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アレッサンドロ・スカルラッティのスターバト・マーテル [音楽]

今年はペルゴレージ生誕300年、ということもあって、「奥様女中」や「スターバト・マーテル」を中心に、演奏会やCDのリリースが目白押し、との感がありますね。
このブログでも、ペルゴレージのスターバト・マーテルに関し、アバドのCD麻布チェチーリアの演奏を取り上げてきたところです。
それぞれにアプローチは異なっておりますが、いずれも心にしみ込むような素晴らしい演奏でした。

「Alessandro Scarlatti」の肖像ところで、ペルゴレージのスターバト・マーテルを語る上で、忘れてはならない曲があります。
ペルゴレージのスターバト・マーテルに先立つこと13年前の1723年に、アレッサンドロ・スカルラッティによって作曲されたスターバト・マーテルです。
この曲も、ソプラノ、アルト+弦楽及び通奏低音(2バイオリン、チェロ、オルガン)という、ペルゴレージとほとんど同様の演奏形態をとっております。

息子のドメニコは、主に鍵盤楽器によるソナタなどで現在でも大変に有名ですが、父親のアレッサンドロの方の知名度はかなり落ちるようです。

事実、私もこの人の作品のことを知ったのは、皆川達夫さんの「バロック名曲名盤100」によってでありますし、その取り上げられ方も、息子のドメニコや、ペルゴレージのページの添え書きみたいな扱いでありました。
尤もこれは、当時(1977年頃、今も同じでしょうが)あまりにもレコード化されることが少なかったことを皆川さんが嘆かれてのことですが。
一方、父親のアレッサンドロの方の作品は、そのオペラ史上における重要性にもかかわらず、レコード化されることははなはだすくないのが残念です。六曲の合奏協奏曲をおさめたナポリ・スカルラッティ合奏団の演奏(ポリドールMA5115)、ペルゴレージの同名曲にも似た悲愴美の〈スタバト・マーテル〉(悲しみの聖母)を歌ったフレーニ、ベルガンサの重唱(ポリドールMA5074)などが、わずかに注目されます。

以上がドメニコのソナタを取り上げたページに書かれたもので、ペルゴレージの項目でも「もっとひろく知られてもよい」と書かれておりました。

この記事に触発されて、早速ここで紹介されていたレコード(アルヒーフです!)を買い、その簡素な中にもイエスを失ったマリアの悲しみが劇的に伝わってくる演奏に感動したものです。

しかし、当時20歳前半であった私は、同じバロックでもバッハに深く傾倒しており、また、ブルックナーやマーラー、そしてワグナーなどの曲を片っ端から聴きまくっていたこともあって、この曲はいつしか忘却の彼方に沈み込んでいったのでありました。

前述したアバドによるペルゴレージのスターバト・マーテルを聴きながら、久しぶりに皆川さんの本を取り出して読み、改めてその名前に接して、おぼろげながらではありますが、以前の記憶がわずかに戻ってきて、俄然興味がわいてきた、というわけです。
しかし、そのときに買ったレコードは、他のものと同様に私の生家の物置にしまい込まれていて、現在聴くことは叶いません。

スカルラッティとペルゴレージのスターバト・マーテルCDジャケットそこで、もしかしたらCDに復刻されていはしまいか、とHMVで調べたところ、なんと、この曲のほかに六曲の合奏協奏曲とペルゴレージのスターバト・マーテルまでもがカップリングされた二枚組のCDが、2212円という驚きの価格で販売されているではありませんか!
しかもまとめ買いをすると1684円になるのです。
そんなわけで、やっぱり買ってしまいました(^^;

それはともかくとして、久しぶりに聴いたアレッサンドロ・スカルラッティのスターバト・マーテル、やはりマリアの悲しみが心にしみいるような美しい曲でした。
同じような編成という点を考慮に入れても、曲想がペルゴレージと大変似通っていて、恐らくペルゴレージに多大な影響を与えていたのであろうと推測されます。
あるいは「悲しみの聖母」という曲自体に寓意的な作曲の作法が存在するのでしょうか。

しかし、旋律の展開ごとに挿入される印象的なゲネラルパウゼやはっとさせられるような半音階進行は、曲の劇的な効果をいやが上にも高めていて、オペラ作曲家として勇名を馳せたアレッサンドロ・スカルラッティの面目躍如というべきものです。

フレーニとベルガンサによる演奏は重量感と力感に溢れ、何といいましょうか嘆き悲しむマリアの姿を実感させられるような迫力を感じさせてくれます。
ペルゴレージのスターバト・マーテルで聴き比べてみると、アバド盤のハルニッシュとミンガルドの方は清らかで儚げな悲しみを惻々と伝えてくるようです。
どちらの方が良いといったような問題ではなく、畢竟好みの問題ということになるのでしょう。
私としては、そのときどきの心境に応じて選びたいなと思っておりますが、どちらかといえばフレーニとベルガンサによるこちらの盤の方が好みではあります。

それにしても、これほどの作品を残し、器楽・声楽・オペラなどで極めて重要な役割と作品を残してきたアレッサンドロ・スカルラッティのCD、傑作である「聖セシリアのミサ(1721年)」も含めて、やはり少なすぎるように感じました。

皆川達夫さんのお言葉ではありませんが、「レコード化されることははなはだすくない」のが、誠に残念であります。

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Cecilia

A.ScarlattiのStabat MaterはATMAレーベルでエマ・カークビーとダニエル・テイラーの演奏で聴きました。
http://ml.naxos.jp/album/ACD22237
A.Scarlatti、イタリア古典歌曲集で何曲か歌いました。
大好きな作曲家です。
今ちょっとGeminianiの合奏協奏曲を聴いていて、Handelの合奏協奏曲と似ているなあと思ったことから少し調べて、A.Scarlattiの弟子と知りました。
この辺のつながりでいろいろ聴きたくなっているところです。
by Cecilia (2010-06-29 21:40) 

Cecilia

追記です。
私もベルガンサとフレーニのCDを持っています。(ペルゴレージだけですが。)
また、この二人は生で聴いたことがあります。
by Cecilia (2010-06-29 22:04) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんばんは。
ARIE ANTICHE ITALIANE、私も実はこの歌曲集の中に、彼の作品を9曲見つけ出して、多いに喜んだものでした。
Gia il sole dal GangeとかO cessate di piagarmiとか。
殊に、Sento nel coreは大好きな曲で、頑張って歌ったものです。
Geminianiはスカルラッティのお弟子さんなのですね、これは初めて知りました。

ところで、フレーニとベルガンサの生をお聴きになられたのですね。
私は残念ながらそれは果たせませんでした。
しかし、彼女らのCDを聴くだけで、生ではどれほどの感動があったか、何だか彷彿とさせられます。

by 伊閣蝶 (2010-06-29 23:20) 

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