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御嶽山の噴火 [山登り]

このところお天気も安定していて、秋らしい爽やかな青空が広がっています。
肉離れのリハビリと買い物を兼ねて、自宅付近のウォーキングに出かけた折、金木犀の香りに出会いました。
もうそんな季節になったのだなと、ちょっと感傷的になってしまいますが、金木犀の花は陽の光を受けて輝いています。目立った大雨や強風にさらされなかったのが幸いしたのでしょう。
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街路には銀杏の実が落ちていて、あの独特の匂いを漂わせています。
次第に秋が深まってきているのだなと、肉離れの痛みが残るゆえに山に行けない悔しさがやるせなく感ぜられました。

そんな折の土曜日、なんと御嶽山が噴火したとのニュースが流れました。

死火山といわれてきた御嶽山が突如噴火し、大きな衝撃を与えたのは1979年のこと。
それ以降、「活火山」として継続的な監視と観測が必要な山岳に指定され、これまでに小規模な噴火を複数回繰り返してきています(因みに、この1979年の御嶽山噴火により、それまでカテゴリーとしてあった「休火山」が削除されることになりました)。
その一方、古くから「御嶽教」を始めとする宗教のご神体として崇められてきており、観光地としても脚光を浴びてきました。
乗鞍岳や立山などと並び、3000mを超える山岳としては比較的たやすく登ることができる上、例の「百名山」の対象となっていることもあって、多くの観光客を迎えています。
王滝口や黒沢口など、2000mを超える登山口まで車やロープウェイを使える利便性を備えた登山道が拓かれており、しかも小屋の数も多く、楽勝で登れる高山の代名詞のような存在でもありました。

紅葉真っ盛りの週末、しかも抜けるばかりの青空。こんな絶好の登山日和ゆえ、一説によれば頂上台地には250人くらいの人がいたのではないかとのこと。
9月27日11時52分、突如起こった水蒸気噴火によって、現場には夥しい量の噴石と火山灰が降り注ぎ、硫化水素を含んだ噴煙に包まれました。
被害の全貌はまだ明らかになってはおりませんが、相当数の死者・行方不明者が出ている模様です。
一方、命からがら付近の小屋に避難した人々(生存者)は、28日までに順次下山あるいは自衛隊などによって救出されました。

新聞などの報道によると、恐怖心からか体がすくんで動けず「一人では降りられない」と訴えた人もおり、「ここ(頂上小屋)にとどまっているのは危険だから」と説得され、ようやく下山に取り掛かった例もあったそうです。
先にも書きましたが、無風快晴時の登山であれば、初心者でも楽勝といえるようなコースのある山ですから、こうした「レベル」の方も数多くおられたのではないでしょうか。
というよりも、このような不意打ち的な事故を想定して行動するのは、一般的にほぼ不可能といってもいいのかもしれません。
9月11日に火山性地震を85回観測しましたが、その後は小康状態となり、当日に至って313回の火山性地震が観測されたとのことですけれども、それをもって「登山禁止」などといった勧告・措置を採ることは、現時点ではできますまい。
その場に居合わせれば、私も当然のごとくいそいそと山頂に向かっていたのではないでしょうか。

無事に下山した方々のインタビューを聞くと、とっさにハイマツの下に逃げ込んだりタープなどで体を覆ったり両手で口と鼻を覆って火山灰や噴煙の侵入を防ぐととも空気の層を確保したりしたとのこと。
こうした緊急措置は、例えば雪崩や暴風雪などの悪天候に遭遇した折にとることを想定したもので、恐らくそうした経験を積んでいるか知識を有していた人がそれを実行に移したのでしょう。
こうした経験と心構えが、このような緊急時に威力を発揮したのではないかと考えます。

しかし、噴火地点付近にいた人たちを襲った噴石は、ものによっては軽トラックほどの大きさのものもあり、それらが猛スピードで飛んできたわけですから、直撃を受けた人はひとたまりもなかったことでしょう。背負っていたザックの水筒がショックを吸収してくれたおかげで助かった、という方もおられましたが、御嶽山の一般登山道をヘルメットを着用して登る人は恐らく皆無でしょうから、頭に噴石の直撃を受ければ致命傷になります。
この強烈な不意打ちは、ベテランの登山者といえども防ぎようがなかったのではないか、と慨嘆させられました。

そして、今回の事故において、もう一つ考えさせられたのは「登山届」の提出です。

登山届“形骸化”し情報錯綜 難しい安否確認 「面倒だから提出しない人多い」
御嶽山には長野、岐阜両県の計4ルートにそれぞれ設置されているが、登山条例で義務づけられている富山、群馬両県と違い、提出は任意だ。長野県では提出率を上げるため事前にスマートフォンでの提出も始めたが、同県木曽町観光協会の担当者は「面倒だから提出しない人も多い。半数程度しか提出していないのではないか」と話す。頂上まで登らないことから登山ではないと勝手に判断し、登山届を出さないケースも少なくないという。

むしろ、「提出が義務付けられている」事例の方が稀なのであり、自宅にすら行先を告げない人も数多くいるのが現状なのではないでしょうか。
私の自宅にも、姻戚から「○○さんは御嶽山に登っていないでしょうね」という安否確認の電話がありました。
私は、山に出かける折には、必ずその行動予定などを家人に言い置き(紙などに書く)、登山届用のポストがあればそこにも登山届を提出することにしています。
万が一を想定しての、これは重要な自己防衛手段なのではないかと思うのですが、実態はこの記事のとおりなのでしょう。剣呑なことだと思います。

誠に以て不幸な事故ではありましたが、相手が人知の及ばぬ巨大な存在であることに鑑み、その危険地帯に踏み込むのだという自覚を常に持って臨むことの必要性を改めて教えてくれたのかもしれません。

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コメント 2

tochimochi

噴火にはほんとにビックリしました。
>この強烈な不意打ちは、ベテランの登山者といえども防ぎようがなかったのではないか
仰るとおりですね、準備のしようもないです。
登山届け、そういえば私も会を離れてからは出したことがないですね。
反省したいと思います ^^;


by tochimochi (2014-09-30 22:12) 

伊閣蝶

tochimochiさん、おはようございます。
正に青天の霹靂、という感じでした。
登山届提出の重要性、私も改めて痛感しました。

by 伊閣蝶 (2014-10-01 07:19) 

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