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花と音楽 [音楽]

今日も暖かな日になりました。
都心では気温が22度まで上がったようです。

しかし、風が少しあったので、気温の割にはさほど暑さは感じませんでした。

春になり、花の話題を何度か取り上げていますが、昼休み出かける日比谷公園で、咲き始めた花たちに出会うのは本当にうれしいものです。

今日もふと気付くと馬酔木の花が咲いていました。
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また、自由の鐘の丘の方に行くと、斜面いっぱいに著莪(しゃが)が咲いていました。
syaga.jpg
これは見事で、思わず見入ってしまったところです。

八重桜も数輪ですが花を咲かせ始めています。
満開までにはあとわずかの期間でしょう。今から楽しみでなりません。

このように花を眺めながら、ふと、花によって癒される心のありようとはどのような性格のものなのだろうかと思ってしまいました。

私はどちらかというと、例えばカサブランカだとかアマリリス、大輪の薔薇のような豪華で派手な花よりも、スミレや蓮華やダイコンソウのように細やかに咲く花の方が好みなのですが、こうした花たちを見ていると、その健気な姿に胸を打たれてしまうのです。
この花たちは、決して人間あたりに愛でられることを目的に咲いているわけではありません。
あくまでも自らの生理に従って営みを続ける中で花を付けているのです。当たり前のことですが。

徒然なるままにそんなことを考えながら、その自然な営みにこそ魅かれているのではないか、と感じました。
種子から芽を出し、呼吸をして大地から滋養を空から光や雨の力を吸収しつつ育ち、生殖によって子孫につながる種子を残して朽ちていく。
その一生にかかわる時間に長短はありますが、草木も虫たちも鳥たちも獣も人間も、皆等しくこのサイクルを回り、生まれて死んでまた生まれてくる。
そう思いながら、そういえば自分は何も咲いた花のみを見てきたわけではない、彼らが小さな若葉を広げ始めたころから、花を散らせてやがて枯れていく姿までを見続けてきたのではなかったか、と思い至ったのです。
それゆえにこそ、その頂点で咲いた花に心を打たれてしまうのではないでしょうか。

これはもしかすると、音楽にも当てはまるのかもしれません。

国内外のアーティストが、今回の震災被災者の心を癒し勇気を持って立ち上がる力を与えようと様々な音楽活動を企画し実践してきて下さったことは、音楽というものの持つ大きな力を信じているからに他ならないのでしょう。
考えてみれば音楽も、命と同じく始まりがあって必ず終わりの来るものです。
永遠に奏で続けられる音楽というものはありません(単なる「音」ならずっと鳴らし続けることはできるかもしれませんが、それでも「永遠」ということはあり得ないでしょう)。
音楽は、例えば巻物のように、最初の出だしから始まって巻末まで行けばそこで終わり、なのです。

昨日、帰宅した後、洗濯を仕掛け、晩御飯の用意をしながら、ティントナー指揮によるブルックナーの交響曲第1番を聴いていました。

この演奏は、この曲の第1稿、即ち、50歳を過ぎて交響曲の作曲を始めたブルックナーが、最初に意識して創り上げた交響曲のそのままの形を残しています。
そこからは、ブルックナーの溢れんばかりの瑞々しい感性が迸り出てきていました。
この曲は、後から改訂を加えられて、どんどんおとなしくなっていくことになりますが、それをティントナーは、交響曲作曲に限りない希望と情熱を注ぎ込んだことであろう若き(?)ブルックナーの想いが込められた当初の姿に再構築しようと試みた、のではないでしょうか。

改めて聴きながら、やはり当然のことでしょうが包丁を握る手が止まってしまい、しばしそのめくるめく展開する若々しくも斬新な和声の共鳴しあう響きに聴き入ってしまいました。
それは、正しく雄々しく流れる大河のような音楽であったのです。
人の一生も、もしかすればこのように生まれやがて逝いていくのかもしれない。
しかし、音楽は、それに命を吹き込む演奏家が存在する限り、必ずまた甦って新たな生命を獲得する。
四季が巡って、また必ず春が私たちのもとに訪れるように、音楽もまた希望に満ちて私たちのもとに喜びを届けてくれる。
だから、曲の終わりは全ての終わりではなく、次なる演奏の始まりでもあるのです。

悲しかったり落ち込んだりしているときに、音楽を聴くことによって心が癒されるのもまた、花を愛でてその不思議な回生の力に感動することと同じく、再び奏でられることが約束された調べの齎す大いなる恩寵によるものであるのかもしれませんね。

