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フォーレのレクイエム(1893年版)コルボ&ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルによる東京ライブ [音楽]

昨晩は、久しぶりの雨となりました。
ずっと乾燥状態で、風邪やインフルエンザも流行っていたので、この雨は正に「慈雨」だったのかもしれません。
しかし、さすがにこの時期の雨は冷たく、家に帰りつくまでに凍えてしまいそうでした(大げさ)。

今日は一転して晴天。
相変わらずの寒い日になっています。
それでも、やはりお天道様の温もりはありがたいものですね。

昨晩、26日の演奏会(本番)前の最後の練習があり(あとは当日のゲネ・プロのみ)、気持ちを落ち着けるために、帰宅後、フォーレのレクイエムを聴きました。

コルボが手兵のローザンヌ合唱・器楽アンサンブルを率いて、東京オペラシティで演奏したライブ録音のCDです。

2005年2月14日。

奇しくもコルボの71回目の誕生日に当たりました。

コルボは2003年にリンパ腫が見つかり、演奏の第一線から退いて周囲を驚愕と不安に陥れましたが、幸いなことに手術は成功し、その後の静養をによって、2004年11月、スイスにおける復帰公演によって見事に復活を遂げたことは、誠に嬉しい限りでありました。
その直後に行われたこの演奏は、何といいましょうか、単なる音楽の演奏といった次元を遥かに超越する深み・温かさ・清らかさ・安らぎなど、ありったけの心の滋養を与えてくれる至宝のものなのです。

このCDのライナーノートにあるコルボの写真。
左側の頸部に大きな瘤があり、もしかするとこれはリンパ腫の後遺症なのだろうか、などと思ってしまいました。
それにずいぶん歳をとったなという印象があります。

そういえばアバドも、2000年に胃がんに倒れ活動が危ぶまれたことがあり、その復帰後に出た、ベルリン・フィルとのヴェルディのレクイエムやルツェルン祝祭管弦楽団とのマーラーの交響曲第二番は、死の淵から生還した人であればこその生命感あふれる感動的な演奏となっておりましたね。

このコルボによるフォーレのレクイエムも、恐らくはそうした生命力を強く感ずるがゆえに私たちの心を安らぎに満ちた世界へといざなってくれるのでしょう。
もともと、フォーレのレクイエムは清浄無垢な美しさに満ち溢れていますから、益々その感が強くなり、まるで天国に遊んでいるかのような心地にさせられます。

Introitusは少しゆったりしたテンポで進み、Offertoriumは、それに比較すると少し早めのテンポで演奏されます。
透徹した音はSACDの威力も相まって隅々まで響き渡り、改めて各旋律の姿が浮き彫りになって、ああ、こんな対旋律が響いていたんだなと新たな嬉しい発見をしたりしました。
ティンパ二が印象的に鳴っていたり、とか。

そして、大好きなSANCTUS!
ライブ録音ゆえか、最初の頃は少し控えめに聴こえたハープがどんどん存在感を増してきて、あの天上にいざなうかのような分散和音のアルペジオが鳴り響き、やがて「Hosanna in excelsis」に行きつく。
いつ聴いても目頭が熱くなってしまいます。

ところで、私はこの曲を何度か歌っていますが、たった一回だけ「Libera me」でバリトン独唱を担当した経験があります。
思いだすだけで恥ずかしさに身もだえがするほどひどいものでしたが、この10年前の経験が、その後の声楽に対する態度を大きく変えたエポックとなりました。
合唱団の一員として定められたパートの音を拾っている、といった後ろ向きの対応を止め、その曲の全体の響きを作り上げる中で自分はどのようにふるまうべきか、という方向への転換を目指し、コンコーネなどを用いた修練へと発展していったわけです。

