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腕時計(タグ・ホイヤー)の修理について [日記]

今朝も起きぬけはかなりの冷え込みでしたが、お昼くらいから陽射がたっぷり降り注いで暖かくなってきました。
しかし、西の方からお天気はだんだん崩れてきているようで、週末は雨になりそうですね。

使っていた時計が電池切れで止まってしまいましたので、お昼休みを利用して、予めネットで調べておいた時計修理専門店に出向きました。
時計はタグ・ホイヤーの「FORMULA1」で、2008年のロンドン出張の折に買ってきたものです。
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何と、そこで例のリーマン・ショックに立ち会うという劇的な経験をし、そんなこともあって、記念にとばかりに清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入したのでした(もちろん免税店で)。
当時はポンドも今ほど安くはなかったので、十年に一度くらいの贅沢という感じです。

あれから三年ですから、電池が切れてもおかしくはないなと思い、軽い感じで電池交換をお願いしたところ、

「お客さん、失礼ですが汗っかきですか?」

と図星をつかれてしまいました。

「はあ、確かにかなりの汗っかきですが」
「購入して三年ということですが、ケースのところどころに錆が浮いていて、パッキンもダメになっていますよ。この製品、200m防水ということになっているようですが、今は全く防水性能はありません」

しかも、針が動かなくなったのは電池切れというよりも、錆の侵入によるメカの故障が原因なのだそうです。水晶発振子はちゃんと反応していて問題なしとのことでしたから。

「ダイビングのときに着けていたりしたのですか?」
「いや、全く普通に腕に巻いていただけで、手を洗ったときに水がかかるくらいのことはあったと思いますが、積極的に水中で使ったことはありません」
「そういう使い方なのに三年間でこんな状況とはひどい話ですね。まあ、海外ブランドではよくある話ですが」

時計の裏ぶたを外して、実際に中身を見せながらの説明なので、これは納得せざるを得ませんでした。

当初、電池の交換だけ、というつもりで、その際の料金は「2000円+消費税」とのことでしたが、それだけでは使い物になりそうもありません。

「部品交換も必要になるので、メーカーに出した方が確実かもしれませんね」
「メーカーに出せば直るということでしょうか?」
「さあ、それはタグ・ホイヤーに聞いてみるしかないと思いますが、直ったとしても同じような使い方をすれば、また三年くらいでこういうことになると思いますよ」

実は、ここに来る前に、ある家電量販店の時計サービスカウンターに立ち寄ったのですが、「メーカー対応となるので2~3週間、料金は電池交換だけで6000円」といわれていました。
以前ネットでググったとき、そういう状況でメーカーに出した場合、分解清掃・部品交換などが必要で5~6万円くらいかかるといわれ、そんなにかかるのならキャンセルしたいというと、何もしていないのにキャンセル料をとられたという話が載っていたことを思い出したので、もちろん依頼はしなかったわけです。
ただ、時計の修理は、依頼された段階で分解し中身を診断するわけですから、修理の前に一定の手間はかかっており、その分の手間賃を要求されるのは、ある意味当然のことだとは思いますが、セイコーやシチズンのような国産の時計の場合そうした対応(キャンセル料の請求)はしないのだそうです。
それ以前に、もしも普通の使い方でパッキンが老化したり水漏れがあったりしたのであれば、むしろメーカーとしての矜持もあって、場合によっては無料で修理することすらあったとのこと。

「時計というものに対する姿勢の問題だと思いますね」

というお言葉に、世界屈指の性能を誇る時計を生み出してきた日本の時計職人の誇りが感じられました。
聴けば腕時計のクオーツムーヴメントはセイコーが開発したもの(1969年にアストロンを製作)で、海外メーカーは技術的に数十年遅れているのだそうです。あまりに技術的にお粗末でいろいろな問題が起こったため、セイコーはその技術の特許を公開し、これによって安価で高性能で安全な時計を量産することが可能となったわけですね。
従って、性能本位で選ぶのであれば国産に限る、アフターケアも段違い、というお話でした。
EU系ブランドは確かにデザインが優れているし、何といっても価格も含めた付加価値が高いので人気だが、それは時計本来の性能とは無関係、という点も、なるほどなあと思います。

ということは要するに、私はタグ・ホイヤーというブランドに目がくらんで、まんまとカモにされたということなのでしょうか(たまたまハズレを引いてしまった、ということもありそうですが)。
女性に大変人気の高級時計である●ル○リなどは、ブレスレットは言うに及ばす、なんと本来であれば金属プレスと削り出しで成形するケースのパーツまで蝋などでの接着を用いているとのこと。
これではすぐにバラバラになってしまいそうですが、実際にそうした修理は枚挙のいとまがないそうです。

さて、それでも一応はこれまで使ってきた時計ですから、何とか動くように修理をお願いできませんかと頼むと、タグ・ホイヤーの場合、部品の入手が難しいのでと渋られましたが、最後は引き受けて頂けました。
価格は23000円+消費税、うまく修理ができなければ代金はいらない、もちろん前金もなし、とのこと。

