SSブログ

小説家、丸谷才一さんが亡くなりました [日記]


享年87歳。
心不全でのご逝去とのことですが、昨年くらいから体調が芳しくなかったそうです。
昨年の7月、同級生には「お別れの手紙」を出しておられたとのこと。

死去の丸谷さん、同級生に別れの手紙
 訃報を聞いて、丸谷さんの母校の同市立朝暘第一小学校の本間立(りゅう)校長は、「児童ががっかりするだろう」と声を落とした。丸谷さんの寄付で購入した本を同校の図書館に並べた「丸谷才一文庫」は、同校の誇りとして児童に愛されている。

 昨年、文化勲章を受章した時に児童が手紙を送ったところ、「ぜひ図書館に行ってみたい」と直筆の返事が来た。そのコピーは図書館に飾ってある。本間校長は「週明けの朝礼で、悲しい報告をしなければならない」と話した。


「笹まくら」「たった一人の反乱」「後鳥羽院」「裏声で歌へ君が代」など、寡作ながら数々の完成度の高い作品を世に問われてきました。
「日本語のために」「文章読本」「桜もさよならも日本語」など、日本語の文化を題材にした優れた評論やエッセイもたくさん出されています。

私は中でも「文章読本」が大好きで、座右の書の一つでもありました。
深い知識、豊富な読書量に裏付けられた素晴らしく重厚な「教本」であり、日本語というものがこれほどまでに力強く美しい言語であったことを再認識させられます。
特に、大岡昇平の「野火」一本で論を展開した「第7章 文体とレトリック」の圧倒的な力技には瞠目するばかりでした。

87歳というお年を鑑みれば、これもまたやむを得ないこととは存じますが、やはり誠に残念としか申し上げようもありません。本当にショックです。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。






nice!(18)  コメント(12)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 18

コメント 12

のら人

>深い知識、豊富な読書量に裏付けられた素晴らしく重厚な「教本」
凄い教本なのでしょうね。 一度読んでみたいです。 ^^
日本語の力強さと美しさ ・・・ 現代では忘れられている事、沢山「本」に詰まっているのでしょう。
by のら人 (2012-10-14 13:29) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
この「文章読本」は、本当に凄い本だとと思います。
文章読本は、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、中村真一郎といった面々も出版していますが、これらのものとは全く別格(谷崎本、中村本はそれでもかなり示唆に富んでいますが)。
ご一読を力強くお勧めします。
by 伊閣蝶 (2012-10-14 17:14) 

hirochiki

「文章読本」が伊閣蝶さんの座右の書の一冊であったとのこと
私も、その本を読んで日本語の美しさに触れてみたいです。
小学生の皆さんも、深く悲しまれることでしょうね。
この記事を読ませていただいて、私は学生時代のことを思い出しました。
高校生時代、夏休み前まで私の隣の席に座っていた友だちが
夏休みが終わりに近づいた頃に、突然心不全で亡くなりました。
お母様の体調が芳しくなく、彼女はいつも家事を手伝っていたそうです。
読書が大変好きな子だったので、その後、彼女の名前をつけた「〇〇ちゃん文庫」というコーナーが学校の図書館に設けられました。
丸谷才一さんのご冥福を心からお祈りいたします。
by hirochiki (2012-10-14 17:32) 

tochimochi

丸谷才一さんはお名前を存じ上げているだけですが、やはり惜しい人が亡くなりましたね。
>深い知識、豊富な読書量に裏付けられた素晴らしく重厚な「教本」
「文章読本」によって日本語の素晴らしさを再認識されたとのことですが、私も触れて見たいと思ってしまいました。

by tochimochi (2012-10-14 20:22) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんばんは。
「文章読本」、名著だと思います。内容も大変示唆に富んでいるのみならず、引用文献も、王朝文学から幸徳秋水までそれこそ多岐に渡り、原典に当たってみたい誘惑かられるくらいです。
ところで、高校時代の同級生のお話。
何とも悲しい思い出ですね。
家事もなさっていたとのことですから、余程心労がたたったのでしょうか。
でも、お名前を冠した文庫コーナーが学校の図書館に残されているとの下りは、胸に沁みました。
皆さんのお心に、ずっとその方の思い出が残されているのだなと、温かな気持ちにさせられました。
by 伊閣蝶 (2012-10-14 22:03) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
87歳というご高齢を鑑みれば、残念ではありますが致し方ないことなのかもしれません。
でも、やはり惜しいなというのが正直な感想です。
「文章読本」、ご一読の価値は絶対にあると確信します。
よろしければ是非!
by 伊閣蝶 (2012-10-14 22:05) 

夏炉冬扇

こんばんは。
よく読みました、この人の。
笹まくらはその中でも一番好きで。何度も読みました。
素晴らしい作家さんだった。
by 夏炉冬扇 (2012-10-14 22:20) 

ねじまき鳥

丸谷さんはファンでした。
サイン本も持っています。
惜しい人を亡くしました。

by ねじまき鳥 (2012-10-14 23:28) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
夏炉冬扇さんも丸谷さんの小説をたくさんお読みになっておられるのですね。
「笹まくら」実に凄い小説でした。私も何度も読み返しています。
あの時間的な跳躍が殊に素晴らしい!と思います。

by 伊閣蝶 (2012-10-15 21:56) 

伊閣蝶

ねじまき鳥さん、こんばんは。
丸谷さんのサイン本をお持ちですか!
これは羨ましい限りです。
私も、一度だけお会いする機会があったのですが、予定外のことでしたので本を持ち合わせておらず、残念なことをしました。
惜しい!本当に惜しい方を亡くしました。
by 伊閣蝶 (2012-10-15 21:59) 

Cecilia

お恥ずかしながらあまり読んでいませんが高校3年生の時の現代文の授業で読んだ記憶があります。かなり印象に残る文章だったように思うのですが題名を忘れました。
ご紹介のものの中では「たった一人の反乱」が心惹かれるタイトルです。
これを機会に読んでみようと思います。
by Cecilia (2012-10-16 08:15) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんばんは。
かなり印象に残る文章、仰る通りだと思います。
丸谷さんは、書くもの書く土壌に応じて自在に文体をコントロールしてこられましたから。
「たった一人の反乱」、凄い作品ですよ。是非ともお読み下さい。
力強くお勧めします。
by 伊閣蝶 (2012-10-16 22:40) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0