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モンテヴェルディ、聖母マリアの夕べの祈り(コルボ指揮ローザンヌ器楽アンサンブル) [音楽]

RoseCocktail.jpg日比谷公園に出かけたら、秋のバラが咲いていました。

これはカクテル(コクテール)でしょうか。
きれいな一重咲きが秋の陽射を受けて輝いています。

季節は10月の半ばですから、花の季節はもうあとひと月余り。
それだけに、とても健気に見えて思わず手を差し伸べたくなりますね。

連休中、自宅でちょっと調べ物をしながら、久しぶりに、ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ器楽アンサンブル・声楽アンサンブルによるモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」を聴きました。
版は、1982年の演奏のものです。

コルボ・ローザンヌといえば、1967年版の演奏があまりにも有名で、事実、このモンテヴェルディ生誕400年を記念して発表された演奏は、当時、衝撃にも近い感動を以て世の中に迎えられたと聞きます。
モンテヴェルディの音楽の真価を一般に知らしめたという意味でも、正に記念すべきレコードでありました。

そこから15年の歳月を経て再録された1982年版、コルボは既に、バッハのマタイやヨハネ受難曲、ロ短調ミサなどを世に問い、来日公演においてフォーレのレクイエムの圧倒的な演奏などを繰り広げてきました。
この1982年版で展開される世界は、そうした円熟味を背景に、流麗な上にも荘厳なものとなっていて、私個人としては、やはりこちらの方を採りたくなってしまいます。

もうひとつ、これはやむを得ないことですが、録音技術の進展による違いは明らかでしょう。
殊に、マニフィカトでのバロックトランペットの掛け合いの部分などは、音だけで視覚的な遠近感や深みが感得できるすばらしい演奏です。

静謐な「Ave Maris Stella」の天上的な美しさ。そして、そのアーメンコーラスから「Magnificat」へと鮮やかに転進するところは、何度聴いても、身震いがするほど感動的です。

以前、ガーディナーによるDVD演奏の記事を書きましたが、純粋に音楽として聴くのであれば、コルボのこの演奏の方が上かもしれません。
もちろん、ガーディナーの演奏にはライブという大きな魅力があるので、優劣をつけることなど思いもよりませんが。

そういえば、コルボのスタジオ録音に立ち会った経験について、作曲家の菅野浩和さんが「名指揮者50人(芸術現代社)」に一文を寄せておられますが(そのときは、バッハのヨハネ受難曲の録音だったそうです)、リハーサルもなしにいきなり導入合唱の「Herr!」が歌いだされ、福音史家によるレチタティーヴォを過ぎ、かなり先まで進んでやっとストップがかかる、といったように、コンサートの流れを重視した録音姿勢を基本に据えて実施されたとのこと。
その代わり、少しでも気に入らないところがあれば、5回でも6回でも双方が納得のいくまで繰り返すのだそうです。
コルボの、客観性を重視しつつ完璧を求めつつも、音楽の流れを損なわないように進めるやり方に、深く感じ入った、と菅野さんは書いておられました。
スタジオ録音で、何度繰り返してもうまくいかない時には、音符単位で切り取ってダビングをし、帳尻を合わせる、などいうことが結構頻繁に行われるようですが、こうした「音」の上だけの完璧性は、コルボの求めるところと相いれないものなのでしょう。

彼のスタジオ録音が、流麗な中にも迫真性を失わないのは、そうした姿勢によるところが大きいのかもしれませんね。
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かずっちゃ

秋のバラ、見事に咲いてますねー。
花びらをいっぱいに広げて、秋の日差しを残さず受け止めようとしているようで、思わず応援したくなります(笑)
ワタシのヘッポコ記事に温かいコメントをありがとうございました。
これからもヨロシクお願いします。m(_ _)m
by かずっちゃ (2010-10-13 13:20) 

伊閣蝶

バラというと、春から夏にかけての印象が強いのですが、秋のバラも私は大好きです。冬に向かって一生懸命花を咲かせる姿が何だがいじらしく思えてなりません。
そんな姿を見ていると、ああ、私たちも負けてはいられない、なんて思ってしまいます。

かずっちゃさんのブログの記事、本当に胸に染みました。
心が折れてしまった後輩がいて、「もう十分すぎるほど頑張ったんだから、これ以上無理しなくていいんだ」と言いきかせ、一緒に泣いたときのことを思い出してしまった次第です。

かずっちゃさんの記事にはいつも元気づけられます。
こちらこそこれからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m
by 伊閣蝶 (2010-10-13 17:57) 

aka

かわいいバラ~♪
こんな感じのバラもあるんですね!!

「Ave Maris Stella」是非聞いてみたいですね。身震いする程って期待大ですね!!
by aka (2010-10-13 21:38) 

伊閣蝶

akaさん、こんばんは。
かわいいでしょ?
本当に可憐で、思わず手を差し伸べたくなりました。

ところで、モンテヴェルディにご興味を抱いて頂き、本当に嬉しく思います(*^_^*)
できれば是非!と、お勧めしてやみません。

by 伊閣蝶 (2010-10-13 23:46) 

Cecilia

近場の大きなバラ園に行きたいと思っていますが、行けるでしょうか。

モンテヴェルディ、いつか「オルフェオ」の最初のほうの音楽の精の歌を歌ってみたいと思っています。


by Cecilia (2010-10-15 09:13) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
お近くに大きなバラ園があるのですか。
私も以前住んでいたときに、近くにバラ園があって、開花の季節には出かけていたものでした。

オルフェオの音楽の精の歌、是非ともCeciliaさんの歌でお聴きしたいものです(*^_^*)
by 伊閣蝶 (2010-10-15 12:13) 

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