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節約王

今晩は。今日は本当に暖かかったですね。事務所内は暑くてひたすら水ばかり飲んでいました。しかしなから外に出るとまだ涼しい風が体を冷やしてくれる感じがとてもここちいいです。さて、私も艶やかな花よりも野に咲く花のほうが好きですね。力強さとかわいらしさとけなげさと・・・・。おっしゃるとおり短い生涯かもしれませんがまた咲いてくれる花は自然の力強さと共に我々に癒しと力を与えてくれますね。音楽も同じ!私もそう思います。時代と共にその時代に合わせて行くことも含め、不変の価値観が色濃く残っているから永遠に語り継がれ、その時代その時代の人々に必要とされ愛され、又、時代に合わせて変化し、かつ、根源の魂は変わらない・・・・・。
私もそのように思います。
by 節約王 (2011-04-15 19:36) 

九子

nice!をふたつも頂戴して有難うございました。m(_ _)m

花も音楽もあんまり知らない無粋な人間ですが(^^;;、今日は「しゃが」の花の話題を二題ブログで拝見しました。さすがにこれでこの花のことは覚えた・・・んじゃないかな?(^^;;
(もう一つはここ。http://bon-bochi.blog.so-net.ne.jp/

年だけは取っておりますが物を知らない人間です。お花の事、音楽の事などなどこれからもご教授下さい。m(_ _)m
by 九子 (2011-04-15 22:42) 

九子

また間違えてしまいました!
伊閣蝶 さん男性なんですね。可愛らしいアイコンにてっきり女性かと・・・。それに長野県出身!信濃の国つながりですよ~。( ^-^)
by 九子 (2011-04-15 22:49) 

伊閣蝶

節約王さん、こんばんは。
今日は本当に暖か、というよりも暑い日になりました。
私も事務所も同じで、情報機器がたくさんあるせいか暑くて叶いませんでした。
仰る通り、外の方が風がある分だけ爽やかです。
節約王さんも野の花の方がお好きとのこと。
野の花に力強さを感ずるのは全く同感ですね。
音楽との共通点も仰る通りです。
私たちは、時間という絶対支配者のもとで、必ず最後は消え去る運命にありますが、人の記憶はずっと語り継がれ、語り継がれる間、その記憶はずっと存在するのではないかと思います。
音楽などの再現芸術は正にその典型で、その音楽に心を打たれてそれを次世代に引継いでいく人が続く限り、時間はその音楽を殺すことは出来ないのではないでしょうか。
演奏されたその瞬間に消え去る運命にありながら、人々の記憶の中に受け継がれていくことによって存在する強さが、きっと人々に力を与えてくれるのでしょうね。
by 伊閣蝶 (2011-04-15 23:30) 

伊閣蝶

九子さん、こんばんは。
nice!及びご丁寧なコメント、ありがとうございました。
著莪つながりでご訪問頂いたとのことで、心より御礼申し上げます。
私もそれほど詳しいわけではありませんので、過分なるお言葉を頂戴し、恐縮している次第です。
ところで私は、アバター(アイコン)とは似ても似つかぬ50代半ばのおっさんです。これは、前にこのブログでも取り上げましたが、名前から似顔絵を描くサービスで作られたイラストです。
余りにも実物とは違いすぎるので、やっぱりまずいかな、などと考えておりますが。
ところで、九子さんも長野県でいらっしゃるのですね。
私は現在は横浜在住ですが、長野県出身で、もちろん今でも郷土愛はずっと持ち続けています。
これからもよろしくお願い申し上げます。
by 伊閣蝶 (2011-04-15 23:38) 

hirochiki

馬酔木というお花の名前は、実は先日知ったばかりです。
著莪は、神秘的な印象を受けます。
おっしゃるように、馬酔木のようなお花を眺めていると
あまりに健気で思わずひとつずつ触れてみたくなりますね。
私も、悲しかった時に聞いた曲をあらためて聞くと
当時のことがよみがえったりしてきます。
音楽も植物も、人の心を癒してくれますね。
すべてのものの終わりは、次なる始まりなのだと私も思います。


by hirochiki (2011-04-16 06:37) 

伊閣蝶

hirochikiさん、おはようございます。
馬酔木は仰る通り、本当に健気な印象の強い可憐な花です。
こうした姿を見ていると、ああ、花たちも精一杯生きているんだなと、『負けられない』気持にさせられます。
それから音楽のこと。
確かに音楽は遠い記憶を呼び覚ます役割も果たしてくれますね。
その音が自分の心の琴線に共振するからなのかもしれません。
終わりが始まりであることは、私たちにとって希望そのものなのであろうと考えているところです。
by 伊閣蝶 (2011-04-16 07:47) 

Cecilia

馬酔木に似た花でドウダンツツジとかサラサドウダンとかありますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%84%E3%82%B8
あ、でも花のつき方が違いますね。
カサブランカや大輪のバラも良いですが、山野草や雑草扱いされている野の花が大好きです。
by Cecilia (2011-04-21 20:33) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
はい、そろそろドウダンツツジも咲き始めましたね。
私の住んでいるマンションの垣根にもドウダンツツジが植えてあるので、とても楽しみです。
Ceciliaさんも、野の花が大好きとのこと。
私も、その季節感とあえかな姿がたまらなく愛おしくてなりません。
by 伊閣蝶 (2011-04-22 12:45) 

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