そんな経緯もあって、本番を前にして気持ちが高ぶっているときには、この曲を聴き、その初心に帰ろうと思うのでありました。

この東京ライブ、実演を聴いた人の話からは、もう感動のあまり涙があふれてならなかったとか、あまりの崇高な演奏に自分のいる場所すら忘れてしまい演奏終了後の拍手もできなかった、などなど異口同音に言葉にならない感動が伝わってきます。
私は誠に残念なことに、この実演を聴きはぐってしまいました(;_;)
当時は仕事などの関係で心に余裕がなかったのではないかと思いますが、その日、自分が何をしていたのかと日記で確かめると、何と八ヶ岳に登っていたのです。
そのときは冬晴れの誠にすばらしい天気に恵まれたのですが、なんだかんだと言って、やっぱり山の方のプライオリティが高かったのだなと、内心複雑な想いにかられてしまいますね。

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hirochiki

こちらでも、インフルエンザが流行り始めました。
今日は主張で出かけますので、特に注意したいと思います。
コルボさんは、病から無事に復帰され、本当に良かったですね。
人生におけるさまざまな経験は、その人の人柄や音楽にも大きな影響を及ぼすものだと思います。
特に、命にかかわるような病気を克服された方は、なおさらですね。

ところで、胃閣蝶さんは山登りもされるのですね♪
富士山などにも行かれたことはあるのでしょうか。
by hirochiki (2011-01-26 06:25) 

Cecilia

伊閣蝶さんの「Libera me」を是非聴かせていただきたいです。
実は私も「Sanctus」、大好きです。最後の♪Hosanna!Inexcelsis!♪のところ、気持ちが良いでしょうね。
「Pie Jesu」を多重録音で歌ってみたいという気持ちがまた盛り上がりそうです。
by Cecilia (2011-01-26 08:48) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
mhirochikiさんはご出張で、phirochikiさんは遅くまでお打ち合わせと、大変ご多忙な中、コメントをいただきありがとうございます。
インフルエンザにはくれぐれもお気を付け下さい。

>人生におけるさまざまな経験は、その人の人柄や音楽にも大きな影響を及ぼすものだと思います。
>特に、命にかかわるような病気を克服された方は、なおさらですね。

仰る通りです。
病気になった時、治そうと努力するのは人間だけで、他の動物は「なすがまま」だという話を聞いたことがあります。
それだけ人には「生きるための目標」があるということなのかもしれませんね。
私の父も、がんを克服したことによって、また一つ生きる目標ができたように思います。
そしてそれは、傍の人間にも大きな影響を与えるものでもありました。

山登りは、音楽と並ぶ古くからの趣味です。
富士山にも何度か登りました。特に冬富士の厳しさと美しさはたとえようもありませんね。
by 伊閣蝶 (2011-01-26 12:21) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
私の歌った「Libera me」はとても人に聴かせられるようなレベルのシロモノにはありません(^_^;
たまーに自分で聴き返し、二度とこの轍を踏まないようにと自戒するような類のもので。
ところで、Ceciliaさんも「Sanctus」がお好きですか!
「Hosanna in excelsis」に行きつくところの気持ちの良さはたとえようもありませんね。
「Pie Jesu」の多重録音、是非是非お聞かせ下さい。楽しみにお待ちしています。

by 伊閣蝶 (2011-01-26 12:22) 

節約王

こんばんは。今回もとても夢中になって読ませていただきました。大病を克服しての復帰演奏エピソード!感動しました。すばらしい音楽の影には数多くの困難や危機があるものなのですね。それを克服した後の演奏!さぞかし生命力に溢れ、力強く、かつ美しいものなのでしょうね。ぜひ聴いてみたいと思いました。
by 節約王 (2011-01-30 01:31) 

伊閣蝶

節約王さん、こんばんは。
いつも大変温かなコメントを頂戴し、心より感謝申し上げます。
この、コルボによるフォーレのレクイエム、もしも機会がございましたら、是非ともお聴き下さい。
人の心と魂が、如何に音楽によって癒されるものであるかということを、恐らくしみじみとご実感されるものと存じます。
フォーレが、ひたすらに人の心を安らぎに満ちた世界に導くことを目的としてこの曲を創造した意味と得心されることでしょう。
by 伊閣蝶 (2011-01-30 19:53) 

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