「直せなかったのにお金を頂くわけにはいきませんからね」

この時計修理店、こじんまりとした事務所の中で、70歳を超えた男性がお二人で運営しておられましたが、50年を超えるその道の経験に裏打ちされた自信に満ちたお言葉を頂き、すっかりいい気持になったのでした。
修理には三週間くらいかかるそうですが、楽しみに待ちたいと思います。

そうそう、最後にお店のURLを掲載します。
なかなか面白いサイトですよ。

あいあいショップ

いずれにしても、こうしたブランド時計の宣伝文句によくある「一生もの」という言葉は、2年に一度くらいは分解清掃などのオーバーホールをして、水にぬらすようなことをせず、衝撃も与えず大切に使い続けたらの話です。
そういう触れ込みの有名EUブランドの時計を買っても、そのまま何の手入れもしなければ数年でダメになる可能性があるということだけは、きちんと認識しておくべきだなと、改めて痛感しました。
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hirochiki

リーマンショックから三年が経過したのですね。
日本の時計の技術はかなり進んでいると聞いたことはありますが、
海外がそこまで遅れているとは知りませんでした。
この素敵な腕時計は、是非よみがえってもらいたいですね。
こういった時計店は、うちの近くにもあります。
このおじいさんたちのお言葉は、まさに「実績は財なり、信頼の基なり」ということのなのでしょうね。
by hirochiki (2011-11-18 06:27) 

Cecilia

大変興味深く拝見させていただけました。
私は高校入学の時に祖母に腕時計を買ってもらって以来、高価な腕時計とは無縁です。祖母に買ってもらったものも高校生が使う平均的なものでしたが。
ブランドの時計を買う場合、ファッション性と耐久性を考えて購入することが多いと思います。伊閣蝶さんならファッション性よりも耐久性を考えてご購入されたであろうと想像します。それが3年でこのようなことになるとは残念ですね。
それにしても日本の時計の技術を見直しました。
夏に夫に頼まれてビッグカメラの中でバンド交換と電池交換をしてもらいましたが、担当してくださった高齢の職人さん(どうも修理専門の人のようでした。)の対応がとてもよく、しかも丁寧な仕事で感心させられました。ビッグカメラだったのでそういう職人さんはいないと思い込んでいたのですが。
by Cecilia (2011-11-18 09:03) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
そうなんですね、リーマンショックからもう三年。
そして、またまたこのような金融不安。結局、世の中に無用なお金が出回りすぎているのではないか、という気がして仕方がありません。
本当の意味での時計職人は、日本でももう数が少なくなってきているのだそうです。
それでもまだ日本の時計はデザインやブランド名に寄りかかっていないので、かろうじて高い技術を維持している、というところでしょうか。
「実績は財なり、信頼の基なり」良いお言葉ですね。
私がお願いした時計職人の方も、ある意味「偏屈」でしたが、人間的な魅力にあふれた方でした。
by 伊閣蝶 (2011-11-18 12:11) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
私が初めてした腕時計も、高校入学のときに祖父から買ってもらったシチズンの時計で、これは本当に長く愛用していました。
今回のタグ・ホイヤーは、もちろん耐久性を考えて買ったので、全く意外な結果に、実物を見せられても俄かには信じられませんでした。高い授業料ですが、日本の時計技術の高さを改めて再確認し、腕時計の使い方をちゃんと考えるという意味からは、これはこれでよかったのかなと思うことにしました(悔しいですけれども)。
ところで、ビックカメラの時計修理窓口にそのようなベテランの方がおられるとは驚きました。
実は、私もビックカメラに持ち込んだのですが、やはりいわゆるブランド物はいろいろと手続きが面倒なようで、大変気の毒そうに「メーカー対応になる」ことを説明してくれました。
結果はともかく、対応は誠実だと感じたところです。
by 伊閣蝶 (2011-11-18 12:18) 

夏炉冬扇

こんばんは。
腕時計はリタイヤと共にお蔵入り。
今は万歩計で見ています。
by 夏炉冬扇 (2011-11-18 18:21) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
腕時計と無縁の生活。羨ましいなあと、思います。
今の万歩計は時刻も知ることができるのですね!
by 伊閣蝶 (2011-11-18 18:36) 

don

興味深く拝見しました。
こんどはSEIKOの時計を買おうかなあ。
ぼくはダイエーの閉店セールで、オメガのシーマスター
を格安で購入したのですが、機械式なので5年に1度は
3万円くらいかけて、オーバーホールしています。
by don (2011-11-20 15:46) 

伊閣蝶

donさん、こんばんは。
私も、今度買う時はセイコーかシチズンにしようと思っています。
ところで、シーマスターをお持ちですか!
五年に一度、きちんとオーバーホールをしておられるのであれば、全く問題はないと思います。
ここまで大切にしてもらえたのなら、きっと末永く、donさんの腕で時を刻んでいくことでしょうね。
by 伊閣蝶 (2011-11-20 22:58) 

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