみだトリフォニー)

三木先生を追悼する催しも、このコンサートをもって一区切りを迎えるのかと思うと、万感胸に迫るものがあります。
会場となった「めぐろパーシモン大ホール」は、ほぼ満席の観客となりましたが、皆様、恐らく同じ想いで、この演奏に臨んでおられたのではないでしょうか。

プログラムは以下の通りです。
  1. アダージョ〜記憶と共に 作曲:江原大介(新作初演)
  2. 尺八二重奏《名残花》 作曲;橘川琢(新作初演)
  3. 三つのフェスタルバラード 作曲:三木稔(1954年)

   休憩
  1. 秋の曲  作曲:三木稔(1980年)
  2. 巨火(ほて) 作曲:三木稔(1976年)

演奏時間が30分になんなんとする、正に巨大な曲である「巨火(ほて)」を、このメモリアルシリーズのトリに配置する心憎い演出。
私自身が、この曲とは浅からぬ因縁があった故に、クライマックスの秩父屋台囃子の強烈なリズムが体中に共鳴するかのような興奮を味わいました。

前半のプログラムでは、三木先生の教えを受けた二人の現役作曲家の作品が二曲演奏され、これが何とも味わい深い作品です。
西洋音楽とりわけドイツの正統的な音楽では、縦の音つまり和声の響きをカッチリと響かせることが重要なポイントになりますが、邦楽ではむしろ個々の旋律の美しさを如何に際立たせるかが勝負になるような気がしています。
このお二人の曲は、その意味で三木先生の行き方をしっかりと踏襲されていて、実に頼もしい限りでした。
橘川琢さんとは、10年前、三木先生の作品を中心に据えて企画した八ヶ岳国際音楽祭の開催の折に、個人的にも深いつながりを持ちましたので、私にとっては格別の想いがあります。
実に静謐で悲しいばかりに美しい曲でした。
音楽は魂の鏡であり、人生の似姿だ。私は生涯、先生の教えを守り、魂を磨き続け、くもりのない姿を音楽に人生に映して行きます。

プログラムに添えられた橘川さんのこの言葉には深く頷かされました。

主催団体であるオーラJの坂田誠山(尺八)さんのご挨拶にもありましたが、三木先生に続く新しい曲を世に生み出す若き創造者の出現を、私も待ち望んでいます。
三木先生を超える作品を生み出す若手の排出を、坂田さんとともに心待ちにしたい、この二曲を聴きながら、強く感じました。
今のこのご時世で、作曲それもミージックサーヴァントとしての創作活動で食べていくことは相当に困難なことと思われます。
真摯に音楽に打ち込んでいる音楽大学学生たちも、そのほとんどは表芸によって生活の糧を得ることは相当に困難です。
このように、新進の作曲家の作品が演奏される機会を、もっともっとたくさん作って欲しい。心からそう思いました。

さて、休憩を挟んでの後半は、本日の演奏会のメインイヴェントです。

「秋の曲」。私はこのお二人による実演を、もう何回聴いたことでしょう。
その都度、新たな発見をさせられる、実に深い曲です。
坂田誠山さんのリサイタルの委嘱作でありますから、坂田さんの尺八が格別に素晴らしいのは言を俟ちませんが、木村玲子さんの二十絃箏の美しさは、それにも増して心に染み入ります。
この緊張感と絶妙な調和を、さあ、どのように表現したら良いものか。
残念ながら、二十絃箏の奏者は木村さんではありませんが、三木稔選集2でこの曲を聴くことが出来ますので、よろしければお聴き下さい。
「秋の曲」が入っている「三木稔選集2」


そして「巨火(ほて)」。
この曲の、日本におけるメジャーデビュー(1980年)の際の指揮者は井上道義さんでした。
井上道義さんご自身が、この曲には大変な愛着をお持ちであり、いまから6年前に催された「三木稔先生の福岡アジア文化賞受賞と傘寿をお祝いする会」でも、この曲の第三部である「魂振り(たまぶり)」をノリノリで演奏されました。
私もそうでしたが、お酒も入ってみんなの気持も高揚している場面でしたから、会場全体が異様な興奮に包まれたことを今でも思い起こします。
井上道義さんは、昨年、咽頭がんを患われ、半年にわたって指揮活動を休止されておられましたが、以前と全くお変わりないお元気なお姿で登場され、軽妙で温かなコメントを交えながらの演奏は、これまた何とも形容しがたく素晴らしいものでした。
邦楽器の大規模な合奏という驚天動地な試みを見事に成し遂げた「巨火(ほて)」。
先にご紹介した八ヶ岳国際音楽祭の富士見公演では、100人を有に超える演奏者の合奏によって、とてつもない巨大な造形を作り出し、私は正に故郷である富士見町に錦を飾ることができたのですが、その折の興奮と感慨を改めて思い起こしたところです。
井上道義さんは、太鼓・鉦・木魚などを一緒に打ち鳴らしながらの指揮で、演奏者のみならず会場に集う観客をも巻き込んだ興奮のるつぼを作っていきました。
指揮者に託された打楽器は、太鼓以外は特に指定はなされておらず、それこそ、その演奏の時々によって自在に姿を変えていきます。
この曲もCDになっていますので、ご興味のある向きは是非ともお聴き下さい。
この「巨火」が入っている「三木稔選集1」での「巨火」の指揮者は井上道義さんです。


この演奏会のアンコールは、やはり、といっては何ですが、「巨火」の第三部「魂振り(たまぶり)」。
もう一度、三木音楽の巨大な造形と、いつまでも体の奥底に響き渡る秩父屋台囃子を存分に味わうことが出来、実に実に幸せなひとときでありました。

演奏会のあと、八ヶ岳国際音楽祭富士見公演でともに苦労を分かち合った仲間通しで、ささやかに乾杯。
三木先生の話などをして、演奏会の余韻に心ゆくまで浸った次第です。

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tochimochi

想い出の曲ですね。
伊閣蝶さんが胸に迫る思いで聴いている様子が眼に浮かびます。
寒暖の差が激しくなってきて、いよいよ春ですね。
そろそろ山行計画をされているのでしょうか。

by tochimochi (2015-03-09 22:35) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
仰る通り、大変深い思い出の曲でしたので、胸に迫る感動を抑えきれませんでした。
まだ寒い日が続いていますが、陽も長くなり、春の足音は着実に聞こえてきます。
そろそろリハビリもかねて山に出かけようかなと思っている次第です。
by 伊閣蝶 (2015-03-09 22:42) 

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