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頑張りすぎないこと [山登り]

台風が来たわけでもないのに、各地で大雨が降ったりする、なんともひどい天気が続きます。
どうやら今週末の三連休は晴れそうな予報ですが、それにしても今年のお天気は、2月の大雪といい、8月の多雨といい、異常ですね。
地球規模の異常気象や温暖化の進展、などという話も聞きますが、地球の営みからすればほんの一瞬の出来事でしょうから、これは「我々人類にとって」という枕詞が必要な気もしますけれども。

いずれにしても、雨天の日はどうにもモチベーションが上がらず、出勤するのも億劫になってしまいます。勤め人としては誠に情けないことですが、齢を重ねるごとにそんな気分が強くなってきました。
津にいた折は、そうはいってもこなさなければならない対外的な用務がたくさんありましたので、出勤が億劫だなどと甘えたことは口にできませんでしたし、多忙とはいい条、仕事の中身も面白かったこともあって、こういうスピリットレスな気持ちにはなりませんでしたが。

仕事柄、会社のトップや経営者の方々とお話しする機会が結構ありましたが、そうした方々は例外なく気力が充実しておられました。
「休んだのは元旦だけだった」と苦笑しながらも、とにかく仕事が面白くて仕方がない、という感じがひしひしと伝わってきたのです。
なんとうらやましいことだろうと思いつつ、こういう方だからこそ会社経営という重責を担うことができるのだろうと、改めて痛感したのでした。
世の中には、このように、自らを甘やかすことなく一年間を乗り切ってしまうことのできる人もおられるのでしょうが、私は残念ながら、そうした才能には恵まれていないようです。
無気力な状態をねじ伏せるためには相当な気力の注入が必要ですが、そこであまり頑張りすぎると反動がやってきそうな気さえしますから。
誤解を恐れずに敢えていいますと、私などのように役職定年を迎えた人が鬱に陥ってしまう理由の一つは、そうした環境の変化や寄る年波が引き起こす無気力感に、頑張って立ち向かおうなどと足掻くからなのかもしれないな、と思ったりもします。

先日、鬼石沢で途中退却した話をアップしましたが、山に登っていても、状況によっては退却することを厭わなくなってきました。
20代や30代の頃は、風雨でも風雪でも、とにかく頑張って所期の目的を果たす!みたいな危ない山登りをしておりましたが、体力の衰えとともに、無理がきかなくなってきて、安全第一、という考え方に切り替えてきたわけです。
特にバリエーションルートでは、判断の遅れによって致命的なリスクが発生しますから、そうしたルートの登攀も含めて、長く山登りを続けるためには、撤退をする勇気も重要なファクターということかもしれません。
天候が回復するまで天幕や山小屋にこもって待機することを、私たちは「沈殿」といっておりましたが、若いころは唾棄すべき言葉のように感じていたものの、山の先輩たちがそうした行動も含めて楽しんでいる姿を、今は本当に理解できるようになりました。

がむしゃらに突き進む体力がなくなってきてからは、むしろ技術面で補うことを考えるようにしました。
一番わかりやすい例はロープワークや確保システムです。
以前、近郊の岩登りゲレンデに出かけた折、山岳会の新人研修と思しき団体がいて、その場で8の字結びやブーリン結びやインクノットなどを教えていた光景に接してちょっと驚きました。
こんなことは家で炬燵に入りながらでも自分で練習できるもの。
クライミングをしようと考えている人が、そんな基礎的なことすら自分で学ぼうとしないのかと、危惧を抱いたのです。
こうした基礎的なところを予め押さえたうえで、いかにそれを現場で効率的に生かすかについて実地で指導を受ける、というのは、山に限らず何事においても基本となるのではないでしょうか。
山の先輩に特に厳しく指導されたのは、各ピッチの確保点で、いかに安全かつ効率的に確保体制をとるか、ということです。
セルフビレイを取って確保体制に入るという作業は、各ピッチの確保点で必要となりますから、この作業で仮に5分間のもたつきによる遅れが発生した場合、10ピッチのルートであれば単純に50分のロスが生じます。そしてそれは、山においては致命的となる日没時間切れのリスクを招きよせることに直結してしまう。
ゆえに、もたついていると容赦ない怒号がとんだものでした。
山における先輩たちの危機管理能力は誠に素晴らしいもので、危険を察知する能力もケモノなみ。
そうした事態を察知すると、躊躇することなく撤退する判断力も瞠目すべきものでありました。

今年の夏山も、各地で多くの遭難事故が発生しています。
もちろん悪天候という要因も無視できませんが、山を登る際に必須とされる危機管理能力の点で、やはり疑問を感じずにはいられません。
それと、山の装備、殊に雨具やウェアの劇的な進歩も、ある意味では中高年登山者の遭難事例に拍車をかけている可能性もあります。
私が山に登り始めたころのカッパは、ゴム引きで蒸れる上に重くて非常に不快なシロモノでした。
濡れても冷たくならないようなウールの下着やシャツなどは高価で、社会に出たばかりの私には高値の花。
濡れた綿のシャツで震えながら、天幕の中で風雨の夜を明かした時のつらさを今でも時折思い出します。
そんな装備でしたから、いざというときには素早く安全地帯に逃げ込む技術と経験が必要不可欠だったのでしょう。

装備がよくなった分だけ無理がきくようになり、それが遭難につながっているとすれば皮肉な話です。
山登りは、なんといっても経験や場数がものをいうスポーツです。
私もまだまだ駆け出しの山屋ですし、無気力感が忍び寄ってくるようになった年頃でもありますから、一層の用心が必要だなと、改めて思っている次第です。

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ぼんぼちぼちぼち

急に秋になったり豪雨といい なんだかおかしい天候が続いて やすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2014-09-13 14:40) 

伊閣蝶

ぼんぼちぼちぼちさん、こんにちは。
今日は久しぶりに爽やかな晴天になりましたが、仰る通り、もう秋の気配が濃厚です。
本当におかしなお天気が続きますね。
by 伊閣蝶 (2014-09-13 16:29) 

tochimochi

山に打ち込んでいたのは多分同時期でしょうから、仰る事は頷けることばかりです。
ただ私の場合はそれほどハードな山行をしていたわけではないので、先輩の行動にも格別の思いはありませんでしたが・・・。
>出勤するのも億劫になってしまいます
これも同感です。特に長距離通勤は身に沁みるこの頃です。

by tochimochi (2014-09-13 22:01) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
きっと同じ頃に、精力的な山行を重ねていたものと思います。
同じようなご経験をなさっておられることと拝察致します。
私の山の先輩の中には、とてつもない人が結構たくさんいて、重荷を背負っての懸垂下降などで抜重する方法などを聴いて感動したりました。

長距離通勤、本当に大変なことと思います。
私も1時間半くらいかかってしまうので、毎朝が憂鬱です。混んでいますしね。
by 伊閣蝶 (2014-09-14 00:09) 

夏炉冬扇

ですね。
しぜんのながれにまかせましょう。
by 夏炉冬扇 (2014-09-14 18:50) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
はい、やはり自然の流れに任せるのが一番です。
by 伊閣蝶 (2014-09-14 23:10) 

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