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HeavySoungs [音楽]

義母の一周忌があり、会津まで帰省しました。
神奈川でも、朝から間歇的な強い雨があって、結構難儀をしましたが、週末にもかかわらず、東名高速道路も首都高も東北道も、ほとんど渋滞はなく、なんと、会津まで4時間弱で到着。
制限速度の範囲内で走っていてのことですから、ちょっとびっくりですね。

しかし、爪痕はかなり深く、途中、鏡石のPAに立ち寄ったとき、未だに震災の影響が残っていて、暗然とさせられました。

手洗いは、こんな感じで壁が落ちています。
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従って、ここでの手洗いは仮設です。
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でも、仮設でも結構きちんとした設備で、さすがに高速道路、高速道路会社の対応はすごいなと、感心したところです。

さて、車を運転する間、出来れば気持を落ち着かせてくれる音楽を聴きながら走るのが一番嬉しいところですね。

先日、蚤助さんのブログの記事に触発され、どうしてもこのアルバムを聴いてみたいと思いました。
というわけでネットで購入し、今回、ドキドキしながら聴いたのでした。

エルヴィン・ジョーンズ、リチャード・デイヴィスという、モダンジャズ時代の黒人ドラム、黒人ベースの最高位にランクされるメンバーによる入魂の演奏ですが、素晴らしい!
心地よいリズムとテンポの「Raunchy Rita」で始まり、思わず口ずさんでしまうような、素敵なノリです。
しかし、渋い決まりの音色が胸にずしんずしんと響いてきます。
特に、このSummertimeの凄さ!
度肝を抜かれました。
ちょっと形容の言葉が見つかりません。

Summertime自体は、これまでにそれこそ数限りなく聴いてきました。
サッチモの痺れるような声に魂を奪われ、自分の結婚式の披露宴のBGMに使ったり、とか。

しかし、このSummertimeは、あまりにも私の思い込みからは隔絶していました。
こんなことを申し上げては大変失礼だとは思いますが、ジャズ愛好家の方でも好き嫌いは大きく別れるのではないでしょうか。
ましてや、ガージュウィンをクラシックの作曲家だ、などと思っている人たちにとって、この演奏は正に「赦しがたい」ものと映るのではないかと危惧します。

この演奏は、ジャズだのクラシックだのといった既存のカテゴリを軽々と超越します。
音楽というものでいったい何を表現できるのか。
その表現というひとつの指標に対する、大いなる挑戦が、この演奏の要諦なのではないか、とも思ってしまうのです。

四の五の言いましたが、私はすっかり魂を奪われました。
こんな演奏を聴くことができる幸せをかみしめています。

この演奏がなされた1967年頃、世の中は、いわゆる既存の価値観が大きく見直されるときであったのでありましょう。
あの、ビートルズのアビーロードや、私がロックに目覚めたキングクリムゾンのデビューアルバム「クリムゾンキングの宮殿」などのセンセーショナルなアルバムが矢継ぎ早に世に出た時期でもあったのです。
武満徹さんが、代表作である「ノヴェンバー・ステップス」や「グリーン」を出したのも、ちょうどこの1967年であったことを思えば、いわゆる前衛が、最もはつらつとしていた時期ということも出来ましょう。

この恐るべきSummertimeを聴きながら、その頃の人々の感性の広さと柔軟さに、今更ながらに感じ入っているところです。
前衛は、過去の事績をきちんと評価するところから始まる。
そのことを得心させられた、力溢れるアルバムでした。

ところで最後につまらない風聞を一つ。

ガーシュウィンは、生前、自分が演奏する機会を持つと、自分の作曲した曲を時間の許す限り弾きまくったそうです。
自分の作曲した曲を、とにかくたくさんの人に聴いて欲しいと思ったからに他ならないのでしょうが、そんなある日のこと。
あるサロンの演奏会で、自分の持ち時間のほとんどを自作の曲の演奏で埋め尽くした後、席に戻ったガーシュウィンは、同席した友人に次のように訊きます。

