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スヴェトラーノフのチャイコフスキー交響曲全集(DVD) [音楽]

今日も良い天気になりました。
お昼の日比谷公園は相変わらずの人出です。
タイサンボクの花も、だいぶ下の方で蕾が膨らんできていますから、来週あたりは手が触れられる辺りであの立派な花に出会えるかもしれません。
ただ、天気は今夜から下り坂で、今はもう雨になっています。
どうやら明日から梅雨入りとなりそうですね。

ここのところ音楽のことをほとんど取り上げておらず、文字通りの「羊頭狗肉」状況となっておりますが、実際、近頃どうも周辺がワサワサして落ち着かず、ゆっくり音楽を聴くことができなくなっています。
今月から来月にかけて、主に仕事の関係で落ち着かない日々が続くものと思われ、ちょっとうんざりしているというのが本音でしょうか。

そんな中でも先週末は、ちょっとした時間を見つけて、エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立交響楽団によるチャイコフスキー交響曲全集のDVDを観賞しました。
このDVDボックスは、残念ながら現在は売り切れ状態となっており、スヴェトラーノフによるチャイコフスキーの交響曲の解説がカップリングされたマンフレッド交響曲の分売DVDだけがかろうじて入手可能となっているようです。



スヴェトラーノフは、ロジェストヴェンスキーやフェドセーエフと並ぶ、いわゆるロシアの「爆演系」指揮者の一人として有名ですが、ドラマティックで色彩豊かなチャイコフスキーの曲の演奏において、その実力を遺憾なく発揮している方だと私は思っています。
以前にも「チャイコフスキー交響曲第一番」や「マンフレッド交響曲」でそのことに触れましたが、爆演というのは、畢竟、私たちのような素人音楽愛好家を手っ取り早く感動に導く有効な表現手法の一つということができるのではないでしょうか。

このDVDにおけるスヴェトラーノフの指揮ぶり。
右手を振りかざして、その大きな体躯から溢れんばかりのパワーを放出し、金管を咆哮させ打楽器を強烈に打ちならし、弦を分厚く響かせる。地響きと唸り声を上げんばかりの演奏をソヴィエト国立交響楽団から引き出しています。
チャイコフスキーの交響曲の演奏はこうあるべきという確信のもとに、オケを完全にコントロールしているという感じがしますね。
しかし、決して単なる豪快さだけで終わっているのではなく、その演奏がすっきりと聴き手に伝わってくる楷書的な正確さも備えています。
つまりリズム感が抜群に素晴らしいのですね。だから演奏に全く破綻がないのです(当たり前のことですが)。
スヴェトラーノフは、演奏効果の上で必要と認識すれば、楽譜に書いていなくても例えば打楽器の一打などを躊躇なく付け加えます。
また、ロシア音楽の特徴ともいうべき哀愁を込めたスラブ的なメロディを、これでもかというほど美しく歌わせる。
本当に、オケの歌わせ方がなんてうまいのだろうかとため息が出てしまいます。

それから、あまり聴く機会のない第2番(小ロシア)や第3番(ポーランド)が入っているというのも魅力的。
スヴェトラーノフは、ロシアの作曲家の手による交響曲の全曲演奏を成し遂げたいという想いを持っていた(残念ながら道半ばで亡くなりましたが)とのことですから、これも蓋し当然な態度というべきなのでしょうが。

一つ残念なのは、音声がモノラル録音であるという点です。
演奏会場全体を揺るがす豪快な演奏が彼の特徴なだけにこの点は実に口惜しい限り。
5.1chサラウンドとまではいいませんが、せっかくのPCM録音なのですからステレオで録音しておいてほしかったなと思います。
しかし、そうであったとしても、こうしてチャイコフスキーの全交響曲を画像入りで観賞できることは誠に素晴らしいことでしょう。
できれば再販を検討してほしいところです。

