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ミュンシュ&パリ管「ボレロ(ラヴェル管弦楽名曲集) 」 [音楽]

さすがに冷え込んできましたね。
大雪の時期ですから当然のことなのでしょうが、一昨日の晩、所用があってまたまた八ヶ岳山麓の実家に帰省した際、実家近辺では雪が降っていました。
翌日は一面の銀世界。
快晴となったので、日向の雪はあらかた消えてしまったのですが、日蔭では残っていて、一部は凍っていました。
昨晩、帰宅すると、横浜でも気温はぐんと冷え込んで、空には三日月がきれいに輝いています。
そして今朝、放射冷却の影響もあるのでしょう、思わず震えが来るほどの寒さとなりました。

慌ただしい帰省でありましたが、帰宅した時間はいつもより早かったので、夕食の準備をしながら、何を聴こうかな、と思案。

何故か無性にラヴェルが聴きたくなって、ミュンシュ最晩年、亡くなるひと月前のパリ管弦楽団との演奏CDを引っ張り出してきました。

パリ管弦楽団は、第二次大戦のフランスでのレジスタンス活動で有名な小説家・政治家であるアンドレ・マルローの肝いりで、1967年に設立(パリ音楽院管弦楽団を発展的に解消し設立)されたオーケストラ。
ゲシュタポに殺されかけた経験を持つだけに、「ベルリン・フィルに匹敵する」オケを作るのだ!とぶち上げたのだとか。
ミュンシュはその初代の音楽監督に就任し、誠に残念なことに、その翌年の1968年、同オケとの演奏旅行中、アメリカのリッチモンドで急逝してしまいます。

先にも書いたとおり、このCDはそのひと月前の演奏の録音であり、ミュンシュはもとより楽団員の意気も極めて軒昂で、圧倒的な音楽を聴かせてくれます。
何よりもその精緻なアンサンブルが見事で、さすがにベルリン・フィルに対抗できる世界的なオーケストラを目指しただけのことはありますね。
(尤も、ミュンシュの後任がカラヤンであったことは、なんだかちょっと皮肉な気がしますが。)

このCD、やはり冒頭の「ボレロ」が白眉です。
ボレロのCDは、それこそ巷に溢れかえるほど販売されていますが、指揮者とオケと演奏が共に「生きている」演奏はなかなかないものです。
規則正しく刻まれたリズムに乗せて、木管から漸次、様々な楽器が入れ替わりつつクレッシェンドしていくという、演奏の構築という観点から実にユニークな音楽であるがゆえに、勢いその演奏も、その構築美とマックスでの高揚感に囚われる嫌いがあるのではないでしょうか。
しかし、この演奏では、あの精緻な演奏を繰り広げるパリ管が、ミュンシュの棒によって中途で爆発的にテンションを上げてしまっているのです。
その恐るべきテンションを保ったままクライマックスを形成していく、正に怒涛のような演奏!というにふさわしいものなのではないでしょうか。
バレンボイムが、同じくパリ管を振ったボレロのCDも持っていますが、これは申し訳のない言い方ですけれども「格が違う」といわざるを得ません。

それから、最後の「亡き王女のためのパバーヌ」。
これもまた何という情感にあふれた温かな演奏であることか。
この曲は、「亡き王女のための」という部分にどうも引きずられてしまう傾向が強いのか、徒に悲しみや寂寞感を漂わせる演奏が多いような気がします。
しかし、パバーヌはもとはといえば舞曲。
悲しみを癒すためには、むしろ温かな包容こそが最もふさわしい。
ラヴェルが、王女の鎮魂のためにパバーヌを用いた想いは、むしろそこにあったのではないか。
そんな気持ちにさせてくれる演奏です。

「ダフニスとクロエ」第2番もものすごい演奏ですし、スペイン狂詩曲もしみじみと心に沁みこんでくるような感動を覚えます。

ここに凝縮された一時間足らずの世界は、それを聴き入るうちに無限の時を感じさせてくれるような愉悦に満ちていました。

今から40年以上も前の演奏が、こうしてデジタルリマスターを施されて甦り、最良の音質で私たちの耳に届く。
全く何という贅沢極まりない喜びでありましょうか。

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hirochiki

雪が降った翌日の凍った道路は危ないので、運転には十分に気をつけて下さいね。
「亡き王女のためのパバーヌ」が舞曲だということは、初めて知りました。
楽曲の背景を理解した上で音楽を聞くと、また違った楽しみ方ができるような気がしますね♪

by hirochiki (2010-12-09 16:03) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんばんは。
本当に、そろそろ雪道の運転に気をつけなければならない時期となりました。
気をつけて事故のないようにしなければと思います。

パヴァーヌは、16世紀頃を機嫌とする行列舞踏のための音楽です。
緩やかな二拍子で、優雅な舞踏曲ですね。
ラヴェルのほかに、フォーレやダウランドにも、これを用いた曲があります。
背景を知るのは音楽を聴く楽しみの一つというのは、全く仰る通りだと思います。
創造者の心にも迫ることができるような気がしますから。
by 伊閣蝶 (2010-12-10 01:30) 

伊閣蝶

「機嫌」ではなく「起源」ですね(^_^;
夜遅くに、ご機嫌で書いたので、間違ったままアップしてしまいました。
by 伊閣蝶 (2010-12-10 13:21) 

hirochiki

ははっ、そんなことは私の場合、多々ありますから(笑)
by hirochiki (2010-12-10 15:15) 

伊閣蝶

うう、温かなお言葉、ありがとうございました。
コメントは、あとで修正、ということが出来ないので、間違えると削除しない限り残ってしまうので、参ってしまいますね。

by 伊閣蝶 (2010-12-11 00:54) 

サンフランシスコ人

「バレンボイムが、同じくパリ管を振ったボレロのCDも持っていますが.....」

2018年11月、バレンボイムがカリフォルニアに来ます..

http://calperformances.org/performances/2018-19/chamber-orchestra/daniel-barenboim-and-the-west-eastern-divan-orchestra.php

Daniel Barenboim and
the West-Eastern
Divan Orchestra
Daniel Barenboim, conductor
November 10, 2018


by サンフランシスコ人 (2018-04-17 07:30) 

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