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日本音楽集団第199回定期演奏会「日本音楽を呼び覚ました三木稔作品」 [音楽]

日本音楽集団第199回定期演奏会パンフレット5月19日(水)、日本音楽集団の第199回定期演奏会が、晴海トリトンスクエアの第一生命ホールで開催されました。
今回は、「日本音楽を呼び覚ました三木稔作品」ということで、三木先生の「わ」「ロータス・ポエム」「四群のための形象」「ダンス・コンセルタント第一番《四季》」と、秋岸寛久さん作曲の委嘱初演作「邦楽器のためのコンポジションII」という演目です。
取り上げられている三木先生の曲はどれも私には大変身近なもので、レコード、実演共に何度も聴いておりますが(「ロータス・ポエム」だけは今回初めて聴きました)、やはり、日本音楽集団の名付け親でもあり創立以来20年間にわたって音楽監督を務められてきた三木先生が、その日本音楽集団のために書き下ろされた曲が主体となるのですから、演奏者の方々も相当に気合いが入っていたように思われます。

三木先生は今年の三月で傘寿(80歳)を迎えられました。
前立腺ガンとの長い闘病を始めとして、ここ数年間は健康の上でかなり厳しい状況にあられたのですが、連作日本史オペラの最新作「幸せのパゴダ」完成し、また、オペラ「愛怨」が、今年の2月から継続的にこの夏までドイツのハイデルベルグ市劇場で上演される(日本語上演・ドイツ語字幕)ことなどの明るい話題も相俟って、現在は意気も軒昂、お元気そのものでいらっしゃいます。

会場で三木先生にお会いしたのですが、お元気そうなご様子で安心しました。
その折、今年の八ヶ岳北杜国際音楽祭のことなどもお話ししましたが、今年で5回目を数える音楽祭、いよいよ真価が問われる時期となりましょう。
第一回のときに公演の一つの企画運営にかかわったこともあり、何とか今年も盛会のうちに執り行われればと祈らずにはおられません。

演奏は次のようなプログラムで進みました。
  • わ-6人の邦楽器奏者のための(作曲:三木稔《1976年》)
  • 邦楽器のためのコンポジションII(作曲:秋岸寛久《2010年》)
  • ロータス・ポエム-6人の邦楽器奏者のための(作曲:三木稔《1994年》)
  • 15分休憩
  • 四群のための形象(作曲:三木稔《1967年》)
    • 文様(あや)-十三絃箏2・十七絃箏
    • 居機(いき)-竜笛・能管・尺八2
    • 曲(くせ)-細棹三味線・太棹三味線・琵琶
    • 擣(とう)-打楽器2
  • 「ダンス・コンセルタント第一番《四季》」

どの曲も誠に気迫のこもった素晴らしい演奏が展開されましたが、やはり、「ロータス・ポエム」と「ダンス・コンセルタント第一番《四季》」が最もずしんと心に響いた気がします。
特に、「ロータス・ポエム」で尺八独奏を担当された三橋貴風さんの演奏は、さすがと唸らずにはおられませんでした。

演奏者のみなさんがそれぞれピンと張りつめた緊張感の中におられるかのような印象を受けました。
しかし、三木先生の曲は(私もレクイエムなどの合唱曲で演奏に参加した経験があるのでわかるのですが)、その曲の流れの中で自然に気持ちが乗ってきてしまう力を有しているので、演奏をしているうちにいつしか心躍る楽しい気分になって参ります。
演奏会のはじめの頃は、青白く光るような気迫と緊張感に包まれていた日本音楽集団の方々が、演奏が進むにつれて、何とも楽しそうな表情になってくるのが、観客としては最高に嬉しいことでありました。

演奏会の幕開け、「わ」の演奏の時、クライマックスに向けて三味線の山崎千鶴子さんは笑顔を浮かべ楽しそうな表情をなさりながら拍子をとっておられました。
客席からその思わず引き込まれるようなすてきな笑顔に接するうちに曲の最後の、わ!のかけ声を迎え、これが誠に見事な調和で発声されたのです。

その演奏者全員で乗っていく演奏の高揚は、掉尾を飾る「ダンス・コンセルタント第一番《四季》」で最高の頂点を極め、会場を興奮と感動のるつぼに巻き込んだのでありました。

もう一つ、秋岸さんの委嘱初演作品「邦楽器のためのコンポジションII」も大変親しみやすく魅力的な作品で、5拍子や7拍子(多分)といった変拍子を織り込みながら、観客を楽しませるという演奏の基本を見事に実現した素晴らしい曲です。
三木先生の代表的な邦楽作品で取り囲まれる形で演奏されることについて、秋岸さんご自身、大変なプレッシャーを感じている、とおっしゃいましたが、それを感じさせないほどに自然で楽しく、また充実した演奏を聴かせていただきました。

素晴らしい演奏をお聴かせ下さった日本音楽集団の皆様にも、心より感謝申し上げる次第です。


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