それでも、スヴェトラーノフによるチャイコフスキーの交響曲解説がカップリングされているこの分売DVDが入手できるのはありがたいことではないでしょうか。
この解説の中でスヴェトラーノフは、「チャイコフスキーの交響曲というと、どうしても後期の三曲にスポットが当たってしまうけれども、前期の三曲が駄作だということでは全くなく、それぞれに『正に天才による仕事』といういうべき曲である。その魅力を引き出すことが指揮者の役割」というような主旨のことを語っていますが、正にその通りだと思います。
前期の三曲の中では、第1番「冬の日の幻想」が比較的演奏の機会に恵まれていますが、第2番、第3番はさっぱりです。
殊に第3番の終楽章における長大なフーガと華麗なコーダは聴きものだと思うのですが、如何でしょうか?
その意味でも、こうした解説を伴う実力派指揮者によるチャイコフスキー交響曲全集のDVDの存在は誠に貴重なものということができましょう。

そうそう、余談ですが、あのスヴェトラーノフのトレードマークともいうべき、赤い扇風機もちゃんと映っていました。

因みに、スヴェトラーノフは手兵のソヴィエト(ロシア)国立交響楽団を率いての来日公演のほか、NHK交響楽団の客演演奏も数多くこなしていますが、とてもN響とは思えないダイナミックで重量感あふれる演奏を引き出し、あまりのことに耳を疑った経験があります。
このライブ録音の音源や映像はきっと存在するはずなので、何とかDVDで発売してくれないものかと切望してやみません。

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hirochiki

こちらは、とうとう梅雨入りしてしまいました。
これからの一ヶ月間は仕事も含めちょっと辛い時期が続きますが、何とか切り抜けていきたいと思います。
伊閣蝶さんもお仕事が大変なようなので、お休みの日にはお好きな音楽を聴かれたりお出かけをされたりして少しはリラックスできるといいですね。
私も、スヴェトラーノフさんの素晴らしい指揮とそれによって導かれるオケの演奏を聴いてみたいです。
じめじめとしたこの時期に、さわやかな気持ちになれそうですね。
by hirochiki (2012-06-09 05:53) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
御地はとうとう梅雨入りですか。
こちらは梅雨入りのような雨になっていますが、月曜日にいったん晴れるそうですし、この雨は梅雨前線の影響ではないようですので、どうやら来週の始めに梅雨入りとなりそうです。
これから一ヶ月間、お仕事などで大変な時期をお迎えとのこと。
どうかくれぐれもご無理をなさいませんようにお気をつけ下さいませ。
今日は久しぶりにゆっくりできそうなので、これから洗濯などをして、午後は音楽を聴こうと楽しみしています。
スヴェトラーノフ指揮のCDやDVDは何枚か発売されていますので、もしも機会がございましたら一度お聴き下さい。
きっと元気一杯に充填できると思いますよ\(^o^)/
by 伊閣蝶 (2012-06-09 10:31) 

のら人

クラッシックは良く分かりませんが、30年前位でしょうか、フックドオンクラッシックは良く聞いていました。 軽いポップスを聴く乗りでした。^^;
日比谷公園はノンビリ歩いてみたいですね。
by のら人 (2012-06-09 21:13) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
フックト・オン・クラシックス、懐かしいですねえ。
確か、81年くらいに全英ヒットチャートの一位をとったことがあったような。
日比谷公園、今の時期は子供たちで一杯ですが、以外にゆっくりできると思います。
私の手軽なストレス解消手段です(*^_^*)

by 伊閣蝶 (2012-06-09 21:57) 

Cecilia

「爆演系」ですか!どんな演奏なのだろうと気になってしまいました。

>スヴェトラーノフのトレードマークともいうべき、赤い扇風機

スヴェトラーノフを知らないので赤い扇風機もわかりません。
ちょっと調べてみようと思います。

by Cecilia (2012-06-22 13:46) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
「爆演系」とは、うーん、何と申し上げれば一番適切かなやましいところですが、例えばチャイコフスキーやショスタコーヴィチといったロシア系の色彩豊かでドラマティックな作品を、オーケストラをあらん限りのパワーで鳴らしながら演奏する、というような感じでしょうか。
ロジェストヴェンスキーとかスヴェトラーノフの演奏をお聴きになると、なるほどとご納得がいくかもしれません。
ところでスヴェトラーノフの赤い扇風機、あのダイナミックな指揮ぶりからしても想像がつくのですが、大変な暑がりのようで、扇風機を指揮台において、その熱をさましているのです。
この赤い扇風機が大のお気に入りのようで、ほかにもっと音が静かで高性能な扇風機があるのに、これを愛用していたとのことでした。
by 伊閣蝶 (2012-06-23 12:35) 

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