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Wynton Kelly「Last Trio Session」 [音楽]

暑くなってきました。
bara0519.jpgでも、空いっぱいの青空はやっぱり気持ちがいい!
それに、湿度はそれほど高くないので、爽やかですしね。

日比谷公園のバラも今が絶好調です。
何度かこのブログでも取り上げたシャルル・ド・ゴールも大輪の花を咲かせていました。
その上にちょこんと乗っている蕾が何とも可愛らしくて、ケータイのカメラで撮影した次第です。

さて、標題のCDですが、これまたただの蚤助さんのブログ記事に触発されて聴いてみたところです。

#349: 喫煙室への招待(4)

このアルバムは1968年のスタジオセッションですが、なんとウィントン・ケリーは、それからわずか3年後の1971年4月に夭逝してしまいます(享年39歳)。
ベースのポール・チェンバースも1969年の1月に、これも33歳の若さで亡くなってしまったこともあり、題名はそれを反映して「Last Trio Session」という題名が付けられたのだそうです。

ウィントン・ケリーのピアノ演奏は、明確なスタッカートタッチによる均等な8分音符のラインで軽やかに弾きこなすことで知られていて、蚤助さんも書かれているように「ころがるような」ご機嫌タッチが魅力でした。
これは、彼がピアノだけではなくベースの勉強もしてきたという来歴もあってのことなのでしょうね。

50年代後半から60年代半ばまでが、正にその絶頂期で、特にマイルス・デイヴィスとのクインテットのメンバーであった頃(1959~63年)は、マイルスからの信望も極めて厚かったとのこと(「Kind of Blue」などすばらしいアルバムがあります)。
その後も「It's All Right! 」のような素敵なアルバムを出しています。

その意味からすれば、この「Last Trio Session」の演奏は、何というか一種の「老境に入った」ような印象を受けてしまうようです。
溌剌としたケリーの演奏にスウィングしていた人たちからすれば、「見る影もない」というほどの寂しさを感じてしまうのでしょう。

収録曲は以下の通り。
  1. When Love Slips Away
  2. Castilian Waltz (Take 12)
  3. Say A Little Prayer For Me
  4. Kelly's Blues
  5. Watch What Happens
  6. House Of Cards
  7. Light My Fire
  8. Castilian Waltz (Take 1)
  9. Yesterday

親しみやすい曲(ドアーズの「ハートに火をつけて」やビートルズの「Yesterday」など)がたくさん含まれていて、聴きながらついついスウィングしたくなるような演奏です。

しかし、2と8の「Castilian Waltz」には、何だか心が森閑とする想いがしました。
特にテイク12である2の方はあらゆる夾雑物を取り除いた静謐な印象さえ受けます。
テイク1である8と聴き比べると、さらにその感が強まるような気がしますね。
蚤助さんはこれを評してウイントン・ケリーの「白鳥の歌」と仰いましたが、正に宜なるかな、というところです。

それから「Kelly's Blues」。
これもたまらない演奏でした。

様々な感想はありましょうし、このCDがケリーのベストか、と問われれば首をひねる人も多かろうと思われます。
でも、この何と云えぬ滋味に溢れた寂寞感は何物にも代えがたい安らぎを与えてくれます。
それはもしかすると、聴いている私などが既に老境に差し掛かっている故のことなのかもしれませんが。

そして、最後の「Yesterday」の調べに身を委ねていると、唐突な感じで、フッと演奏が終わります。
その終わり方にも、感慨深いものがありました。
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コメント 4

hirochiki

気温が高くても湿気が少ないと、体が楽です。
日比谷公園の薔薇は、蕾は色が濃いのに開花すると淡いピンク色になるのですね。
「Last Trio Session」は、この季節にぴったりのアルバムのようですね。
唐突な感じでふっと終わる「Yesterday」も聞いてみたいです♪
by hirochiki (2011-05-20 05:49) 

伊閣蝶

hirochikiさん、おはようございます。
今日も良い天気になりましたが、さらに気温が上がりそうです。
シャルル・ド・ゴール、あの淡いムラサキ色が何とも素敵ですが、仰る通り、莟のときには色が濃くて、これがまた興味深いところです。
ウィントン・ケリー、夭折したのが大変惜しまれますが、こうして素敵なアルバムを残してくれたことはありがたいなと思いました。
Yesterday、しみじみと心に響く演奏でした。
もしも、機会がございましたら、お聴きになって下さい。
by 伊閣蝶 (2011-05-20 08:00) 

ただの蚤助

小生のブログまで紹介していただいて光栄です。
絶頂期のケリーさんは、調子に乗ると手がつけられなくほど熱いプレイをするピアニストでした。
ウエス・モンゴメリーとの共演ライブは両者とも神がかり的です。
どちらも若死にしましたが、その才能を神に愛され過ぎてしまったのかもしれません…
by ただの蚤助 (2011-05-21 09:02) 

伊閣蝶

ただの蚤助さん、こんにちは。
ジャズ・ギターの礎を築いた神様のようなウエス・モンゴメリーとの共演ライブ、これがどれほどすごいものか、ぞくぞくするような期待感が湧きおこります。
これは是非とも聴いてみたいと思います。

>どちらも若死にしましたが、その才能を神に愛され過ぎてしまったのかもしれません…

これは何だか頷けてしまうお話ですね。
早逝した稀有の才能に想いを馳せると、やはり無念でなりません。

by 伊閣蝶 (2011-05-23 12:25) 

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