「ああ、僕の曲はこれからも演奏される機会があるんだろうか」

友人は答えます。

「それは僕が保証するよ」

そして一言。

「君が生きている間はね」

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hirochiki

お義母様の一周忌の法要お疲れ様でした。
とても素敵な演奏を聴きながら運転をされたご様子、良かったですね。
しかし、鏡石のPAのお写真を拝見すると
まだまだあの大震災の爪痕がしっかり残っていますね。
この記事を拝見して、あらためて、生きていることはとても素晴らしいことだと思いました。
被災地が復興するまで、私達も共に頑張っていきたいです。

by hirochiki (2011-04-24 16:16) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
先程、一周忌の祭礼が終わりました。
今、家族と近くの親戚とでお茶を飲んでいます。
昨日はひどい雨でしたが、今日は晴れて穏やかな天気になったので、ほっとしています。
何しろ、お墓参りもあるので、雨だったら大変でした。
鏡石PAのこと。
さすがに驚きました。
福島の中通りでもこんな様子なので、浜通の状況は相当ひどいのではないかと、いわきの姉夫婦からいろいろ聞いたところです。
だいぶ落ち着いてきているようですが、子供たちの学校の影響がかなり深刻なようですね。
hirochikiさんのように、離れたところからも温かなエールを送って下さる方がおられることが、被災した人たちにとってどれほど心強いことか。
本当に、涙が出るほど嬉しい思いです。
ありがとうございます。
by 伊閣蝶 (2011-04-24 16:22) 

ただの蚤助

ご指摘の通り、この“Summertime“は好き嫌いが分かれるかもしれません。
何せ、この蚤助でさえ、今までで一番ユニークな演奏だと感じているくらいですから…
どうです、アルバム・ジャケットのように、ヤニ臭い演奏でしょう?(笑)。

by ただの蚤助 (2011-04-24 22:52) 

ムース

ジャズは聴かなくなって久しいです。しかも、ガーシュウィンはどちらかというとクラシックの作曲家と思っている自分であります。

そこまで凄いのかと大変気になります。聴く機会があればと思います。
by ムース (2011-04-25 00:11) 

伊閣蝶

ただの蚤助さん、おはようございます。
コメント、ありがとうございました。
やはり、愛好家の中でも好き嫌いは別れますか。
しかし、リチャード・デイヴィスのベースには痺れましたね。
弓を使ったウッドベースの演奏は、私もときおりライブなどで聴くことがありますが、さすがに確かなテクニックを持っている人たちばかりで感心させられました。
こうしたきちんとした演奏技術の裏付けがあるからこそ、あのような自在な表現が可能となるのでしょう。
そうしたことを勘案しても、リチャード・デイヴィスの演奏は桁違いでした。
ヤニ臭いという表現は、なるほど!と膝を打ちましたが、煙関連で行けば、やはりいぶし銀、というところでしょうか(ジャケットの写真は最高ですね!)。
この演奏を30歳代で成し遂げているところに、更なる感動があります。
by 伊閣蝶 (2011-04-25 09:18) 

伊閣蝶

ムースさん、おはようございます。
コメント、ありがとうございます。
この演奏は本当に圧巻です。
ジャズミュージシャンの音楽テクニックのレベルの高さは、それなりに認識していたつもりですが、ここまで凄いと、正に想像を絶する、というところでしょうか。
もしも機会がございましたら、ご一聴下さい。
by 伊閣蝶 (2011-04-25 09:21) 

Cecilia

私はバーバラ・ヘンドリックスの「サマータイム」が好きです。
http://www.amazon.co.jp/Porgy-and-Bess-Medley-Summertime/dp/B0045SQETO
by Cecilia (2011-05-10 09:49) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
バーバラ・ヘンドリックス、すばらしい歌手ですよね。
トゥーランドットのリューやラ・ボエームのミミなどは蓋し名演というべきでしょう。
サマータイムには、硬軟取り混ぜ、それこそ枚挙のいとまのないほど様々な演奏が存在しますが、これだけ広く愛されているのも、この曲の持つ魅力ゆえのことなのだろうと改めて想った次第です。

by 伊閣蝶 (2011-05-10 12:18) 

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